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二章 物語の幕開け(一つの答え)

あれから湊は、ただただ呆然と行き先も決めずに歩き通していた。


そうして歩き続けて、何気なく足を踏み入れたのは、湊にとって一番に思い入れのある場所であった。


そう、あの女性ひととの初めての出逢いの場。


あの公園だ。


今はもう古びてしまった遊具が風に押され微かな音を鳴らし、湊を迎え入れる。


「……確か、この辺だったかな」


湊はあの出逢いの記憶を辿り、真冬が立っていた場所に今度は自らが立つ。


そして、星も見えない夜空を見上げ無意識に造り上げた魔器を握り締めていた。


と、そこに一つの声が掛けられる。


「少年、何故死のうとしているんだ?」


あの日、湊が言った台詞に似た言葉だった。


「……なんで」


声をかけられた方を振り向くと、そこにはあの時自身がいた場所に真冬が佇んでいた。


「隠さなくてもいい。それに、そんなものを持ってそんな顔をしていたら私じゃなくても気付いただろうさ」


湊は真冬が次に何を言いたいのかを、この時漸く気付いた。


そう、真冬はあの時を再現しようとしていたのだ。


「私はお前に死んでほしくない。だから、私がお前を救おう」


「くっ、ははは。まさか、こんな事があるんですね」


真冬のその言葉に、湊はつい魔器を消して腹を抱えてしまった。


暗闇から姿を現した真冬も同様に笑みを浮かべている。


―――

――――

―――――




「――それにしても、どうしてこの場所に?」


その後、ひとしきり笑った二人は近くのベンチに腰掛け、話の続きをし始めた。


「……何となくな。何となく、今日此処に来ないといけないような気がしたんだ」


不意に聞いてきた湊のそれに、真冬はどう答えたものかと思案しながら答える。


正直、真冬自身もどうしてなのか理解していないのだ。


「……何となくか。不思議なもんですよね。僕もあの時そうだったんです」


しかし、湊には真冬の今の気持ちを理解することが出来ていた。


「案外、私と湊は何かしらの繋がりでもあるのかもしれないな」


「そうかも、しれないですね」


真冬は冗談半分に話したが、湊は思うところがあったらしく虚空を見据えながら頷いた。


「しかし、湊はどうしてこの公園に?」


二人の間に静かな時が流れたが、再び真冬が口を開いた。


「それは……」


真冬の問いに言葉を詰まらせる湊。


どう言えばいいのか、話してしまっていいのか、等と悩んでしまったのだ。


数分後、


「……家族に、話したんです」


漸く湊はぽつりぽつりと先程までのことを、自分の思いを、打ち明けていった。


その間、真冬は一切口を挟まずにただただ湊の話に耳を傾け続けた。




そして、湊が口を閉ざす。


しかし、それでも真冬は何も言わず、湊の肩を引き寄せ無言で慰める。


真冬は思う。


ここで慰めの言葉を掛けるのは簡単だ。


だが、それは時として無責任な言葉にもなり得てしまう。


ならば、口を開くよりもただ傍に居て寄り添ってやった方がいい、と。


それに、この問題は湊自身が己の納得する答えを、自分自身で見付けなければ意味がない、とも。


その後、真冬は更に引き寄せた肩から手を離し、湊の頭に持っていくとわしゃわしゃと髪の毛を無茶苦茶にする。


「ちょっ、真冬さん、やめ」


「なぁ湊、愛してる」


そんな湊に真冬は不意に思ったことを脈絡もなく告げる。


「い、いきなり何を」


「ふふ、いや何となく、な。何となく言いたくなってしまった」


突然のことで動揺を隠せない湊に、真冬は笑みを零す。


「なぁ、湊、本当はもう納得のいく答えは見付かっているんだろう?」


真冬はもう大丈夫だと、そう思った。


湊は答えを見付けられた、と。


「っ、叶わないなぁ、やっぱり。……納得のいく答えとは言えないかもしれませんが、はい、一つの答えを見つけられた気がします」


そう言った湊の表情は、確実に先程よりも晴れやかであったのは間違いない。


「……そうか。その答えが何なのかは聞かないさ。だが、何かあれば私が支えてやる。だから、もう折れるなよ」


「ありがとうございます。しかし、それじゃ簡単に倒れるわけにもいかなくなりますね」


真冬が口角を釣り上げると、湊も茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべた。


「どうしてだ?」


「さぁ? 何ででしょうね」


本当に理解していない真冬に、くすくすと笑う湊。


そんな湊に真冬は再び問いただそうとするが、その前に湊が言った。


「僕も真冬さんのこと愛してますから」


唇を重ね合わせた、その後に。


「――っ」


「愛してます。真冬さん」


予想外の出来事に硬直してしまう真冬に、湊はもう一度噛み締めるように言ったのだった。






それは月夜の光だけが照らす、夜も更ける頃の出来事だった。




「あれ? そう言えば真冬さん、謹慎は?」



取り敢えず、二章はこれで終わりになります。


疲れた……。




それにしても、何でこんなに甘々な恋愛小説もどきになってしまったのだろうか、謎です。


今現在も筆者は首を傾げている次第です。

小説って難しいですね。




まぁ、それは置いといて、次からは上記のことでも分かる通り三章に入っていきます。


三章は魔法大会編です。

出来次第投稿していこうと思ってます。


では、また三章でお会いしましょう。



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