表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アザとー一家 道中記  作者: アザとー
再道中記!
10/31

話の枕に枕の話を

 うちの息子は今年高校を卒業した。夫の会社の規定で飛行機の割引がきくのは今春までである。

 だからだ、夫が今年もあのむちゃくちゃを言い出したのは。

「ねえ、3月の19日から一週間休みとってよ」

 前回の道中でかなり度胸がついたか、子供たちはこの旅の計画を特に嫌がりはしなかった。むしろ出発直前までブーたれたのはアザとーなのだ。

「ねえ、あんたが何かやらかすと、こういうことになるんだけど、いい?」

 前回の旅行記を夫に突きつけて脅す脅す。

 その成果あってかさすがにか、夫は旅前の計画をかなりうまく立ててきた。まずは空港でレンタルを利用して電話回線の確保、今回は普段の端末を持っていけるのだからナビや通訳アプリが使えるようにしてくれた。もちろんホテルもWi-Fi完備、執筆に困ることもないと。

 それに、アザとー子供のことを話の頭に持ってこられるとめっぽう弱い。

「ファーストクラスに息子を乗せてやる最後のチャンスなんだ」

 ならばと職場には休暇の届けを出した……

――ということで、アザとー一家の珍道中再びっ!の運びとなったのである。


 旅行の準備としてまず息子から頼まれたのは、普段愛用している枕のカバーを作り直すことであった。旅行に持参するにはあまりに汚くなったその枕を、別の布地ですっぽりとくるみなおしてほしいというのである。

 旅行に枕持参というと、枕が替わると眠れない繊細な性質だと思われるだろうがさにあらず。息子は頭の下に置く枕はタオルを丸めたものだろうが電話帳だろうがかまわないというほど寝意地が汚い。彼の枕は抱き枕なのである。

 別に大きいものではなく、中綿がへたってきたせいもあって15センチ×25センチ程度の大きさ、すっぽりと腕に収めるのにちょうどいいサイズなのである。

 これには、息子が生まれた当時からお世話になっている。少し神経質な赤ん坊だった息子が体の横にクッションを置いてやると安心してよく眠るものだから、ついつい枕に子守をさせてしまったのだ。

 結果、今でも眠るときにはこれを手放さない。つつくように、揉むように、激しい愛撫を繰り返しながら一晩中添い寝するのだ。だから当然にガワの汚れや破損がひどく、一見すると手垢色をした布の塊……

 だからアザとーは家にあったスカイブルーのギンガムチェックでこれを縫いくるみ、新品同様によみがえらせてやった。

 もちろん親として甘すぎることは百も承知だ。枕のようにかさばるものなど家においていかせるのが筋だろうし、ましてやそれが実用ではなく愛玩用だというなら、数晩の寂しさを我慢してもよかろう年に息子はなっている。

 それでも私には、強い言葉や親の強制力を発揮してまで息子からこれを取り上げる気は起きぬのだ。

 彼にとってこれを持ち歩くことは日常の一部分を携行するということであり、自分の縄張りを主張するためのマーキングがほどこされたものなのである。これがあるというだけで世界のどこにいても自分の居場所を明らかにする、自我の『芯』みたいなものである。

 同様に娘も『芯』を持っている。絵だ。

 イラストを描くのが好きで日常と成りつつある彼女には、紙と筆記用具こそが自我の代弁者である。だから私は旅行前に新品のスケッチブックを彼女に買い与えた。

 ならばこの私には何が自我の代用であり、『芯』足りえるのか……それを機上で考えていた。

 もちろん文章であろう。書くための環境さえあれば、私は世界のどこにいても『アザとー』という名で自己を確立することができる。

 だからもちろん、旅行かばんには愛用のパソコンをつめた。これを開くとき、私は一番私でいられるのだし、このパソコンの前こそが私の居場所なのだ。

 

 つうかさ、普段も文章書いていくばくかの稼ぎを得ている身なのに、休暇も書くことに浸ろうとか、もはや書くという行為が呼吸と同意義になりつつあるよね……

 なので今回もやります書きます珍道中! 休暇モード中につきはっちゃけぶっちゃけ大暴れ!

 さて、はじまりはじまり~~~~♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ