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北山瑠々ですよろしくね?ヴィーダル


瑠々は、会社を解雇になったら

ヴィーダルに会えないと、心の底から

後悔した。


会社の荷物をまとめて

家に帰ろうとしたけど


その荷物を


非常口の扉の前に

置き去りにした。


異世界に行ったら、現実世界は

きっとニュースになるだろうな。


解雇からの自殺か!?

とかなんとか…

それでもいいや


家族も、友人も、全部捨てても

彼のそばに入れれば



ただそれだけでいい――



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



扉を開けると


冷たかったはずの、異世界が

少し暖かく感じる



ああ、そうか、私が前いた世界の方が

冷たかったからか……


なんて思いながら



彼と出会った所まで足を急がす

高鳴る鼓動を、感じながら


瑠々は、息を整える。


足音が、やけに大きく響く。

石畳を踏むたびに、胸の奥まで振動が伝わってくる。


怖くない。


そう言い聞かせる前に、もう後戻りできない場所まで来ていた。


あの角を曲がれば、

彼と初めて言葉を交わした場所がある。


光の粒が、ゆっくりと空気に溶けている。

この世界特有の、淡い魔力の匂い。

肺いっぱいに吸い込むと、なぜか涙が出そうになった。


「……ヴィーダル」


名前を呼ぶ声は、思ったより震えていた。


もし、彼がいなかったら?

もし、ここに来る理由が消えてしまったら?


一瞬だけ、そんな考えがよぎる。


でも


それでもいい、と瑠々は思った。

選んだのは自分だ。

冷たい世界に戻るくらいなら、

このぬるい絶望の中で、彼を探し続ける方がましだった。


視界の先に、人影が見える。


長い影。

見慣れた背中。

何度も夢に見た、あの立ち姿。


心臓が、限界まで早鐘を打つ。


「……やっと、来た」


低く、落ち着いた声。


振り向いた彼の瞳は、

相変わらず、夜の底みたいに深かった。


「遅かったな、瑠々」


その一言で、

瑠々の中の何かが、静かに壊れた。


もう、帰る理由なんて

どこにも残っていなかった。



……って、そこで瑠々はぴたりと足を止めた。


「……あれ?」


胸の高鳴りが、変なところで引っかかる。


「私……自己紹介、したっけ?」


沈黙。


風が通り抜けて、光の粒が揺れる。

ヴィーダルは一瞬だけ目を伏せてから、くすりと笑った。


「してないな」


その答えは、あまりにもあっさりしていた。


「じゃあ、なんで……」


名前を知っているの?

そう問いかける前に、彼は一歩近づく。


「名乗らなくても、分かることはある」


低い声。

逃げ道を塞ぐ距離。


「お前は、ここに来る前から

何度もこの世界を見ていた」


瑠々の喉が、ひくりと鳴る。


「夢だと思ってただろう?」


指先が、そっと瑠々の額に触れる。

その瞬間、記憶が雪崩のように溢れた。


会社の非常口。

冷たい蛍光灯。

扉の向こうで、ずっとこちらを見ていた影。


「自己紹介なんて、必要ない」


ヴィーダルは静かに言う。


「お前は最初から、俺が呼んだんだ」


瑠々は、ようやく理解した。


捨てたんじゃない。

最初から、戻る場所がなかっただけだ。


息を吸い、ゆっくり吐く。


「……じゃあさ」


瑠々は、少しだけ笑って言った。


「今からでも、ちゃんと名乗っていい?」


その問いに、ヴィーダルは今度こそ

はっきりと微笑んだ。


「もちろんだ。

ここは、お前の居場所なんだから」



面白いと思ったら☆☆☆☆☆押してください(*´ `*)

続けようか迷ってますので、☆が入れば続けようかな?

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