第十一話
第一王女殿下の誕生パーティーでエルリア・メイスと契約を交わしてから一ヶ月。
今日も俺はレヴィアナと剣の鍛錬に勤しんでいた。
「ふっ!」
レヴィアナから教わる剣術は正々堂々が売りの騎士の剣ではなく相手を殺すことに特化した戦士の剣だ。そのため型の鍛錬なんてものはなく、ひたすら体力作りと実践を繰り返す。
俺はレヴィアナに向けて突きを放つが予想通り軽く体を横に逸らすことで避けられてしまう。
レヴィアナが突きを放ったことで隙のできた俺を下から切り上げようとしてくるがその予備動作を見逃さず、突きを放ったままの状態になっていた腕をレヴィアナの方にそのまま水平に切り裂くように動かす。
「‥‥っ!」
突きを放ったままの状態から攻撃をしてくるとは思わなかったのか、レヴィアナは少し驚いた様子で俺の攻撃を剣を盾にすることで防いだ。
レヴィアナはそのまま後ろに飛び退き俺との間に距離をとった。
「‥‥さすがですね、マスター。あの体勢から剣を振ってくるとは思いませんでした。」
「そうか。お前が予想できなかったということは俺も少しは成長したのか?」
「そうですね‥‥‥あの後の動きをもっと考えられていたらなお良かったですね。」
なかなか厳しい評価をしたレヴィアナは俺に向かって一直線に突っ込んできた。その速度が尋常ではない。
だが、あの速度なら動きを急に変えることはできないだろう。そう考えて、レヴィアナの剣の間合いに入る直前で横に飛んで攻撃をかわしたと思ったが、レヴィアナは速度はそのままに向きをこちらに変えてきた。
こちらに来ると思っていなかった俺はレヴィアナの一撃を受け切ることができず地面を転がった。
「固定概念に囚われてはいけませんよ、マスター。実力のあるものならばこのくらいは当たり前のように行ってきます。」
「‥‥‥‥‥本当か?」
力があれば誰でも物理法則を無視できるなんて‥‥‥‥。それは流石に予想してなかった。
「マスターの次の課題はこの動きに反応できるようにすることですね。」
「‥‥‥‥‥‥。」
「一つ言わせて頂きますと、マスターは肉体的な強さの上限に達しています。」
「‥‥‥何?」
「誤解がないように申し上げますと、現在の十歳の肉体が出せる限界に達しています。さらなる強さを手に入れるためには成長を待つか技を磨くかの二択です。ですが、マスターは成長を待つなどしないでしょうし、今のうちに技を磨いておけば成長した時に肉体を限界まで鍛えることに集中できます。尚且つ、技も早く磨いた分だけ精錬されますので強さという点で言えば利点しかないかと。」
‥‥つまり現時点での俺がこれ以上の速さや力を出すことはできない。だからこれ以上の強さが欲しいなら技を鍛えろと。そしてその行為は成長を待って鍛えた時の技よりも極まったものになるということか。
「‥‥レヴィアナ。頼む。」
「承知いたしました、マスター。」
俺の望みを叶えるための近道があるのなら遠慮なく使おうじゃないか。
使えるものは何でも使わないとな。
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鍛錬を技を極めることをメインとしてから一年。
一年前に技を鍛えることをメインとしたのは正解だった。技を鍛えることをメインとした結果、以前よりも動きのつながりというものを意識して動くことができるようになり、戦闘中に無理な体勢からの動きをすることなくあらゆる攻撃に対応することができるようになった。俺は一年前と比べ物にならないくらいの力を手に入れていた。
今は以前の実戦をメインとした鍛錬に戻る前にこの一年の成果を確かめるためにレヴィアナとの模擬戦を行おうとしていた。
「二人とも用意はいいですか?」
今回、審判はシャルが行う。
「ああ。」
「私も問題ありません。」
「では‥‥‥‥」
シャルが手を高く上げる。
俺もレヴィアナもシャルの手に集中することはなくお互いにだけ集中している。
シャルの手が空気を切り裂くように振り下ろされる。
「始めっ!」
開始の合図とともに俺もレヴィアナも相手に向かって飛び出す。
俺は下から斬り上げるように、レヴィアナは上から斬り下ろすように剣を振る。
剣と剣がぶつかる。俺もレヴィアナも一切の手加減をしていないために剣どうしがぶつかった衝撃が肩のあたりまで伝わってくる。
鍔迫り合いのような状態になっているのをいいことに俺は剣を上手く傾けレヴィアナの剣を流すと、先ほどとは逆の方向から斬り下ろすように剣を振るった。
レヴィアナはそれを瞬時に体を回転させることで剣で受け止め、さらに体を回転させた勢いを利用してそのまま俺の剣を弾き距離をとった。
「させないっ。」
体勢を立て直す前に一撃を加えようと俺は距離を詰め剣を振るが、レヴィアナは瞬時に体勢を立て直し低くしゃがむことで攻撃を回避した。
レヴィアナは下から突きを放ってきた。同じく突きを返すが、上からの突きと下からの突きでは威力が違うためレヴィアナが押し負ける。
レヴィアナの腕が弾かれ、剣を振ることが難しくなった。だが俺も同じく剣を突き出したままのためすぐには威力のある攻撃はできない。その隙をついてレヴィアナは地面を蹴り、円を描くように俺の背後に周り剣を振るってきた。
俺は回し蹴りの要領で足で剣を弾くと距離を取った。
「さすがレヴィアナだ。あの動きは俺にはまだできない。」
「マスターも随分と強くなりました。」
「さあ、続きだ。」
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