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二章 物語の幕開け(家族)

ども、読んでくれている皆様大変お待たせ致しました。


納得のいく出来とはいえないですが、何とか形には出来ましたので投稿します。


不評は受け付けます。

自分自身この作品はまだまだ発展途上だと自覚していますので……。



あれから三十分ほどが経過した現在。


湊は俯いたまま何も語ろうとはせず、また春子もそれに付き合うかのように動かない。


そうして時間だけが延々と過ぎていく。


二階に上がったまま下がってこない楓と、一度話してみるべきかと腰を上げた春子だったが、それは玄関から聞こえてきた声によって止められる。


「帰ってきたみたいね」


春子はそれでも黙ったままの湊に目を向けた。


「そうみたいだね」


やっと言葉を発したかと思えば、湊は一言そう呟くだけでそれ以上何も言わなかった。


玄関からリビングに向かってくる二つの足音が、今のこの状況には妙に響いていた。


「ごめんねぇ、遅くなっちゃった!」


「いやはや、久々に桜ちゃんの相手したら凄く強くなっててびっくりしたよ」


そうこうしているうちに、二人がリビングへと入ってきた。


茶髪を肩辺りで切り揃えた、小柄だが出てるところは出ている元気はつらつな姉の桜。


未だ白髪のない黒髪を維持した、これまた小柄でどこか幼さが残る顔立ちだが、歴とした四十代な父、大地。


春子と並んで歩いていると、大抵親子に間違われるとか。


そんな二人は、入って早々にリビングの雰囲気に違和感を覚えた。


「どうしたんだい?」


父、大地のその言葉に、春子はどう伝えたものかと言葉に詰まる。


「ありゃ? 楓はどうしたの? まさか、楓に何かあったとかないよね」


春子が無言だったことをどう捉えたのか、桜はリビングにいない楓に何か起きたのかと心配する。


「あ、うん、そう言うわけでもないんだけれど」


春子自身、今回の件について何も知らないため、返答が曖昧になってしまう。


「僕が話すよ」


そこに漸く湊が会話に参加してきた。


だが、その面持ちは暗く楓に言われた言葉が響いているようだった。


「湊君、顔色が悪いけど大丈夫かい?」


「大丈夫、問題ないよ。それと姉さん、楓は部屋に居るから呼んできてくれないかな。僕が行ったんじゃ話も聞いてくれないだろうから」


湊は大地の心配を苦笑いで誤魔化すと、部屋に籠もっているだろう楓を思い浮かべる。


「それはいいけど、後で理由をしっかり説明してよ?」


「分かってるよ。何があったのかもしっかり説明する」


頷く湊に、桜は溜め息を吐きながら楓を呼びに行った。




それから十分が経ち、漸く楓が困惑気味の桜とともにリビングへと姿を現した。


何があったのかは容易に想像できた湊は、ソファーに座る両親を横目に、桜に肯定の意を込めて苦笑いを浮かべ頷く。


「正直、出てきてくれないかと思ったよ」


「気安く話し掛けないでもらえますか?」


湊が口を開くと、楓は眼孔鋭く睨みつける。


「手厳しいな。姉さん、ありがとう。取り敢えず二人ともソファーに座ってくれるかな」


湊もそうされるのは分かっていたが、実際されるとやはり気落ちするようだった。


「楓、座ろ? 湊も理由を説明してくれるって言ってた。責める前に、理由だけでも聞いてあげよ? ね?」


「……分かりました」


湊の言葉を無視する楓に仕方なく桜がフォローに入り、空いている場所に二人で座った。


「さて、湊君。一体何があったのかな? その説明のために座らせたんだよね?」


父、大地が沈黙を破ると、湊も無言で頷いた。


「…………僕は、幾つもの過ちを犯しました。これから語ることを聞けば、あなた達は僕を殺したくなるかもしれない」


湊は俯きそうになる己の弱い部分を奮い立たせ、言葉を続ける。


「それでも、話さなければいけないと思ったんです。せめてもの償いとして」


今度こそ、湊は覚悟を決めた。


一呼吸置いた後、言葉を紡ぐ。


「僕は、俺は、あなた達の息子である、本当の山城 湊を殺しました」


誰も口を開けなかった。


ある者は怒りから。


ある者は困惑から。


ある者は予想だに出来なかった内容から。


「始まりは――」


湊はそれでも話した。


あの時の事を、一つ残らず。


――

――――




「――これで全てです……」


どれだけの時間話しただろうか、湊は漸く口を閉ざした。


リビングは重い空気に包まれ、誰一人として口を開ける状態ではなかった。


しかし、だからと言って沈黙がそうそう長く続くわけもなく、まず楓が口を開いた。


「ふざけないでください。何が償いですか。ただの傲慢な独り善がりじゃないですか!」


楓の瞳には涙が溜まり、今にも零れてきそうになりながらも湊に怒声を浴びせる。


「楓っ」


「姉さんは黙っててください!」


桜がそんな楓を止めようとするが、逆に黙らせられてしまった。


「楓、落ち着きなさい」


そこで仕方なく春子が止めに入る。


しかし、その春子も表情は辛そうだ。


「人格の消滅……かぁ。魂の消滅とも言えるのかな」


そんな中、大地がぽつりと感慨深げに言葉を漏らす。


「やっぱり、そうなっちゃったんだね……」


寂しそうに表情を歪めると、一人自己完結をしてしまった大地に、楓が思わず聞き返した。


「え? 父さんは何か知ってたんですか。それを黙っていた?」


「…………うん、そうだね。知っていたよ。全てと言うわけでもないけど大体は」


大地は楓のどうしてと言ったような表情に、父親として正直に答えることにした。


「なっ! 何で、どうしてですか!」


父親に裏切られたような思いに駆られた楓は激昂する。


「どうしてと言われても、湊君に直接聞いていたとしか」


しかし、大地は若干の迷いの後に苦笑いで肩をすくめた。


「え、いや、そんなはずは」


だが、これに今度は湊が驚きを浮かべてしまう。


それもそのはず、湊は記憶の限りでは、大地に秘密を明かしたことなど一度足りとて無かったのだから。


「ごめん、言葉が足りなかったね。便宜上、前世の湊君のことを彼と呼ばせてもらうけど、湊君が産まれた時に、彼と一度だけ話したことがあったんだ」


大地はソファーから立ち上がり、春子の傍らに行きながら当時の事を語り始めた。


「当時、春子さんも頑張ってくれたんだけど、湊君は本来なら死産になるはずだったんだ。でも、淡い光の彼がそこに現れた。そして、僕らに一つの提案をしてきたんだ」


そのことは大地の心の中に深く残っているのだろう。


まるで昨日あった事のように大地は語り続ける。


「自分は目的を果たしたけど、どうしてか在るべき場所に戻ることが出来なかった。そのせいで力の消耗も著しくて、自分は深い眠りにつかないといけなくなった。だから、あなた達のお子さんの身体に入れさせてはもらえないだろうか、ってね」


春子の座るソファーの後ろに立った大地は、正直この時は迷ったけど首を横に振ったんだ、と付け加え、誰も何も言わないことから続きを切り出す。


リビングに居る誰もが固唾を飲んで、大地の話しに聞き入っていたからだ。


「それに、魂は自分のものを宿すけど、新たな人格、つまりは湊君の事なんだけど、自分の人格はベースになる湊君へ統合されるから、自分の人格が湊君を塗り潰してしまう心配はないって言っていたんだ」


あの時は藁にも縋りたかったから、それならってつい承諾してしまってね、と大地は複雑な思いに駆られて顔をゆがめる。


「ただ、不安要素は魂を宿す関係上、人格は無くなるけど魂に刻まれた彼の記憶や経験、能力ちから等は受け継いでしまう可能性が高いってことだったんだけど、まさにその通りになってしまったみたいだね」


大地は思わず溜め息をそっと吐いてしまった。


「……そんな、でも、俺は」


「僕が考えるに、湊君はその時幼すぎたんだと思う。幼少期の少ない記憶に膨大な彼の記憶を受け継いだんだ。だから、あまりに膨大な記憶の継承等で自分は湊じゃないって、無意識に認識してしまったんじゃないかな」


戸惑いを隠せない湊に、大地は一つの仮説を話してみることにした。


「有り得ない、そんな、まさか……」


「いきなりで認めるのは難しいかもしれないけど、君は湊君なんだよ。……全く、彼も酷いことをするもんだよ。これじゃあ、人格云々のよりも質が悪い」


ついに頭を抱え始めた湊に、大地は気遣いながらも湊に現実と向き合わせる。


そして、そんな湊に時間を与える事にし、一息入れてから肩の力を抜き、彼への愚痴を披露した。


「……母さんも知っていたんですか」


と、そこに楓が唐突に尋ねてきた。


「……ええ、知ってたわ。自分が産んだ子だもの」


不意ではあったが、春子はしっかりと認めた。


今更はぐらかすなど出来なかった。


「っ、そうですか」


楓には堪え難い事実だったのだろう。


楓は一言そう発すると、唇を噛み締めて手が白くなる程の握り拳をして押し黙る。


そんな楓に隣に座っていた桜は、そっと楓の肩を引き寄せさすった。


「湊君も、そう簡単には割り切れないだろうけど、一つの答えだと言うことを理解してほしい。必ずしもこの答えが正しいとは限らないしね……」


大地は二人のその様子を横目に、再び湊へと諭すように話す。


「……ごめん、少し外に出て来る」


「湊……」


大地の言を聞き不意に立ち上がった湊に、春子は迷いながらも呼び止める。


「母さん、大丈夫。少し一人になって考えたいんだ」


勝手だとは思いながらも、湊は少しだけ切っ掛けを得たような、そんな表情でリビングから退室していった。


あはは、二章これで終わらそうとしたのに終われませんでした……。


もう少し続きます。

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