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チョコレートギフト

作者: 藤原 祐一

 ついに心が壊れてしまった私は『仮置場』のシステムと馴染むようになっていった。

 以前のように私の体が『仮置場』のシステムを操るのではなく、『仮置場』のシステムの一部として私の体が存在する。


 取りに戻らないまま『仮置き』されたものから、想いだけを『保管』する方法が編み出された。想いだけを圧縮し『保管』する。圧縮することで今まで有限だった『仮置場』には無尽蔵に『仮置き』することができるようになった。

 そして、想いを抜き取られ空になった入れ物は不要だから廃棄されるようになる。『仮置場』に残っていた大きいもの小さいもの、重いもの軽いもの、厚いもの薄いもの様々なものが捨てられていった。


 そんな中、私の肉体が『仮置場』の中でとある物を拾い上げた。こげ茶色の箱に赤い星柄の包装と光沢のあるリボン。開けてみると中は空だった。

『仮置場』のシステムにアクセスするまでもなく、その空箱は私の記憶にある。私がここで『仮置き』を始めたきっかけとなったものだった。


 私が仮置少女と呼ばれる前、ただの一人の少女だったころにもらったプレゼントだった。中には大きめのチョコレートが入っていたのだった。そのチョコレートがなくなった後も、しかし私は大切にそれを持ち続けていた。

 当時私はこの空の箱に何かを感じたが、それが何なのかわからなかった。この空箱に入っていた想いというのは?

 それがわかるまで、想いごと『仮置き』しておきたい。そうして私は『仮置場』を作った。


 いま、その空箱から想いを抜き取り終わった。すぐに圧縮し『保管』されるだろう。私の肉体が箱を握りつぶすと、中の空気が抜け容積が減った。

 その瞬間かその前後か、私かあるいは私の肉体は私の肉体の存在が無意味になったことまたは無意味になったことに気づいた。


 私は仮置少女と呼ばれていた。

 私の『仮置場』に『仮置き』されるものはいまや取りに戻ることは最初から考慮されておらず、『保管』を目的に想いがやってくるようになった。

 いつしか『仮置場』は『保管所』と呼ばれるようになっていた。



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