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change  作者: 虚虎 冬
水上古都編
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4:珠は

 ムーシャには、ずっと不安ばかりが残っている。三人で、手分けして探して良かったのか。一緒に、心当たりがあるところから、探すべきじゃなかったか――あのリゼリアを、一人にさせて、本当に良かったのか?

 何度も、胸元の紅い珠を握りしめた。この珠、他の「龍」の危険を察知すると、熱を帯びるらしい。何度も握って、リゼリアに何か起きていないか確かめた。ユウにも、何か起きてはいないかと。

 今のところは、何も起きていない様だ――そう、ほっとした時に悪い事は起こる。

 一瞬だけ、胸の一点が火傷をする様に熱くなる。珠が紅く光った。

「何か起きてるの!? 何処で!?」

 あちこちを見渡しても、何も変化は見られなくて。しかも、熱くなったのは一瞬だった。

 間違いだろうか。

 そう思ったのに、次の瞬間、空に水が噴き上がった。

 広場。リゼリアが一人で向かった場所。

「リゼ……!」

 ユウか、リゼリアか、二人に何かあったのだ。必死になって駆けだした。

 ――思えば、一瞬熱くなった時点で、手遅れだったのだ。


 走っている内に、また珠が熱くなってくる。今度は、熱が引かずにずっと続いている。

 嫌な予感がしていた。

 だから、広場で二人(、、)が倒れていても、驚きはしなかった――ただ、ショックだけが残る。

「リゼ!? アルト!?」

 ユウは、いない。あの熱(、、、)は、そういう事だったのだ――と思うと、胸がキリキリと痛む。

 倒れている二人に、外傷は無い。眠っているだけにも見える。しかしそう思い込もうとしても、珠の熱が邪魔をする。

 楽観視はできないのだ。

「wsly nmu rrnshhka! jmh ritpk,kheuk to tkm.」

 回復魔法を放ち続けた。何度も、目が覚めるまで――。

 ムーシャの希望も叶わず、珠の熱は引かない。一層熱が強まるばかりで、二人の顔も蒼ざめてきている。

「wsly nmu……」

 やがて、ムーシャの精神力も限界になった。

「なんで……」

 ひたすら、拳を打ち付ける。皮が擦り切れ、血が出ても、なお地面のタイルを叩き続ける。

「なんで、いっつも……リゼが、怪我して、私は何もできなくてっ」

 彼女の慟哭を聞く者は、いない。ここは仮初の国だから。

「アルトと、やっと仲直り、できたのにっ……」

 泣けど喚けど、もう助けてくれるような人はいない。どうすればいい。

「嫌だよ……アネルと、約束したじゃない……」

 どうすれば。

「……嫌、か。何がだ?」

 人の、声だった。リゼリアでもアルトでもない。

 初めて聞く声。

「狸っ……狸さんでも、いいから、リゼとアルトを、助けてくださいっ……」

 そこにいたのは、大きな狸。丸い腹を持つ、毛がふさふさの、狸。

 リゼリアが見たら、大笑いしただろう。アルトが見れば、目を丸くして質問を続けるだろう。

 ムーシャは、必死に縋りついた。

「……初めて見る者を、信用するな」

 狸が困った様に言った。しかし、ムーシャに他の選択肢があるだろうか。

「他に、頼る人がいないならっ……それで、いいんです! お願いですから!」

 金切り声に近くなったのも、仕方がなかった。

 狸が、ふっと息を吐き、ムーシャに言う。

「別に、いい。元々助けるつもりだからな」

「え?」

 狸の足から離れて、ムーシャはきょとんとした。

「リゼリアを、運べるか。私がアルトを運ぼう」

 狸は力の抜けた彼の体をひょいと持ち上げ、歩き出した。

 ムーシャも慌てて、追いかける。リゼリアの体は、冷たくなっていっていた。

次回更新、12月13日

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