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change  作者: 虚虎 冬
白騎士編
69/98

28:決勝戦

 白い太陽が、空高く昇る。まだ試合は一時間ほど先ではあるが、王城から試合をする闘技場までは歩いてそれくらいかかるため、四人は黒闘技場へと移動し始めた。アネルは既に、仕事で闘技場にいるらしい。

「……ムー姉、アルトとは仲直りできた?」

 リゼリアと二人で、部屋から出ないようにしたのは、二人がちゃんと話をする為だった。かなり強引ではあったが。

 ユウに尋ねられたムーシャは、一瞬口をぐっと閉じ、

「まあまあかな」

 それはなんとも微妙である。

「でもね、とりあえず、お互いの誤解は解けたからいいの」

 どういう誤解をしていたのか気になるところではあるが、ユウは聞かないでおいた。ムーシャの顔が満足そうだったから。

――しっかし、暑い

 ユウが着ているのは、キグルミ。この炎天下で着るのは自殺行為だ。髪が汗に負けてだらりと垂れ下がる。ユウは鬱陶しげに前髪を掻き分けた。

「大変だね、ユウ君」

「ムー姉もね」

 ムーシャも黒いマントを羽織っているので暑いはず。彼女の顔にも、汗が垂れていた。

 アルトは白い服で全身を覆っているようなものだし、皆暑い服装だ。

「このくらい天気がいいと、何か気分もいいな!」

 スキップしているリゼリアは、例外だ。彼女はホットパンツを履いていて、夏らしい服装である。


 闘技場に、アナウンスが響き渡る。

――東、白騎士チーム

と、観客席から歓声が響き渡った。客は、――国民は白騎士が罪を犯した、とされていることを知らない。唯の特別参加だと思っているのだ。もし、罪人だと知られていれば、歓声は起こらないだろう。

――西、<武国>親衛隊

 またもや、湧き上がる歓声と拍手。

――ついに始まります、決勝戦です

 観客の盛り上がりに対し、アナウンスは酷く平坦だった。

 闘技場に張り詰める緊張感。それに呑まれて、客もだんだん静まり出す。


 盛大に、鐘の音が響いた。


 こちら側、走り出したのはリゼリアとアネル、そしてアルト。客が黄色い声援を上げる。

 向こう側で前衛に当たるのは、三人の様だ。

「……私を一人で抑えようなどと、ふざけた事を」

 アネルが言うと、アルトが小さく嘆息した。

「あのね、前衛に人を割き過ぎても、後衛の魔法合戦大変だからね?」

 アルトは今回、闘神の力は借りていない。闘神は、連日の精神干渉で疲れ果ててしまったのだ。今は中でゆっくり眠っている。

 リゼリアは今回、ユウに氷の塊を作ってもらい、それを手に握っている。

「うわー、冷たくて気持ちいいわ。魔法の氷って、溶けなくていいね」

「……なあ、リゼリア。今は試合が始まっているのだが」

 アネルがじとりと睨んできたので、リゼリアは慌てて顔を引き締めた。

――試合前も、そうだったな

 アルトは、第二位世界での事を思い出していた。剣道の試合の時、彼女は緊張を紛らわす為に、いつも関係ない事を話していたな、と。

「……久しぶりに思い出したな」

「? アルト、どうしたんだ」

 ぽつりと言った一言が、アネルの耳に届いていたらしい。アルトは慌てて、何でもないと誤魔化した。


 後衛側も黙り込んだままで、前衛三人が、静かに戦闘を開始した。

「アネル。貴様、罪人に肩入れするなど……騎士の恥と思え」

「団長。私は法に従うまで」

 アネルと男の剣が、斬り結ばれる。互いに引くことはなく、ただ剣はキィンと甲高い金属音を上げた。

「てめえが、ロゼリア……ラゼリア、だったか? 俺が完全に叩き潰してやるよ」

「名前間違えんなよ。リゼリア、だッ!」

 金髪の少女の目は、鋭く尖った。

「白騎士様。我が国に残って頂きます」

「君がいる国なんて、お断りだよ……っ!」

 細いフレームの、眼鏡をかけた男の目が、驚いた、という様に見開かれる。

「そんな話口でしたか。私と同類かと」

「誰があんたと同類だよ!」

 こうして話す間にも、アルトと眼鏡の男は何度も致命傷を与えるかの打ち合い。この男――副団長は、実際には団長よりも強いと言われている。アルトともいい試合をしていた。その内容は、決していいものではなかったが。

 スッと、視界に細い光。アルトは寸ででその光を避けた。

「……!」

「ちっ。避けましたか」

 即座に、態勢が崩れたアルトへ剣を振る副団長。差し迫った剣は、


 ばきぃっ!


 黒く薄い何かに遮られた。

「……何です、その黒い物は……?」

 副団長が尋ねる前に、それ(、、)はすっと掻き消える。

「あんたに教えるほど、俺は優しくないよ。ほら……正々堂々とやろうぜ」

 アルトは挑発するように副団長をめ付けた。

長らく、一週間に一度にしてしまい、申し訳ございません。これより毎日更新&バトルです。

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