地産地消は基本中の基本ですな
アメリカの食い物は口に合わん。初日はそう思っていました。
だって、米の国って書くくせに米はうまくないし、安定の味を求めて入ったマックですらドレッシングが口に合わないし……でもね、外食するからいけないのです。
アメリカの食い物に対する認識が変わったのは、三日目のことです。美術館など回ってゆったりと過ごした後、宿泊しているホテルの近所でスーパーマーケットを見つけた俺と手下達は、異国の主婦に紛れ込むという暴挙に出たのです。
「なにこれ、マジでテンションあがるわ~!」
日本じゃ考えられないサイズと物価。苺は日本の三パック分に相当するほどの大型パックが5ドル程度なのです。一抱えもあるような大きさのホールケーキも、たったの9ドルですとおおおおおお?
そもそもペットボトルがデカい! 1ガロン(3.78L)って何だよ。日本じゃあ、業務用洗剤が入っているような容器に、リプトンティーだの、ミニッツメイドが詰まってるんだぜ?
河童こと息子ドノはアイスコーナーで大興奮。
「何コレ! 映画でしか見たことないぞ!」
バケツのような入れ物に詰め込まれた毒々しい色のアイスクリーム。ハーゲンダッツだって気取った小さいカップではなく、どん!とファミリーサイズ。
猪八戒はかごを抱えて売り場をちょろちょろ……
「ねえ、この大きいケーキでもワンホール14ドルだよ! 買っちゃう?」
孫悟空にいたっては、お菓子売り場のカラフルさに見とれて立ち尽くしている……
これは、アザとー家では良くみられる光景なのです。放し飼いにするとろくなことにならないパターンなのです。
外国のスーパーだというのに、アザとーは自由人達の間を走り回る羽目になりました。
「待て! その大きさのケーキが食いきれると思うのか。それより、おかずになるものを探すのだ! 息子よ、アイスじゃ飯にならん。どんだけ食おうと飯にはならんのだっ! それに娘! 娘はどこに行ったあああああ?」
こうして三人を執りまとめて選び出したのが、ローストチキン(丸ごと一羽、お惣菜扱い!)、サンドイッチ、カップケーキ、苺の小さいパックなのです。
ホテルの部屋でそれを並べれば、ちょっとしたパーティー気分でありました。
「何このチキン。うま!」
「苺も! おれ、アメリカの苺、なめてたわ」
何と言う品種なのだろうか。ヘタまで真っ赤で少し大ぶりな苺は、さっぱりとした甘さで喉を潤してくれる。
チキンも温かい状態で売られているというのは何よりのご馳走であるが、味付けも悪くない。日本人でも無理なく、むしろ好意的に感じる柔らかな香草の香りは……ローズマリーだろうか? タラゴン? 馴染みではないが、どこかで嗅いだことのある感覚で、すんなりと喉を通るのです。
「むう。これならアメリカで暮らしていけるな」
「むしろ……むしろっ!」
アイスが三度の飯より好きな息子は大興奮だ。
「あの馬鹿でかいアイス、お土産にしたい!」
……河童よ、少し落ち着け。反抗期特有のクールなツンデレがお前のキャラなんだぞ?近年、まれに見るはしゃぎようじゃないか。
食欲の無かった娘も、半パックほども苺を平らげてご機嫌だ。
サンドイッチも具材がシンプルで、だがボリュームはたっぷりなのがうれしい。日本のペラいサンドイッチなんか目じゃないね。
アザとー的結論!
どこの国でも、食べるなら庶民レベルの味が一番うまい!
気取った外食を食っているうちは、その国の旨味を知ったとは言いがたいのです。