プロローグ
昔から勇者が、主人公が嫌いだった。
例えば勇者。
ただ、人々に選ばれたから。
ただ、力を持っているから。
自分で考えることをせず他人の言葉で自分の命をかける愚か者。
命をかけて使命を果たしても必要がなくなればすぐに捨てられる悲しき者。
例えば、主人公。
ただそこにいるだけで異質な存在感を放ち、近しい人間以外をその他として強制的に処理する理不尽の権化。
それがいるだけで周りの人間は自身の性格を、容姿を、努力を全て主人公以下として統一されてしまう。
それの周りに女が複数集まればその大多数が必ず心に傷を負う。傷を負わなかったものもその後も傷を負わないという保証はない。まさに傲慢。
そんな最悪の人物に多くの人が憧れる。
"自分もこうなれたら""自分もこうなってみたい"と。
そんな中で俺だけが違った。
俺が憧れたのは"悪役"。
最終的に勇者や主人公に物語から追放される存在。
多くの人々のヘイトを集める存在。
物語を面白くするだけの存在。
こんなイメージしか抱かれることのない"悪役"。
だが、それは一部の側面でしかない。
見方を変えれば"悪役"はまさに俺の理想だった。
自分の目的を持ち、何があろうと最後までそれを貫く強さ。
他人の考えを取り入れようとも根本的な自分の考えを捨てない強かさ。
どんな人間であろうと勇者や主人公と同じ存在感を放てるようにする力。
場合によっては、絶対的な勝利を約束されている勇者や主人公を下す圧倒的な力。
それこそが俺がずっと憧れてきた"悪役"だった。
だが、"悪役"は"悪役"だ。
どうしても最後には負けてしまう。
なら、どうするか。
圧倒的で理不尽で暴力的で何人にも真似することのできない力を手に入れればいい。
そうすれば、主人公に負けることはなくなる。
だが、力以外で攻撃されたら?
力ではどうすることもできない。
さらに1人でできることにも限界がある。
なら、どうするか。
仲間を作ればいい。裏切ることのない絶対的な信頼を置ける仲間を。
そうすればできることの幅が増え、不可能なことが限りなく減る。
これが俺が求める完璧な"悪役"だ。
いや。
前言撤回。
まだ完璧ではなかった。
"悪役"には華が必要だ。"悪役"をさらに"悪役"たらしめる華が。
では、華とは何か。
女である。
美しく、そこにいるだけで場を華やかにする美女、美少女だ。
もちろん1人ではない。何人もだ。
そう。ハーレムを作るのだ。
身体だけの関係ではない。心の奥底から愛し合う女たちだ。
裏切りの可能性をなくし、無意識下でも俺を最優先する最高の女たちでハーレムを作る。
これこそが俺の求める完璧な"悪役"だ。
ハハッ、フハハッ、‥‥‥‥
「クハハハハハハハハハッ、フハハハハッ!!」
「‥‥‥レイ。」
ビックゥ!!
「‥‥‥‥‥なんでしょう?」
「‥‥‥‥‥‥今日は私の番。」
「あー、リアさん?今日はみんなでだったはずですが‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥正妻権限、発動。」
キラーン!
「‥‥ベッド‥‥‥行くよ。」
「‥‥‥‥‥はい。」
この世界に悪役貴族として転生して、力も地位もハーレムだって手にいれた。
順風満帆な悪役ライフを楽しんでいたのになぁ‥‥‥。
唯一誤算だったのは、ハーレムの女たちが色んな意味で強すぎたことかなぁ‥‥。
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