第一話
『怪盗K、堂々の登場!!』『警備隊五十人をものともせずに、あっという間に宝石を盗みだす!』『まさに、神の所業だ!!』……
「…………はぁ。」
桜が吹雪く陽気な天気のなか、俺は盛大にため息をついた。
原因は…そう、この新聞だ。
紙聞には昨夜起こった怪盗Kの宝石強盗事件が、大きく紙面を飾っている。
「またすごい大きく取り上げられてるな…。大げさに書き過ぎだろ。神ってなんだよ、神って…。」
俺の名前は榊奏明、この西山学院高等学校の二年生だ。
今は朝の7時半で、教室には誰も居ない。
しんとした1人の時間を満喫できる良い時間帯―
「何読んでんの?」
―だった。
「うわっ!!」
突然後ろから肩をつかまれビクリと体が飛び上がる。俺はおそるおそる振り向いた。
「ってお前か!後から急に来んなよ…。」
「あはは、すまんすまん!まさかこんなに驚くとは思わんかってんって。」
この関西弁で喋る彼の名前は井上寛太。野球部所属の元気な少年だ。
「…いつからいたんだよ?」
「いつって、ちょっと前からずっとおったで。ま、ハルは気づいとらんみたいやったけど。」
「お前朝練は?」
「今日は休みやねん♪」
さいですか。
寛大は嬉しそうに答えると、ふと思い出したように尋ねた。
「ほんで、さっきは何読でたん?」
「んー、新聞をちょっとね。」
「新聞?何でまたそんなん?」
怪訝そうに言う寛太に俺は新聞を突きつける。寛太は新聞を覗き込むと、「あー、なるほどなぁ。」と呟きニヤリと笑った。
「怪盗Kやね。」
「当たり。」
俺もニヤリと笑い返す。
「昨日ホンマ凄かったもんな~。警官隊三十人をすり抜けて、あっちゅう間に宝石を盗み出すんやもん。渋谷まで見に行ってもうたわ~。」
「おまっ、見にいったのかよ…。」
「俺は怪盗Kのファンやけん当然や!!」
ファンて…。
俺が苦笑いをしていると、教室の扉がガラッと開き、人が入ってきた。
「おはようハル。あれ?寛太もいるね。部活はどうしたの?」
「総一、おはよ。」
「おっは~、今日は部活休みやねん。」
「へぇ、珍しいね。」
今入ってきたこいつは中村総一。推理本が大好きでミステリー研究会所属している。ちなみにだが、俺もそこに所属している。
「総一、それなんの本?」
俺はなんとなく総一が手に持っている本について聞いてみた。
「あぁ、これ?これはアガサクリスティの<オリエント急行の事件簿>だよ。最近アガサクリスティにはまっちゃってさ…。」
総一は大のミステリーファンだ。将来は推理小説家になりたいらしい。さすが、ミステリー研究会に所属しているだけはある。
「オリエント急行かぁ…、俺読んだことねぇんだよな…。面白い?それ。」
「うん。さすがアガサって感じだよ。僕が読み終わったら貸そうか?」
「うーん…。」
総一がそこまで言うんだったら読んで見るべきかな…。
と、考えていた時だった。
「Goodmorning,everyone!」
来た…。俺は微妙に顔がひきつる。
「おはよう、今日は早いね。」
「相変わらず元気やなぁ。」
「…おはよ、蓮。」
この明らかにチャラそうな美形高校生は山下蓮。こいつが来ると朝の平穏な時間は終わりを告げる。
何故なら…。
「キャー!!山下君よ!」
「山下君が来たわ~!」
こいつが学年のアイドルだからである。学校内のかっこいい男子ランキングでも常に一位、大したもんだ。
「蓮は相変わらず、人気だね。」
「なんか、親衛隊の人数前より増えたんちゃうか?」
そう、その親衛隊なのだ。毎朝蓮の姿を見るために集まってくる数十人の親衛隊。…正直やかましくってしょうがない。
「ん?そうかな。そんなに増えたっけ?」
おもいっきり増えてるよ…。先月から8人も!
「まぁまぁそんな話はおいといてよ、昨日見たか!?」
昨日…?あぁ、怪盗Kか。
そういえばこいつも怪盗Kのファンだった。
「見たで!かっこよかったよな!特に、ビルから飛び出てくるとことかさ!」「そうそう!窓ガラスが割れてバァーンと…」…。
■ ■ ■
ふぅ…。
俺は怪盗Kについて話す二人を見ながらほっとため息をついた。
どうやら、バレていない(・・・・・・)みたいだ。寛太が渋谷まで見に行ったと知ったときは一瞬ヒヤリとしたが、心配は無さそうだな。
――何故俺がこんなことを思っているかって?
…俺はごく普通の高校生だ。
たった一つのことを除いては。
俺が怪盗Kであることを除いては…ね。
ほんっと駄文で申し訳ありません!
これからも頑張りますのでよろしくお願いします!