任務開始
「それじゃぁ、まずは娘だな。」
そう言ってザギィは動き始めた。
バタン
「私も一緒に行く。」
家から出た瞬間、誰かに声を掛けられた。
ザギィは振り向いた。
「こっちこっち。」
声の主は、ザギィと同い年くらいの少女だった。
ザギィは“やっぱり”といった顔で、少女に問い掛けた。
「何のようだ?」
ザギィは、冷たく言い放った。
「そういう怖い顔しないでくれる?相棒なんだしさ。それにザギィは、戦いは上手だけど、情報収集は下手なんだから、私がいたほうがいいでしょ。」
少女は一切動揺せずに言った。
「うるせぇ。第一、お前は俺の相棒じゃねぇし、それに情報なんかいらねぇ。」
「はぁ…。情報はマフィアにとって大切なんだよ?」
「けっ知るか。」
彼女の名前はルミナーレ・ビジュ。
フリーの殺し屋、兼、情報屋である。
忍術を得意とし、その身軽さを利用して情報を集める忍者である。
その体のしなやかさと髪の黒さから、ついた名前は『黒猫のルミナーレ』。
「ルミナーレ、おまえまた俺から金を取る気か?」
「もちろん!今回は10万ユーロね!」
ルミナーレは笑顔で且つ、目映い光を放って答えた。
ルミナーレは金好きだ。
「はぁ…」
ザギィはため息をついた。
「今回は安い方でしょ?」
「知るか。」
ザギィは冷たく言うが、最終的には連れて行く。
というより、ルミナーレが付いてくると言った方が正しい。
そんなこんなでザギィとルミナーレの任務が始まった。
「ねぇザギィ…。」
歩き始めて早10分。
ルミナーレが口を開いた。
「あぁ?」
「娘を捜すったって…どうやって?」
「知るか。」
「ふ〜ん…そっか。」
ルミナーレはそれが当たり前のように答えた。
「私が捜そっか?ザギィがこの任務にそんな楽しそうな顔してるのは、戦えるからでしょ?久々の任務だしね。」
「………」
「じゃぁ私が探すね。」
ザギィが黙っているのでルミナーレは、ザギィの気持ちを察し、言った。
「って、その前に、ザギィ。手紙と一緒に写真入ってたでしょ。貸して。」
ザギィはポケットから写真を取り出し、ルミナーレに渡した。
「あらま。可愛い子だこと。」
「お前と違ってな。」
「うっうるさい……」
(でもそんなこと言うなんて、よっぽど楽しいんだろうな。…あれ?この娘…)
ザギィとルミナーレは長い付き合いだ。
ザギィはテネブラの一人だが、ルミナーレはフリー。
依頼さえあれば敵にも味方にもなる。
でもほとんどが味方だった。
敵だとしても戦いと言うより競争。どちらが先に獲物を捕るか、それだけだ。
もうほとんど幼馴染み状態だ。だから二人ともお互いの気持ちはほとんど分かる。
ザギィはルミナーレを構わない。いつも冷たく返すだけ。でも楽しいときはザギィの方からルミナーレを構う。
だから今、ザギィは楽しいのだ。
「それじゃ探すね。」
そういってルミナーレは写真を宙に投げた。
【捜し風】
ルミナーレがそういうと写真が何かに引かれるように動き始めた。
【乗り風】
ルミナーレはそういって空に手をつきだした。
するとどこからともなく純白の大きな鳥が飛んできた。
これは一般的に言う“口寄せの術”と言って、ルミナーレの場合は、この大きな鳥、『カンディデッツァ』を呼ぶ。
「ザギィ、見つけたよ。あっちだって。早く乗って。」
「あぁ。」
二人を乗せたカンディデッツァは空高く飛び上がった。
そして写真の行く方に飛んだ。
ルミナーレ登場!
次回は、ルミナーレの術公開(?)
次回もどうぞ、お読みください。