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悪役貴族よ世界の中心たれ  作者: ねこまた
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第三話. Side,シャルロット

 私の名前はシャルロット・ヒーヴィル。ヒーヴィル公爵家の長女だ。私には2人の兄と両親がいる。

 でも、私が本当の家族だと思えているのはヒーヴィル家の嫡男であるレイスお兄様だけだ。母親とは必要最低限の会話しかせず、父親とは顔を合わせども話をしたことなんて一度もない。もう1人の双子の兄であるグレイはレイスお兄様に対して劣等感を抱えているようでレイスお兄様と仲良くしている私を敵視している。だからこそ、私にとって唯一心を許せるのはレイスお兄様だけだ。

 でも、今では一方に寝るほど仲のいいレイスお兄様でも1年くらい前までは意図的に避けていた。

 それは私が()()()()()()ことが大きく関係あるのだと思う。



        ========



 私が前世の記憶を思い出したのはある程度自分で自由に動けるようになった2歳くらいの時だった。

 その当時はものすごく混乱した。何が原因で死んだのか、いやそもそも死んだのかどうかわからないのに気がついたら全くの別人になっていたのだから。

 だが、精神年齢がある程度高かったため少ししたら冷静に状況を掴み、整理することができた。結果、これはこれでいいんじゃないかと思い屋敷の中を見て回ることにしたのだ。

 その当時私には()()()()()()()()()()()。だからこそ1人で屋敷の中を見て回ることができたのだと思う。

 元々いた部屋を抜け出して長い廊下を必死に歩き曲がり角を曲がった時に私は何かにぶつかり倒れてしまった。それが当時3歳だったレイスお兄様だ。


 「あうっ。」

 「む‥‥‥。お前は確か‥‥シャルロットだったか?すまない。もっと注意していればよかったな。」


 そう言ってお兄様は私を起こそうと手を伸ばしてきた。私も反射的にその手をとって立ち上がった。そして、お兄様の顔を見た時にゾッとした。肉体が幼いのと精神年齢が高かったからこそ気づいてしまったのだろう。

 お兄様がありえないほど歪なことに。

 見た目はどこにでもいる三歳児だ。でも、目が三歳児のそれではなかった。大きな欲望が瞳の中に渦巻き、それが底なし沼のように底が見えないほど濁っていたのだ。それに加え、まとっている雰囲気も名状のし難い威圧感を持つものだった。だが、やはり当時の私がお兄様を避けるきっかけになったのは目だった。自分の目を瞑ろうが、別のことを考えようとしようが必ずと言っていいほど頭の中に浮かんでくるレベルでのトラウマになったのだから。



        ========



 それから私はお兄様を徹底的に避けた。食事はできるだけ早くすませ、食事の時以外は部屋から出ることなく一日を過ごした。

 3歳になってからはじまった貴族の教育も本来は資料の多い書庫でやるものだが私は無理を言って自室で行ってもらった。教師がお手本としてお兄様の授業を見に行くと言った時は全力で抵抗した。具体的にはー


 「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダぁ!絶対!行きたくなぁい!」


 ドッタバッタ!ガンガン!ドンドン!


 「あ、あの、シャルロット様わ、わかりましたから落ち着いて‥‥‥。」


 床に寝転んで腕と足を振り回して部屋中を転がり回った。それはもう盛大に。教師の目が死ぬくらいには。

 そんなこんなで結局4歳になるまでの2年間私はお兄様を避け続けた。その時に幼女のような仕草を意図的にしていたが、恥ずかしいのは最初だけだった。おそらく肉体に精神が引っ張られていたのだろう。だからこそお兄様を怖いと思わなくなるきっかけであり、私が命を失いかけたあの出来事が起きたのだろう。



        ========



 それは私が4歳になって何日かたった曇りの日だった。

 その日は貴族としての教育が休みの日であり尚且つ、休みなのは私とグレイだけだった。レイスお兄様は朝から教育が行われていたので私は気兼ねすることなく屋敷中を動き回っていた。

 この時も私には()()()()()()()()()()()。さらに、屋敷にいる使用人は全員私に対して必要以上に関わろうとしないので顔も覚えていなかった。そんな状態であればー


 「シャルロットお嬢様。少し、外にお散歩に行かれませんか?」


 この国の中には存在しない深緑色の髪と瞳を持ち、屋敷の者ではないメイドが声をかけてきてもー


 「いくぅ。」


 何も考えずに返事をしてしまうのだ。


 

 そのメイドに連れて行かれたのは屋敷からほど近い場所にある至って普通の森だった。何か特別な植物が生えているわけでも、特殊な生き物が生息しているわけでも、何か伝説があるわけでもないいたって普通の森。

 だが、お兄様を避けるために外に出ることも少なかった私からしたらその森は新鮮であちらこちらを見渡して、気になるものがあれば近寄ってみるということを繰り返していた。そんなことをしていれば自然と森の深いところに入り込んでいく。本来ならば侍女が諌めなければいけない立場にあるのだが私を外に連れ出した侍女は私を諌めることはなく、さらには


 「お嬢様、あそこに可愛らしいお花が咲いていますよ。」

 「ほんとっ?!」


 森の奥の方にある花や生き物を私に教え森の奥の方に誘導していたのだ。そして、あたりが薄暗く感じるほどの深い場所に来たときに私は何かがおかしいと気がついた。その瞬間に一時的にでも精神が元の状態に戻ったおかげだろうか。私が本能的に横に飛び退くのと同時に私が立っていた場所に巨大な戦斧が叩きつけられた。


 「‥‥‥‥‥え‥‥?」

 「あー‥‥‥外したかー‥‥。急に動かないでくださいよ、お嬢様?」


 

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