2度目の終わり
思い返してみればひどい人生だった。
鈴木明希、いや、今は御影繡か。
俺には2つの人生を経験した記憶が存在する。
今から十数年前、俺は所謂異世界に転生した。
当時の俺は混乱しつつも異世界転生を理解し、新しい人生に期待をした気がする。
これで夢にまで見た強くてニューゲームが始められるのだと、生まれたての姿で涙を流し喜んだ。
そうか、赤ん坊が生まれる時に泣き喚くのはこういうことだったのかと、そんなことをぼんやり思った気もする。
そんな期待に満ちた異世界生活は、僅か十数年で幕を閉じようとしている。
自らの手によって。
睡眠薬を片手に取れるだけ取って口に運ぶ。
恐怖はあまりない。
実はこれも2度目の経験だったりする。
恥ずかしながら転生前、鈴木明希だった頃もこうやって自殺したのだ。
俺はとことん生きることに向いていないみたいだ。
なぜ自殺してしまったのだったか。
転生前のことはあまり覚えていない。
そんなこと覚えていても仕方がないだろう。
俺は嫌なことはすぐに忘れてしまうタイプだ。
右手に持った錠剤の全てを口に放り込み、バリバリと嚙み砕きつつ流し込む。
二回目ともなると躊躇など一切無い。
その内意識が遠ざかり無機質な機械音声が聞こえてくるはずだ。
次はどんな世界に転生するのだろうか。
こんな俺でも生きていける世界にしてもらわなければ、俺は自殺のプロになってしまう。
そんなことを考えている内に意識が遠のいていく。
『取得スキルを選択してください』
聞こえてきた音声は期待していたものとは違った。




