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change  作者: 虚虎 冬
序章
1/98

プロローグ:黒い染み

 どこか遠い世界のとある国のとある町。立派な名前は付いていたが、いつも町中を覆う白い霧のため、人々はこの町をこう呼んでいた。<白の街>と。

 いつしか白い霧は建物にまでしみ込んだようで、どこを見ても白いレンガしか見当たらない。

 この、雪景色のようにどこか寂しい印象がある町は、しかし日々騒々しい。この国の多くの少年少女たちが、学びの為に集まってくるからである。

 厳しい規律と、卒業後の進路が良いことから、大人がこぞって自分の子供を入れさせようとする。そのため難易度も高く、国の最難関の学園――白霧学園。

 ここに居る学生たちは、いわゆる「優等生」が多いのだが、優等生でも若者・子供は明るく騒がしい。

 楽しげに駆け回り、笑いあう生徒たち。制服までも白く染まっている。髪の色も白か、黒、茶色。

 今日もまた白いままのはずだった。

 しかし、今日は一点だけ違っている。

 昼、白の街に、黒いしみが一つ。人もペットも無機物も、何もかもが白いこの町で、見慣れない色だった。

 シミの正体は女性。黒マントをはおり、ゆっくりと歩いていた。時折ふっと宙を見つめる。彼女の周りを誰もが避ける。異質なものだからだ。

 黒い女性は途方に暮れているようだった。

 狭い路地裏に入り込み、当てもなくさまよう。彼女が探しているモノは、どこにいるのか分からない。彼女は静かにため息をついた。ため息はすぐ、霧の中に溶けていく。

 何度も角を曲がり、どこに自分がいるのか分からなくなった時。学生の声が聞こえ、同時に視界が開けた。そこは広場だった。中央には壮大な噴水があり、迸る水に二つの人影が映っている。

「てい!」と気合の入った少女の声。

「うわ!」と間の抜けた少年の声。

 少年と思わしき影が倒れ、それを追うように棒状のものが少年に突き付けられた。

---次は絶対俺が勝つからな、リゼ!  毎日聞くね、そのセリフ。やれるならやってみなさいな。あと、「俺」呼びは似合わないっていつも言ってるでしょ。アル。

 少年は、少女の言葉を聞いてがっくりと肩を落とした。試合をして負けてしまったらしい。

 しかし、彼女--黒い女性にとっては、二人が何をしていたかなど、どうでもいいらしい。目は爛々と輝き、口元は大きく笑みの形を作っている。

「やっと、世界の光を見つけた。

でも、まだ本体は…空に」

 彼女は急に顔を曇らせる。

「この町では、大変な目にあわせる。私の--私たちのせいで。

でも、やってもらわないと」

 彼女がそう言った。次の瞬間、黒い染みは町から消え去っていた。

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