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嘘と真実

山奥の大きなお屋敷。そこには家族や召使い達に囲まれて無邪気に笑う女の子の姿があった。

少女の父親は裏社会で結構顔の効くお偉いさんだった。母親はジャンネパ人女性で、長く伸ばした黒髪がとても綺麗で、美人と評判だった。

ここはムリネッロ一家のお屋敷。ムリネッロは代々忍者の家計で、そして代々ナイヤファミリーにつかえてきた一族だった。

少女とその妹は、四つ違いの姉妹で、姉は母親似の黒髪で七歳、妹は父親似の金髪で三歳だった。

二人は仲良しで、いつも一緒だった。

その上悪戯っ子で、いつも召使い達をターゲットにしては悪戯をしていた。

そんな悪戯に手を焼かせながらも、姉妹を可愛がる召使い達。

それを優しく見守る両親。

そこはとても裏社会に首を突っ込んでいるとは思えないほど豊かで平凡で、そして幸せだった。


しかし、そんな楽しい生活もある日を境に日が経つにつれて悪くなっていった。

そんなある日だった。少女の人生が突如変わる日が来た。


「出て行け。」

それまで優しかった父と母が、いきなり血相を変えて彼女を屋敷の外へ追い出した。

何も知らない少女はそれに反抗した。

「何で?何で私が出て行かなきゃいけないの?お父さんは?お母さんは?ヤダよ。私ここに居る!」

「五月蝿い。お前など必要ない、邪魔なだけだ。出で行け!」

バシン

父は今まで見たことない怖い顔で彼女の頬を叩いた。

少女は母のほうを見た。

母も今まで見たことない冷たい目で彼女を見ていた。

父や母だけではない、屋敷に居たもの全員が少女に冷たい目線を向けた。

そして口々に「出て行け」と言う。

少女は耐え切れなくなり、屋敷を飛び出した。

何故?何故あんなに優しかった人たちがここまで自分を嫌ったのか。裏切ったのか。

少女は泣きながら山の中を闇雲に走った。


今まで屋敷の外に出た事がない少女は自分が何処に居るか分からず、外の世界はどんなものか知らず、ただただ好きだった人たちに裏切られたことに心を痛め、泣き続けた。

どれくらい泣いていたか分からない。今自分が何処に居るかも分からない。少女が気付いたのは日が落ちた頃だった。

空には星が輝き、光をくれるのは月のみ。

静かな夜だった。

そして、少女の心の中も静かだった。

何も考えたくない。それが少女の望みだった。

何も考えずにただボォッと月を眺めていた。


ガサガサ

いきなり聞こえた音に少女は反射的にクナイを構えた。

少女はムリネッロの一人である。つまり、幼い頃から忍者の教育はちゃんと受けてきた。

そして父や母に

「ムリネッロ一族の歴史上最も強い天才だ。」

と言われた。

少女はそれが嬉しくて、毎日毎日練習した。勉強した。

もしかしたら誉められる事よりも、みんなの笑顔が嬉しかったのかもしれない。

だから一生懸命練習した。勉強した。

そして今では大人五人を一気に簡単に負かす事の出来るようになった。

だから少女には自身があった。

しかしそれはいつもの少女だったらの話である。

今の少女は衰弱しきっていた。

家族に裏切られたこと。皆に裏切られたこと。

全ての悪夢が少女を襲い、それが全て少女への負担になっていた。

正直言って今の少女に大人を倒す力、いや、戦う力などないだろう。

少女は怯えていた。

だが、その音の犯人は猫だった。

きっと野生の猫だろう。

所々汚れていた。

しかしそれにも負けない毛の色、黒い毛があった。

「あなたも一人なの?私も一人なの。おんなじね。」

少女は猫に笑顔を向けた。

猫は「ミャア」と返した。

グゥゥゥ……

少女の腹の虫が鳴いた。

そういえば、家を出てから何も食べていない。

食べ物の取り方。食べられる物と食べられない物。食べ方。全て少女は知っていた。だってあれだけ勉強したのだから。

しかし、どんなに腹の虫が騒ごうが、少女の喉は何も受け付けなかった。

ただただ、泣くことしか少女は出来なかったのだ。

だが今なら何か食べられそうだ。

(そこら辺に池はないかな?)

そう思い、少女は動き出した。


その場所を少し行ったところに池はあった。

少女はクナイで魚を取り、火を熾してそれを焼き、食べた。

(ここは何処だろう。)

闇雲に走って来た場所で泣き、カンで来た場所で魚を捕った。

何処だか分からない。

一生このまま過ごすのだろうか?

そんなことならいっそ死んでしまいたい。

少女を更なる不安が包み込む。

(?あれは…けむり……?)

そんな時少女は向こうから立ち上る煙を見つけた。

何かが燃えているらしく、黒い煙だ。

もしかしたら人が居るかもしれない。

そんな希望をもった少女はその煙のほうに走った。

それが少女を更なる暗闇に落とすものだとは知らずに…


少女が行き着いた場所は燃えている屋敷だった。

「これは…家!?」

そう。燃えていたのは少女の家だった。

数日前、少女が飛び出した家。

「こりゃ良い眺めだ!最高だ!!」

いきなり聞こえた声に少女は身を隠した。

「しかしサディア様、あの例の娘は居ませんでしたね。あの、天才と謳われた少女。」

「ふん。別に良い。あいつはいずれ俺の物になる。あの力を使って裏社会のトップになるんだ。今回はこのムリネッロを落としただけでも良しとしよう。」

そう言って奴らは帰っていった。

(!!お父さんや皆を…殺した…の?私を使う?お父さんは…皆は…これを知ってて??)

あの裏切りは実は、優しさだった事を知って、少女の瞳からまた滴が落ちた。

今度は悲しみではない。憎しみだった。

皆を殺したあいつらが憎い。

そして何より、皆を信じられなかった、皆を守れなかった自分が憎い。

「お…姉…ちゃ……ん」

そこへ自分の妹が地を這いつくばって来た。

「アキ…ネ?アキネじゃない!!どうしたの?そんな血だらけで。」

アキネには炎で火傷したとは思えない傷がいくつもあった。

「さっきのひとたちが…みんなを…ころしたあとに…おやしきに…ひを…つけて」

「もういいよ!何も喋らないで!!」

ボロボロの妹が喋っている途中で少女はそれを止めた。

だって、見ていられなかったから。それ以上、自分の妹が傷ついていくのを…。

「お姉…ちゃん…これ…お父…さんが…お…姉…ちゃんに……って」

妹は所々汚れたトランクを少女に渡した。

「みんな…いっしょう…けんめい…たたかってた…よ。そしたらね…お父さん…が私だけ…にがし…たの『お姉ちゃんにこれを届けろ』……って。」

ゲッホと妹は吐血しながらも話した。

「アキネ!!もう喋らないで!!」

妹を心配する少女は妹の手を握り、涙を流す。

「あのね…おね…えちゃん。私…さいごに…お姉ちゃんにあえて…うれし…かった……ょ……。」

「アキ…ネ?嫌ぁぁ!アキネェー!!」

最期には聞き取れないほど、妹の声は小さくなっていた。

次回はルミナーレの戦いです。

駄作ですが、おつきあいください。

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