28:決勝戦
白い太陽が、空高く昇る。まだ試合は一時間ほど先ではあるが、王城から試合をする闘技場までは歩いてそれくらいかかるため、四人は黒闘技場へと移動し始めた。アネルは既に、仕事で闘技場にいるらしい。
「……ムー姉、アルトとは仲直りできた?」
リゼリアと二人で、部屋から出ないようにしたのは、二人がちゃんと話をする為だった。かなり強引ではあったが。
ユウに尋ねられたムーシャは、一瞬口をぐっと閉じ、
「まあまあかな」
それはなんとも微妙である。
「でもね、とりあえず、お互いの誤解は解けたからいいの」
どういう誤解をしていたのか気になるところではあるが、ユウは聞かないでおいた。ムーシャの顔が満足そうだったから。
――しっかし、暑い
ユウが着ているのは、キグルミ。この炎天下で着るのは自殺行為だ。髪が汗に負けてだらりと垂れ下がる。ユウは鬱陶しげに前髪を掻き分けた。
「大変だね、ユウ君」
「ムー姉もね」
ムーシャも黒いマントを羽織っているので暑いはず。彼女の顔にも、汗が垂れていた。
アルトは白い服で全身を覆っているようなものだし、皆暑い服装だ。
「このくらい天気がいいと、何か気分もいいな!」
スキップしているリゼリアは、例外だ。彼女はホットパンツを履いていて、夏らしい服装である。
闘技場に、アナウンスが響き渡る。
――東、白騎士チーム
と、観客席から歓声が響き渡った。客は、――国民は白騎士が罪を犯した、とされていることを知らない。唯の特別参加だと思っているのだ。もし、罪人だと知られていれば、歓声は起こらないだろう。
――西、<武国>親衛隊
またもや、湧き上がる歓声と拍手。
――ついに始まります、決勝戦です
観客の盛り上がりに対し、アナウンスは酷く平坦だった。
闘技場に張り詰める緊張感。それに呑まれて、客もだんだん静まり出す。
盛大に、鐘の音が響いた。
こちら側、走り出したのはリゼリアとアネル、そしてアルト。客が黄色い声援を上げる。
向こう側で前衛に当たるのは、三人の様だ。
「……私を一人で抑えようなどと、ふざけた事を」
アネルが言うと、アルトが小さく嘆息した。
「あのね、前衛に人を割き過ぎても、後衛の魔法合戦大変だからね?」
アルトは今回、闘神の力は借りていない。闘神は、連日の精神干渉で疲れ果ててしまったのだ。今は中でゆっくり眠っている。
リゼリアは今回、ユウに氷の塊を作ってもらい、それを手に握っている。
「うわー、冷たくて気持ちいいわ。魔法の氷って、溶けなくていいね」
「……なあ、リゼリア。今は試合が始まっているのだが」
アネルがじとりと睨んできたので、リゼリアは慌てて顔を引き締めた。
――試合前も、そうだったな
アルトは、第二位世界での事を思い出していた。剣道の試合の時、彼女は緊張を紛らわす為に、いつも関係ない事を話していたな、と。
「……久しぶりに思い出したな」
「? アルト、どうしたんだ」
ぽつりと言った一言が、アネルの耳に届いていたらしい。アルトは慌てて、何でもないと誤魔化した。
後衛側も黙り込んだままで、前衛三人が、静かに戦闘を開始した。
「アネル。貴様、罪人に肩入れするなど……騎士の恥と思え」
「団長。私は法に従うまで」
アネルと男の剣が、斬り結ばれる。互いに引くことはなく、ただ剣はキィンと甲高い金属音を上げた。
「てめえが、ロゼリア……ラゼリア、だったか? 俺が完全に叩き潰してやるよ」
「名前間違えんなよ。リゼリア、だッ!」
金髪の少女の目は、鋭く尖った。
「白騎士様。我が国に残って頂きます」
「君がいる国なんて、お断りだよ……っ!」
細いフレームの、眼鏡をかけた男の目が、驚いた、という様に見開かれる。
「そんな話口でしたか。私と同類かと」
「誰があんたと同類だよ!」
こうして話す間にも、アルトと眼鏡の男は何度も致命傷を与えるかの打ち合い。この男――副団長は、実際には団長よりも強いと言われている。アルトともいい試合をしていた。その内容は、決していいものではなかったが。
スッと、視界に細い光。アルトは寸ででその光を避けた。
「……!」
「ちっ。避けましたか」
即座に、態勢が崩れたアルトへ剣を振る副団長。差し迫った剣は、
ばきぃっ!
黒く薄い何かに遮られた。
「……何です、その黒い物は……?」
副団長が尋ねる前に、それはすっと掻き消える。
「あんたに教えるほど、俺は優しくないよ。ほら……正々堂々とやろうぜ」
アルトは挑発するように副団長を睨め付けた。
長らく、一週間に一度にしてしまい、申し訳ございません。これより毎日更新&バトルです。




