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欲しがり義妹メアリー・スー

婚約破棄と欲しがり義妹~「真実の愛が見たいの~」と婚約破棄式のプロデュースをした欲しがり妹の話

作者: 山田 勝

「ゲオルド様、どうして・・・」


「まあ、こういうことになった。俺、イケメンだし、今までが間違っていた。王都に来て気がついたよ。お前とは不釣り合いだ」



「ねえ。ゲオ~遊びに行こうよ。キャ、これが田舎令嬢ね。そのドレスお母様が作ったのかしら」


「俺はイケメンで逆玉を狙うのよ。ミミーは侯爵令嬢だぜ。お前、父上たちには黙っておけよ」


「そ、そんな」



 グスン、グスン、グスン、私は男爵令嬢エミリー、貴族学園に入学したら、1年上の婚約者の隣に女性がいた。

 今まで手紙を書いても返信がなかったのはそういうことね。


 確かに私はダサい・・・



 ザワザワザワ~


「大丈夫、ゲオルド様、授業に全然出ていないのよ」

「中庭に猫ちゃんがいるわ。見に行く?」



 お姉様方や同級生は優しくしてくれる。


「あんな男のこと忘れて、良い殿方沢山いるわ」


「グスン、グスン」



 しかし、とんでもない情報を教えてくれた。


「エミリー様、大変ですわ。一月後の上級生との交流会で、ゲオルド様、婚約破棄を宣言するそうですわ。私のお父様が経営している居酒屋で大声で話していたそうよ・・・」



 交流会、婚約者がいる者は共に出席する決まり。

 私は大恥をかく。



 なら、せめて、ドレスを新調して、綺麗に着飾って、見返してやろう。

 そうだ。ドレスを買いに行こう。



 お父様から頂いたドレス予算を握りしめて、王都で1番と評判のドレス店に行った。



 しかし、店に入る前に止められた。



「オーホホホホ、ごめんあそばせ。当店のドレスはお客様を選びますの。貴方にふわさしいドレス店に行って下さいませ。そのようなお召し物を着る令嬢は・・・ゴホン」


「そ、そんな。1番安いので良いのです。どうか、ドレスとアクセサリーを!」


「まあ、まあ、そんなドレスの裾にすがりつかないで、ドレスが汚れますわ!」


「キャア」


 振り飛ばされた。私は地面に尻餅をつく。



 ザワザワザワザワ~~


「まあ、世間知らずの田舎令嬢があの店に行ったのね」

「ゴージャスドレス店、名前の通りゴージャスで、流行の最先端だ。何でも伯爵令嬢でも追い返されたことがあるってよ」



「オ~ホホホホホ、お帰り下さいませ。またのお越しはご遠慮願いますわ」



 その時、群衆の中から、二人の令嬢が現れた。

 一人は、15,6歳に見える。紫かかった黒髪に釣り目の瞳はエメラルドグリーンの、顔立ちはやや長く。厳しい印象を与える。


 もう一人は背が低く10歳くらいの幼女、蜂蜜色の金髪はフワフワで肩まで、目はアイスブルーだ。


 共に上級平民が着るドレスを着ている。




 幼女は一歩前に出てドレス店を指して、姉におねだりを始めた。



「お義姉様、欲し~の!欲し~の!ドレス店が欲しいの!」

「まあ、欲しがりが始まったわね。いいわ。買いましょう」



「はあ、貴方たち・・・平民ね。ドレス売らないわよ」


「ドレス店ごとドレスが欲しいの~!」


「はあ、ドレス店は売らないわよ!」


「あたしがパトロンになるの。おいくら万円?」


「マンエン・・・は、そうね。金貨一万枚で譲って差し上げてもいいわよ」


「分かったの~、フランクしゃん。オスカー銀行の頭取を連れてくるの~、手形を交付するの~」


「畏まりました」


 まあ、護衛騎士がいるようだけど、どこかの世間知らずの令嬢ね。

 知っているわ。この王都で金貨一万枚をスッと出せるのは、メアリー財団だけだわ。


 あのやることなすこと滅茶苦茶のようでいて、後から見たら全て理にかなっている不思議な商法、魔石鉱山も持っていると・・・転生者であるとの噂がある。



「あたしはメアリー・スー、今は公爵家預かりなの~お姉さんの名前は?」

「はい、ダン男爵家令嬢エミリーでございます」



 え、メアリー、メアリー・スー



 やがて、駆け足で、紳士がやってきたわ。あれは、見たことがある。オスカー商会の銀行の幹部・・・



「はあ、はあ、お待たせしました。エリザベス様、メアリー様」

「ご足労頂いて有難うございます。メアリーの欲しがりですわ。かなえて差し上げたいわ」

「そうなの~」


「トーマスです。メアリー様、ドレス店を改装なさるのですね」

「そーなの」



 ヒィ、エリザベスと言ったら、公爵家、トーマスは有名な実業家・・・

 でも、私の身分はこのままよね。いえ、放逐されても金貨一万枚あれば、



「このドレス店をペロペロキャンディー店にするの~、駄菓子屋にするの~」


「え、それは・・・」


「ゴージャス夫人は、キャンディーを売るの。クジも売るの~、すかしてクジを選ぶ子供を注意する役なの~」


「ヒィ、それは、お止め下さい!」



「お待ち下さい。もしかして、私のためになら、やめて下さい・・・王都のドレス店で買おうとしたのが間違いだったのです。身の程知らずでした。

 このドレスはお母様が財政の苦しい中、カーテンの生地で作ってくれたドレスでしたわ。

 でも、そろそろサイズが合わなくなります。お父様が王都でドレスを新調するように貯金を切り崩してくれました・・・私は制服を新調します。それで、婚約破棄を正々堂々と受けます」



「ちょっと、待つの~、詳しく話すの~」

「ええ、そうね。私は生徒会副会長エリザベスよ」


「はい・・・」



 ・・・・・



「なるほど、予算は金貨5枚、それなら、良いドレス店を紹介するわ。ジュエリーも揃えるわ」


「分かったの~、じゃあ、ゴージャスドレス店の買収はやめにするの~」



「ヒィ、そんな」


 ザワザワザワ~


「ダセェ、いい気味だ。散々お高くとまっていたから」

「幻滅~、あの店、筋は通っていると思ったのに、結局金なのね」

「大変、社交界に知らせなければ」



 街雀たちがざわめく。もう、誰もドレスを買いに来なくなるわ。

 私は絞り出すように魂から声を出した。



「お、お待ち下さい!このゴージャス!エミリー様にドレスを買って頂きたいですわ!ゴージャス界のゴージャスと歌われたこの私の腕を買って下さい!!!」



 幼女の目の光が消えた。

 懐からペロペロキャンディーを出したわ。


 ペロペロ~


「お前の態度は気に食わないの~、でも、今の発言は気に入ったの~、エミリー様のお考えなの~」



「ど、どうか、お願いします。令嬢は婚約破棄をされてナンボ!立派な婚約破棄ドレスを作りますわ~!」



「予算は金貨5枚ですわ・・・」

「レンタルにしますわ!ジュエリーとセットでそのお値段にします」


 エミリーは快諾をした。




 ☆☆☆一月後



「おい、ゲオルド、交流会に参加せよ」

「マック先輩・・・分かりましたよ」


 騎士科の先輩方が、数日前からひつこく俺たちにつきまっている。



「さあ、ミミー、交流会に行こうぜ」

「ゲオ~、分かったわ」


 あれ、中庭に、何か建っている。コロシアムみたいだ。



「ゲオルド殿、ミミー嬢、ここから入場せよ」


「はい・・・」

「まあ、何かしら」


 会場に入ったら、アナウンスが流れる。



【さあ、真実の愛で結ばれたお二人が入場します。私は吟遊詩人ギルドのマリナでございます。結婚式などの司会は吟遊詩人ギルドまで是非、ご依頼を!

 さあ、皆様、拍手をお願いします】



 パチパチパチ~


「「「ウワワワ~~~~~」」」

「見ろ。ゲオルドだ」

「ミミー嬢よ」



「何だ。何だ」

「ウケる~」



【ご紹介します。フリラ男爵ゲオルド様、当学園1年、本人は2年のつもりですが留年です。王国西北部に領地がございます。特産物はブドウです。第2子です。婚約者ダン男爵家の爵位を蹴っての婚約破棄です】


「な、何だと」

「ウケる~」


【次にミミー嬢、ダイア侯爵家の親戚の令嬢です。実家は貧窮し令嬢教育をほどこせないので、貴族学園入学中だけ援助をしてもらいました。

 卒業後は女官にしようと思ったけど、無理なのでメイド、それも無理そうだから『どーしたらいいのよ』とダイア侯爵夫人のお言葉です。尚、『当侯爵家とは関係ございません。皆様、重々ご承知下さい』とのことです!】


「何だと、ミミー、侯爵家を継げるのではないのか?」

「え~、ゲオが男爵家継ぐのじゃないの!」


「継げるさ。ミミーと結婚してもダン男爵は継げる。あちらの男爵から気に入られているのだ」



 客席にはそれぞれの両親がいた。


「息子が馬鹿で申し訳ない」

「どうして、継げると思うのだ。私はエミリーを愛している」



 次に、婚約破棄される方のエミリーが登場する場面である。



【次は、ダン男爵エミリー様、領地はゲオルド様の隣。主要産業はワインの醸造です!ゲオルド様とは政略結婚だったのですね。

 しかし、『子供の頃は優しかった。ああ、王都の魔に飲み込まれた』と悔やむ日々、しかし、令嬢は立ち上がった。さあ、どうぞ。ドレスと宝飾のプロデュースはゴージャスドレス店です!】



 扉が開き出てきたのは、まるで、クジャクのようなドレスをまとったエミリーである。


 エリザベスが右手を引き。左手はゴージャス夫人が引く。後ろには、幼女と男子がドレスの裾を持つ。

 幼女はメアリーで、男子は第二王子クロイツである。


 ドレスの重量27キロである。補助が必要なのだ。



「エミリー様、この袖のボタンを押すと、ドレスが光ります。婚約破棄を宣言されたら、押して下さい」

「・・・はい」



 エミリーは壇上に立ち。二人から婚約破棄を受ける演目であるが、


【では、生徒会長殿下、お言葉をお願いします!】


【ア~ハハハ、何だか知らんが全てよし!】



 ワーワーワーワー!



「ヒーロー希望者はこちらへ並んで下さい!」


「はい!はい!2年の領地経営科です。シモギ伯爵家の三男です」

「私は、王宮役人を目指しています。その、でも、男爵家をエミリー様ともり立てたいです!書類仕事はバッチリです」



 な、何だ。エミリー、そんなに人気なのか?

 ミミーは、



「知らないのだからねっ!」


 ヒュ~ンと去った。



「「「さあ、早く婚約破棄しろよ!」」」

「そうだ。真実の愛を見せてみろよ」



「す、するもんか、エミリー、やり直しをしようぜ!」



【さあ、まさかのドンデン返しです!何て、優柔不断なのでしょう!エミリー様のお返事は?】


 エミリーは、袖についたボタンを押した。


 ピカッとドレスが光り。ドレスの裾が、ワイヤーによって広げられる。



「結構ですわ!婚約破棄をしますわっ!」


 あまりに神々しい姿であった。


「着火!」


 シュ~ン!シュ~ン!


 バン!バン!


 花火が打ち上げられた。



「「「「オオオオオオーーーーーー」」」」



「はあ、何故・・・」


「ゲオルドや」

「父上!」


 チャリン♩


「これが手切れ金だ。政略は別の事を考える」


「ウウ、そんな」

「男娼でもやれ」



 ミミーは使用人学校に転校、ゲオルドは王都で子供に交じって見習いの冒険者をやっていると云う。


 その後公爵家では、収支報告が行われた。




 ☆☆☆公爵家



「ヒィ、お金いっぱい使ったけど、なんで増えているの~」

「フフフ、さすがね。広告費に、屋台からの場所代、仮設のコロシアムは陸軍工兵隊の演練だから無料よ。しかも、兵隊さんたちに良いご飯をあげて、皆、感謝していたわ」


「フエ~、もう、やーなの。メアリーは真実の愛を見たかっただけなの~」


 真実の愛、それは、イベントでは発生しないのかもしれない。






最後までお読み頂き有難うございました。

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