01・プロローグ
魔女。母から娘へと魔力を授け、そして魔術を伝授する。
私の母は今生き残っている魔女の中で一番、優れている一族の出。その魔力と魔術を私は引き継いだ。
些細なおまじないから人の命を奪う黒い魔術まであるけれど、私が好むのは砂漠を繁った森にする白い魔術の類い。
私は母の美貌と一緒に優れた力も引き継いだ。
魔術なのか、母は五十近くになるが見た目は二十前半の美女。時折私と姉妹に間違えられる。
髪は煌めくゴールド。睫毛も同じ。瞳は南の島を囲う海のような青い瞳。ピンク色の赤みを帯びた白い肌。才能と美貌に恵まれた才色兼備に私は心から感謝した。
少なくてもそれだけで私は幸せな人間の分類に入る。
私は幸せだった。
社交的な母とは対照的に人見知りをしてしまう性格で、女友達も男友達もそれほど多くは作れなかったがそれなりに私はいい生活をしていい人生を送ったと思う。
魔女だと知り怖がって父親が離れて行っても、僅かな時間愛を貰えた。数回しか会えなかった祖父と祖母も優しくて魔術に関して色々教わって楽しかったし、眠気ばかり襲われていた高校生活も楽しかった。
十九年という短い人生だったけど、十分だ。だからどうか、せめて一思いに殺されますように──と祈った。