番外編 出会い(真冬side)
今回の番外編は急ぎ仕上げたものです。
ケータイを止められ二週間。
やばいっ、更新出来ないなどと焦っていた今日この頃。
漸くケータイは復活しましたが本編は無理だと早々に諦め、番外編に逃げた作者をお許しください。
あれは、そう、町が凍えるような冬に覆い尽くされていた頃。
皮肉にも私の名前と同じ季節、同じ気候。
その日、私は死を選ぼうとしていた。
理由はありふれたものだ。
疎外、迫害、そういった所謂いじめと呼ばれるものだった。
辛かった。
悲しかった。
孤独だった。
私は一時の感情に流され、己を見失っていた。
今にしてみれば、当時の私は世間知らずの無知な小娘だったのだろうと思う。
だが、人間とはやはり脆いものだ。
追い詰められれば、冷静でいることは難しいとも私は知っている。
言い訳にしかならないだろうが、当時の私を思えば仕方なかったと今でも思っている。
それに、そんな私だったからこそ彼に出会うことも出来た。
私を死から救い、一人の人間として見てくれた大切な想い人に。
当時の私には、彼の言動は何もかもが輝いているように見えた。
そして、灰色だった私の世界に穏やかな色を与えてくれ、新たに命の灯火を与えてくれた。
正直に愛おしいと思った。
しかし、彼は名前を残して消え、以後数年間は再会も出来なかった。
そして、いざ再会を果たしてみれば、彼は違う名前を名乗り私を避けた。
まるで初対面であるかのように接してきたのだ。
最初、私は絶望の淵に立たされたが、彼の時折見せる私に対しての迷いのようなもので気付いた。
彼には秘密があり、理由があると。
私の思い過ごしかもしれない。
しかし、私はそれに縋ることにした。
それからだ、私が彼に積極的になったのは。
学校内で公開プロポーズをしてみたり、仕事の手伝いだと偽り錯乱系の魔法を資料室に仕掛け、婚姻届に名前を書かしてみたりと、普段の私ではしないことをしていた。
ちなみに、彼は印鑑も押されてしまっていると思っているが、実際は押されていない。
錯乱系魔法で誤認しているだけだ。
好都合なのでそう言うことにしてある。
ここまで独白を続けてきたが、改めて自分を見直してみると、面倒な女だな私は。
だが、そんな女にさせてしまったのはお前だ。
なぁ――――。
なぁ山城 湊。
どちらの名前がお前の本当の名前かは知らないが、それなら私は二つの名前を呼ぶだけだ。
お前はお前。
それ以上でもそれ以下でもない。
結局その人はその人でしかないんだよ。
その人物に代われる者はその人物でしかないんだ。
だから、私は例えお前に拒絶されようが何だろうが、これからも接していく。
そして、いつか……。
前書き、以下同文です。