4:捕まったが危機感なし…科学都市来訪第二日目
リゼリアが目を開けると、いやに白い壁が見えた。<白の街>を思い出す。あそこよりもさらに味気なくて、物悲しい。
隣にいるリュウの生存確認。
「リュウー、起きてる? というか生きてる?」
「死んでたらビックリだよ。おはよう」
どうやら互いに無事なようだ。
ほっとして、リゼリアはおどけたように言う。
「いやはや、捕まったはいいが、食料が無いとは恐れ入った」
「僕の『力』で水は飲めるけどね…… 普通の人なら、死んでるなあ」
「おいおい、我らが普通でないみたいではないか」
「キャラ違くない? ……実際僕ら普通ではないし」
確かに、リゼリアもリュウも、唯人ではない。
二人は、窓もドアもない(とは言え、科学都市なので見た目にはドアがないだけ)、白い部屋にいた。ムーシャや他の子供の姿は無い。
手足が縛られていないが、抜け穴が全くない部屋で自由でも、意味が無いのだ。
二人は閉じ込められているのである。
彼らがこうしている理由は、一日前にさかのぼる。
防衛副長は、にたりと嗤ってから、ある提案をしてきた。……提案というより、脅しである。
「この餓鬼をぉ、解放してあげるからぁ、そこの青髪と金髪をちょーだい」
ムーシャは、リュウとリゼリアの腕を掴み、行っては駄目だと引きとめたのだが、防衛副長が再び子供を振り回す様子を見て、渋々離した。
子供は解放されたが、代わりにリュウとリゼリアが捕まったのだ。
二人は、今いる部屋に投げ出され、食べ物も水もないまま閉じ込められた。
そのまま一晩がたって、今に至る。
暇で仕方が無いリゼリアは、よくしゃべった。普段なら煩わしくて無視し始めるが、今はとにかく暇なので、リュウもきちんと会話をしている。
「そういえばさ、あの緑髪の女の子と、橙髪の男の子って、名前何て言うの?」
「ミドリとレンジだよ、一応」
「自分の名前言うときも『一応』ってつけていたよね。何で?」
「科学都市のやつが記号としてつけるから。名前、適当でしょ」
髪が緑だからミドリ。橙だからレンジ。リュウは、「龍」だからそのまま。
「お姉さんがこの国に生まれていたら、『キキ』か『リュウ』だろうね」
「へー。確かに安直なネーミングだね。
ときにリュウよ」
「何」
「お姉さんとは他人行儀な。名前で呼びたまえ」
「さっきから語尾がおかしいけど。混乱してるけど」
「気にせんで良い。そんなことはどーでもいいのだよ。
『お姉さん』だとムーシャを呼んでいるのか、私なのか、分からんではないか」
「別に良……」
「良くない。じゃあムーシャならなんて呼ぶ?」
「……ムー姉さん」
「じゃあリゼ姉で良くね?」
「やだ」
「なんで」
「……それなら呼び捨てる」
「ひっでぇ。年上の威厳カムバック!」
「もともと無いよ」
ぽんぽんと続く会話。ここまで人と話したのは初めてだ。リュウはそう思った。
「防衛員」が部屋の外から声をかけてきたのは、話が弾みかけたときだった。
「ひゃっひゃひゃ! 機嫌はいかが? ケダモノ達ぃぃ!」
その声を聞いて、リゼリアと揃って顔を顰める。防衛隊はろくでもないやつしかいないのか。
「腹を空かして呻いているかなぁ~? あっひゃっひゃ!
それももうすぐ終わるけどねぇ! 解剖されちゃうから! 解剖!」
「……防衛員の一人だ。牢屋の番人のはずだけど」
とリュウは囁いた。
「……へえ。防衛隊はろくでもないのしかいないんだね」
リゼリアと感想が全く一緒だった。誰でもそう思うのだろう。リュウは少しだけ、防衛隊を馬鹿にして笑った。
「内臓はばーらばらっ。脳もぐーじゅぐじゅっ♪ 血もたっくさん飛び散るかなぁ~?
おまえらケダモノは、心臓を取り出しても動いているだろうからねぇ、ぐちゅっと握り潰してあげよう♪」
「……こいつのせいで『残酷描写』云々を追加しなければならなくなった。くそう」
リゼリアが訳の分からぬ事を言う。
「じゃあ楽しみにしててねぇ。あひゃひゃっ」
それだけ言うと、牢屋の番人の気配は去っていく。
「何しに来たんだ……」
リュウが呆れて言うと、
「知らないけど、まあ有難いね」
リゼリアがにやりと笑う。
「ここから逃げなきゃいけない訳だ。 ……リュウ、ちょっと」
二人の脱出作戦が始まる。




