表と裏
「ねぇねぇ、僕ねぇ、一つだけぇ、分からないことがあるんだぁ。それはねぇ、君がぁ、テネブラに入る前ぇ、何をしていたかぁ、なんだぁ。」
「!!」
ドクン…ドクン
ザギィの心臓の音は大きくなっていた。
サッ
「何に怯えてるのぉ?」
フォートがザギィの懐に入ってきた。
キィィィン
互いの刀が響く。
「早くしないと、僕がぁ、俺に、なっちゃうぜ?」
フォートの声は入り交じっていた。
子供っぽい高い声と、殺人衝動の入った太い声。
それはザギィを更なる恐怖へ陥れる。
(きっと今のザギィじゃフォートには勝てない…豹変するしか…。でもザギィをどうやって説得させよう…。きっと…ううん、絶対ザギィは豹変することを拒む…)
ルミナーレはザギィをどう納得させるか考えながら、長い廊下を走っていた。
【鬼牙】
ザギィの放った斬撃は、宙を飛んだ。
飛ぶ斬撃。
それはザギィの得意技だった。
【鬼牙】
「!?」
ザギィは目を見開いた。
フォートが、さっきザギィが使った技を使ったからである。
「驚いたぁ、っていうぅ、顔をしているな。驚くぅ、必要はないんだぜ?」
「………」
ザギィの頬に冷や汗を掻くのを感じた。
鳥肌を立つとは、このことだと、強く感じた。
「僕はぁ、『写しのフォート』。何でもぉ、写す力がぁ、あるんだぜ?驚くことはぁ、何もねぇよ。」
殺したい…ころしたい…コロシタイ…殺シタイ…
(来るな…来るな…来るな!!)
ザギィは自分と戦っていた。
「僕ねぇ、お前の中にぃ、獣がいるってぇ、聞いたのぉ。でねぇ、それがすごく見たいなぁ。」
(やめろ…やめろ…やめろ!!)
“ガク“とフォートの首が垂れた。
「あーあ。お前が遅せぇから、俺が先に豹変しちまったじゃねぇか。」
フォートは禍禍しい殺気を放った。
ガン
フォートがザギィに襲い掛かった。
さっきよりも更にスピードがあがっている。
「早く豹変しねぇと、お前、死ぬぞ。」
フォートの顔付きが変わっていた。
(何でこいつは豹変しても意思を持っていられるんだ。俺は…俺は!)
次回はザギィの過去話です。