『あの歌』で有名な……
さて、アザとー一家が本日向かった先は、『あの歌』でおなじみのメトロポリタンミュージアム。
はっきり言って、一日じゃ全部見て回れないぐらい。収蔵作品数は多いし、見ごたえはあるし、娘なんか「全部見るには目が足りない」とか言い出したくらい。
そういえば、アザとー、実際にメトロポリタンミュージアムに行って、『あの歌』に対して抱いていた積年の謎がすべて解けました。
実は『あの歌』の中にはファラオが出てくるのですが、アザとーはず~っと(美術館なのに何でファラオ?)と思っていたのです。
その謎の答えが、ミュージアムを入ってすぐにわかりました。
このミュージアムはデンドール神殿を寄贈されたということで、めっちゃエジプト推しだったのです。
広い一階の半分丸ごとが神殿からの出土品や、王たちの棺や大きなオシリス神の彫像などで飾られ、大胆にも彫刻を施した壁を丸ごと持ってきて神殿が再現されていたり、ほぼ神殿丸ごとを収蔵しちゃったんじゃないかって勢い。
そりゃあ、ファラオの一人や二人はいてもおかしくないわな……。
さて、絵画のコレクションも膨大で……美術の教科書で見たような絵もちらほら……全部は無理でも一枚でも多く見て回ろうと、アザとーたちは一生懸命にミュージアムの中を歩き回ります。
途中、吹き抜けになった一階部分が二回からガラス越しに見えました。
娘が叫びます。
「あれ、これ、ホラ……靴下貸してあげる奴だ!」
確かに白い彫像が並んだそこは、『あの歌』の中に出てきた光景そのものです。そういうところって、行ってみたいじゃないですか?
「よし、あそこに行こう!」
張り切って歩き出したはいいのですが、何しろワンフロアが果てしないくらい広いうえに、ところどころに変則的な階段があったり、展示室が迷路の役割をはたして思い通りの場所へまっすぐに進めなかったり、もう階段を上ったり下りたり、迷って同じ場所をぐるぐる何度も回ったり……。
これってつまり、『大好きな絵の中に閉じ込められた』ですよね。
確かにゴッホは好きだけど、同じ絵の前を何回も通ると、さすがに(ここから出られないかもしれない)って不安になっちゃうの。
ほらね、謎がすべて解けたでしょ?
ちなみにこのミュージアム、模写やスケッチの許可が取れれば作品の前にドーンとキャンバスを広げて、有名作品の実際の筆跡を見ながら堂々と絵を描いてもいいそうで。この日も五人くらい、絵画の前にキャンバスを立てた画家の人に出会いました。そのうち一人は粘土を持ち込んで彫像の写しを作っていて……いかにもしかめっ面しく芸術論なんかを語りながら単なる鑑賞品として置かれたものを眺める『美術館』とは違って、芸術がものすごく身近なもののように思えるとても素敵なところでした。
ちなみにアザとーも年を取って悠々自適になったら、ここに来てキャンバスを広げる許可をもらっちゃおうかと思った。だって、大好きな絵の中に閉じ込められて、日がな一日を絵筆を握って暮らすとか素敵すぎる。
まあ、その前に語学の壁を乗り越えねばなので、あくまでも夢想ですけどね。
でも、そんな夢をふわっと思い浮かべちゃうくらいに素敵なところでした!




