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n回目のはじめまして

作者: S

はじめまして

よろしくおねがいします

ある教師


「皆さん初めまして!!!!!今日から皆に数学と社会を教えていく、松原マキと言います!!!よろしくね!!!!!!!」

まるでツイッターにいるオタクみたいな量のリクエスチョンマークが付いた挨拶(後から分かったが、実際、彼女はオタクだ)をして、すぐに、『三権分立』のページを開くよう指示する。これも大声だ。

僕は、とんでもないやつがここに来てしまったと思った。多分他のみんなもそう思っている。

彼女はというと、それには気づかずに立法、行政、司法の相関図を黒板に書き出し始めていた。

はぁ、とため息がもれる。これなら前の先生の方がよかったな。僕は今後の塾での学習を半ば諦めながら重い筆を動かした。


授業が終わり、まず最初に………僕は、感動した!

こんなにも分かりやすく、面白い授業が今までにあったか?

帰り道に興奮とか彼女への恐怖とか色々なものが、頭の中にある種モヤモヤしたものを作り出していた。そして迎えの車の中で、やはり感動した。授業の緩急、間に入る雑談の面白さ、質問対応…

どれをとっても一級品だと感じた。

今まで見てきた先生は、怖さはなくともあれほどの驚きは持ってはいなかった。

そう、大学生の今、思えば彼女は後にも先にもない人間であり、教師だった。挨拶や間に入る雑談に垣間見える思想はぶっ飛んでいた(常識は持っていた)人だった。


おっと。


ともかく、面白くて良い先生だったということだ。


一年ほどして、海外のディズニーランドに行くという口実で彼女が仕事を辞めるまで、その日々は続いた。


―――――――――――――――――――――――――――


ある教師"2"


高校に進学してから少し経って、塾の友達からYouTubeのURLが送られてきた。

ああ。そういうのが好きだったかな、コイツは。

『郡道美玲』

という名前らしい。

続けて友達は、「これ松原先生じゃね」

…???

動画を視聴する。「初めまして(小声)ちょっと今職場のトイレから配信してんだけどさ」

あれ、、、え……、と、う、あ…

うめく。

まあ、驚いた。それだけだった。

「ふーん」と返信した。関心がないわけではなかったが。言葉が出てこなかったからそうした。


その後、特に彼女の新しい名前を検索することはなかった。アナリティクスに勝手に流れてきて、元気なことは分かっていたから。

再び検索したのは、炎上したときだった。

どちらかというとこっちの方が驚いた。モラルに欠ける人ではなかったから。

それからも炎上は何度も続いた。

トレンドに上がっているのを見るたび、驚きよりも段々と鬱憤がたまった。彼女はこんな人じゃなかった。


ここまでにしておこう。ここからは皆知ってる。

もしかしたら本当は、彼女は変わってしまっていたのかもしれない。分からない。

僕には分からない。本当に。

今はなんだかひどくむなしい。

人って、変わりたくない生き物なんだと思ってる。誰だって小学生の日々を送り直したいって思う。だから、むなしいのかな?

…分かってるよ。俺は認めたくないだけだ。

全部忘れた方がいいのかな。先生は多分、「キモイな」っていうだろうな。

どっちがリアルだったんだろう?僕の知ってる方がリアルだといいな。


忘れようと、思う。感謝以外は、全て。

感じたことだけは変わらないから。

お読みいただきありがとうございました。

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