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空と煙とついでに君と  作者: 長居夜仁
4/5

予報通り

講義が終わり、真っ先に足を運んだのはバイト先


「こんばんは秋君、講義帰りかい?」

店に入ると喫茶店のマスターでもしていそうな中年の男性から良く通る声をかけられる。

「こんばんは店長、そうなんですよ今日は昼からここに来ようって決めていて、今日のオススメはありますか?」

「勿論「何枚か」用意しているよ。少し待っていてね」


店長が喫茶店のマスター感があるからと言って趣味が喫茶店巡りという訳でもなく、向かっていたのはバイト先のレンタルビデオ店だ。

趣味の映画鑑賞の為に足繁く通っていたらいつの間にかバイトに入ってしまっていたのである。

従業員割引で安く借りられるので、願ったり叶ったりではあるのだが、それはさておき


店長が何枚か映画を持って戻って来る。

店長のお薦めはハズレが無く、特段見たい映画が無い時は店長のお薦めを借りては観ており、ディスクを返す時の感想会が1時間を超えるのはザラである。


「これはどうだい?人間の血中アルコール濃度は0.05%が理想という理論を……」



結局1時間程話し込んだ後、1番初めにお薦めされた映画を借りてきた。


家に帰り、スマホを置き、カーテンを下ろし、テレビを付けディスクを入れる。

そこにはもう映画と言う名の広い世界が広がっていた。

映画を観ている間は支えである喫煙への欲求すら忘れ、世界に入り込む……




スマホを置いたまま、人との関わりを断ちつつ、空に煙を吐き出す。


「とても良かった、流石店長」と、思わず呟き映画の余韻に浸る。

あの映画のここが良かった、あの台詞の言い回しが、等とエンディングの曲を鼻歌で歌いながら店長との感想会に向けて言葉を選ぶ。


「その曲もしかして、what the lifeですか?」と、仕切り板越しに清水さんから声がかけられる。


思考に耽っていた為清水さんが出てきていた事に気付かなかった為一瞬ぽかんとしてしまった。


「あ、すみません。好きな曲だった物で、、、」と、申し訳無さそうな声が聞こえる。

「すまん、急に声を掛けられてびっくりしていただけだ。what the lifeで合ってるぞ」急いで返事を返す。


「そうですよね!好きな映画のエンディングで使われていたので良く聞いてるんですよ!」と元気な声が。


少し驚きながら、「もしかしてアナザーアラウンドか?」と尋ねると、

「ご存じでしたか!私あの映画が大好きで……もしかして秋斗さんって映画好きだったりしませんか?」と、少し硬い声が届く。


「まあ、よく見るが」と、返すと

「やっぱり!でしたら、これなんか……」と熱のこもった声で映画のタイトルを複数挙げられる。

「知ってるぞ、逆にこれはどうだ?」と、タイトルを挙げ返してみる。

「勿論、五周はしてます!あの映画はこの演出が……」



「あ、もうこんな時間」と、彼女が呟いた。

気が付けば日はすっかり落ち、少し涼しくなってきていた。

「私はそろそろ部屋に戻りますね」と、彼女の声がいつもの落ち着いた声に戻る。

長々と話し込んでいた事に驚きつつも、「それじゃあ」と部屋に戻ろうとしたところ、仕切り板の向こうから


「あの、良ければまた映画のお話をしませんか?

こんなに楽しくお話できたの久しぶりで、」ともう一段落落ち着いた声がかけられる。


「ああ、また話そう」とスムーズに返せたことに驚きながら部屋に戻る。


仕切り板越しに話していた為結局最初に1人で吸っていた2本程しか吸えなかったものの、不思議と喫煙後の充実感以上の何かに満たされていた。

読んでいただきありがとうございます。

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