盗賊
あれから十数日が経ち神職者会議が開催される三日前になった。そろそろエルスに向かって出発しようと街を出て車で向かっていた。
「ねぇリュウガ、エルスってどんな街かな?」
「まあ、クレアさんから聞いた話しによるとこの世界随一の魔法都市だそうだ」
オレは車を運転しながら瑠璃の問いに答える。魔法都市エルス、今回神職者会議が開催される場所で広大な都市である。
「魔法都市か、楽しみだな」
「ああ、珍しい魔法を使う者が多数いるみたいだしな」
魔術師である宏太はエルスに着くのが楽しみだったようだ。エルスは魔術師ならば誰もがいってみたい都市、そこに住む者の殆どが魔術師だ。俺も神職者会議が目的ではあるが珍しい魔法をお目にかかりたい。
「っ!モンスターか?」
「ああ、見た感じ大したのはいなさそうだ」
オレはさっさと目的地に着くために極力モンスターが出現しない道を進んでいたがあたりに数十対のモンスターが現れた。
現れたのはどれもDランクの雑魚モンスター、俺たちなら一人で余裕で倒せるモンスターだ。
「雑魚に使う時間はない、来綺やってこい」
「は?なんでオレなんだよ」
「いいからやれ」
「いやだぜ、雑魚相手なんて面白くもないし、レベル上げも出来ない」
どうやら俺と同じく来綺も雑魚モンスターの相手はしたくなかったようだ。少し前の来綺ならば喜んで戦っていただろうが力をつけた今では雑魚相手はしたくないようだ。
「なら宏太」
「やだ」
「じゃあ瑠璃」
「いやよ」
「ちっ、たくしゃねぇな、その代わり次宏太か来綺、運転変われよ」
全員戦うのが嫌なようだったので仕方なくオレが戦う事にした。車を降り周りの敵が一斉に襲いかかってきたがオレはそれを一瞬で倒す。
「さて、いくぞ」
それからオレ達は再びエルスに向けて出発する。今度は来綺が車を運転して向かう。
「みんな格下モンスターと戦うのは嫌なの?」
リリスは皆んなに聞く。
「そりゃね、自分以外に倒せる人がいたらね」
「ああ、周りにそのモンスターを倒せる奴がいなけりゃオレがやるが」
「強いモンスターなら歓迎だ、だが格上相手はごめんだぜ」
瑠璃も宏太も来綺も今となっては自分の格下相手との戦闘には燃えなかった。しかし来綺は格上相手との戦闘は避けたいようでその言葉に二人も頷いていた。
「まぁオレもお前らの意見に賛成だ、だが格上相手との相手は望むところだ」
「リュウガはそうなるよね」
オレは格上との戦闘は逆に一番燃える。オレの言葉にリリスはやはりだなと言う声を上げ、三人も納得した。
それから約二時間が経った。ルーベルクを出てからは大体四時間程だろうかここまで車を飛ばしておよそ三百キロといったところだった。
「宏太、そろそろ運転変わってくれ」
「分かった」
来綺は約百五十キロ車を運転していたが疲れてきたようだ。今度は宏太が運転席に座る。
「少し寝るからまた順番になったら起こしてくれ」
「分かった」
来綺は眠りに入り一時間が経った。今日は朝早く、七時に出て今は昼の十ニ時、ここらで昼食を取ろうと車を止める。
「来綺、起きろ飯にする」
「ん……ふぁぁぁぁ……分かった」
来綺を起こして車から降りる。それからオレ達は五人で洞窟にて昼食のサンドイッチを食べていたが気配感知に何かが引っ掛かった。
「なんだ?何か近づいてきてるな」
「モンスターじゃないわね」
気配から察するにこの反応はモンスターではなく人間、それも数十人だ。
「なんだ?あの物体は?」
「なんかよくわかんねぇけど高く売れそうですね、ボス」
オレと宏太は洞窟を出てその声がする方へと向かう。
「あ?盗賊か?」
「ほんとだな」
気配感知にかかったのは数十人の盗賊だった。一番先頭にいる大男、見た目は三十代後半の人間の男、筋肉質でいかにも悪そうな顔だった。
「おい、そこのガキ二人そこの訳わからねぇ物体はお前らの物か?」
「ああ、そうだがそれがどうした?」
「殺されたくなかったらそれをよこしな」
盗賊の一人、痩せ型の二十代後半の人間の男がオレ達に向かってその言葉を言い放つ。
「は?渡すわけねぇだろ」
「状況が読めねぇのか?殺されたいのか?」
「なぜオレ達がお前らに殺されるんだ?」
「その物体を渡さねぇからだよ」
どうやら盗賊達は車を盗もうとしているようだ。しかしオレが渡せと言って素直に渡すわけはない。
「リュウガ、さっさとやりなさいよ」
「うん、さっさとやっちゃって」
「分かってるさ」
洞窟から瑠璃とリリスが出てきた。二人はオレに盗賊をさっさと倒せていってくる。
「おっ!可愛い子いるじゃねぇか」
「あ?」
「おいガキども!そこの女二人と物体を置いてこの場から立ち去るなら見逃してやる」
「は?今なんつった?」
「死んでも後悔するなよクズの盗賊が」
瑠璃とリリスを見るなり盗賊は車と二人を要求してきた。その言葉にオレと宏太は痺れを切らしていた。
次の瞬間、オレと宏太は盗賊共を次々と倒していく。残ったのはボスらしき人物と一人だけだった。
「ひっ!許してくれ!」
「今すぐ立ち去るから勘弁してくれ」
盗賊は酷く怯えていた。流石にあれだけの力の差を見せつけられればさっきの威勢も無くなっていた。
「だめだ、ぶっ殺してやる!」
「ああ、オレらを怒らせた時点でお前らは終わったんだよ」
オレと宏太は盗賊共がリリスと瑠璃を要求した時点で生かして返すつもりはなかった。
「あばよ!」
「待って!リュウガ」
「なんだよリリス、今からこいつを殺そうとしてたのに」
盗賊に止めを刺そうとした瞬間にリリスが止めに入ってきた。
「そいつら盗賊でしょ?」
「見ればわかるだろ?」
「だったら懸賞金とかついてるんじゃない?」
「あ!確かにそうか!」
「言われてみればそうか」
オレと宏太はリリスの言うことに確かにとなった。盗賊には懸賞金がかけられている事が多く中には大金がかけられている者もいる。しかし殺してしまえば懸賞金はもらえなくなってしまう。
「おい!」
「はい、なんでしょうか?」
「お前らに懸賞金はかかってんのか?」
「かかってます」
オレが聞くと盗賊のボスは素直に答えた。やはりこの盗賊共には懸賞金がかけられていたようだ。
「いくらだ?」
「俺は金貨十枚、他の奴らも金貨二枚から五枚がかけられてます」
盗賊のボスによるとかなりの金額がかけられているようだった。全員を引き渡せば相当な金額になりそうだ。
「よし、殺すのはやめてお前達を引き渡すとしよう」
その後、オレ達は盗賊全員を縄で縛り動けなくようにした。
「さて、ここから一番近い街はどこだ?リリス」
「すぐ近くにナハールって街がある」
「よし、じゃあそこに向かうか」
オレ達はエルスに向かう前に盗賊達を兵に引き渡す為にナハールに向かう事にした。




