最悪の展開
「ヨルゼ師匠、なぜここに」
同時刻、リーナとテルシアが女魔族と戦っていると目の前にリーナの師匠であるヨルゼ・レイブンが現れる。
「あなた、よくも邪魔してくれたわね!」
「リーナよ、無事か?」
「はい、助かりました」
ヨルゼは魔族の言葉を無視してリーナに手を差し伸べる。リーナは突然現れた師匠に戸惑っていた。
「リーナ、この方は?」
「この人はヨルゼ・レイブンと言って私の剣の師匠よ」
リーナはテルシアに師匠の事を紹介する。ヨルゼはレイブン流剣術の師範でありリーナは昔、ヨルゼの元で数年間、世話になっていたのだ。
「助かったわ、ありがとう」
「よい、無事なら何よりだ」
テルシアは礼を言う。ヨルゼが助けに入らなければ今頃どうなっていたか、それを思うと感謝してもしきれない。
「師匠はどうしてここに?」
「偶然この近くに来てたんだが、コロシアムの方に何やら不穏な気配を感じて駆けつけたのだ」
「そうでしたか」
ヨルゼは偶然この街ルーベルクに来ていてこの場に駆けつける事ができようだ。そのおかげでリーナとテルシアは助かったわけだ。
「ちょっと!何私を無視して話してるのかしら?」
「魔族の言葉なんぞ聞かん!」
「失礼な男ね、あなたも私が壊してあげるわ」
魔族はヨルゼの態度に苛立っていた。それに加え後一撃で仕留められたのに邪魔されて内心穏やかではなかった。
「二人ともまだいけるか?」
「もちろんいけます!」
「私もいけるわ、十分回復できたし」
リーナとテルシアが負った傷はリリスによる遠距離治癒により既に治っていた。そしてここからはヨルゼが加わり三人で戦う事となった。
「三人になったところで私に勝てるとでも?」
「勝てる!師匠が加わったなら絶対!」
三人は魔族に向かって攻撃を仕掛ける。ヨルゼが加わり魔族は先程までより余裕がなくなっている。
「ちっ!鬱陶しいわね!」
「レイブン流……昇り風龍!」
「”絶・火聖天刃”!」
リーナは剣から風の魔法が発動した。その魔法は風の龍となって剣に纏わり付き、その剣を下から上へと振り魔族に攻撃した。
それと同時に背後からテルシアは剣に炎を燃え盛せており巨大な剣を魔族に振るう。
「甘いわ!上がガラ空きよ!」
魔族は瞬時に上に飛んだ。しかし……
「な!いつのまに!」
「レイブン流……降り風龍!」
魔族の飛んだ先にはヨルゼが待ち構えていた。ヨルゼは剣に風の龍を纏わせて上から下へ目掛けて魔族に叩き込む。この技は昇り風龍を逆にしたものだ。
「がっは!」
「今よ!いっきに叩き込むわ!」
「レイブン流……奥義……″覇龍混絶・乱!」
「″風刃居合突″!」
目前に落ちてきた魔族にさらに攻撃を仕掛ける。リーナはその場に立ったままで剣に複数の龍を纏わせ攻撃する。
魔族を挟んでテルシアは剣先に風の刃を纏わせその剣先を魔族に向かって突き出して突っ込んでいく。
「くっ!……がはっ!…………くらえ!″黒暗爆砲″」
「なっ!」
魔族は背中にリーナの攻撃をくらいつつテルシアに向かって闇属性上級魔法を放つ。放たれた魔法は黒く巨大な魔力砲となりテルシアに襲いかかる。
「がっは!」
「テルシアさん――――!」
テルシアは魔族の魔法をもろに受け後方に吹き飛ばされる。そして立っている事もできず血を吐き倒れた。
「くたばれ―――!」
「がっ……」
ヨルゼは魔族に向かって覇龍混絶を放ちとどめをさす。魔族は死に身体は消え去っていく。
「おい、大丈夫か?しっかりしろ」
「ぶはっ!……ええ、急所は咄嗟に避けたのだけれど」
「大丈夫よ、リリスさんがすぐ治してくれるわ」
これまで戦いの中、何度もリリスに助けられた。今度もきっと助けてくれるだろう。しかしなかなか傷が癒えなかった。
ふと、リリスの方を見ると衝撃を受けた。そこには腹に大穴が空き血が大量に出て倒れているリリスとその近くには上級魔将がいたのだから。
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同時刻、その衝撃を受けていたのはリーナ達だけではなかった。それぞれ上級魔将と戦っていたルビオと瑠璃、宏太と来綺もその光景を見た瞬間ひどく動揺していた。
「おい!嘘だろ!」
「なんだよ、これ」
宏太と来綺は激戦の末に上級魔将を倒した直後だった。無論リリスの治癒があってこその勝利だった。立っているのもやっとの状態でリリスに治癒を施してもらいたかったがリリスが殺されているその状況に固まっていた。
「嘘でしょ!?リリス!」
「なんで?上級魔将がまだいるんだよ?」
同じく上級魔将を倒した、瑠璃とルビオもぼろぼろになりながらもその光景に目を疑った。それに上級魔将は戦闘開始直前に確認したところ四体しかいなかったはず、そうなれば身を隠していたとしか言いようがない。
「治癒師全員始末完了っと」
魔族が殺したのはリリスだけではなかった、あたりにいた治癒師、そしてその護衛をしていた者、バリスを含む負傷していた者達全員が殺されていた。
「特にこの女、厄介な治癒師だったからなこいつを始末できてよかったぜ」
リリスは優れた治癒師、魔族達にとっても厄介な存在だったのだ、実際リリスがいなければリーナとテルシア、ルビオと瑠璃、宏太と来綺は上級魔将相手に死んでいたかもしれないのだから。
「よくもリリスを!」
「おい、魔族覚悟しろよ」
「切り刻んでやる!」
瑠璃、宏太、来綺は激怒していた。仲間の一人でもあるリリスを殺されたのだ仲間を殺されるのは始めてではないがリュウガの時は生き返れたからまだよかった。だか神職者でないリリスに生き返る術はない、つまり二度と会えないのだ。
「君、よくもバリスをやってくれたね!」
「みんなを殺した罪償ってもらうわ!」
ルビオとリーナも激怒している。大勢の人達を殺されて、黙っている事など出来なかった。
「ならかかってこいよ、全員まとめてでいいからさ」
「貴様、この人数を相手に勝てると思っておるのか?」
「もちろんだ、まあお前はまだ動けるようだけど他は立っているのがやっとみたいじゃないか?」
「くっ!」
魔族の言うように今まともに動けるのはヨルゼただ一人、他の者は全員がぼろぼろで魔力も殆ど残ってない、リーナだけは負傷はそこまでないが魔力がないのは同じだ。
「お前は確かに実力者のようだが一人じゃオレに勝てないだろ?」
ヨルゼは言い返せなかった。実際にヨルゼは強い、だが上級魔将を相手に一人で勝つのは不可能だ。
「さあ、今すぐお前達もこいつらのとこに連れてってや…………がはっ!」
その瞬間、一瞬にして魔族が消し炭になった。空から放たれた火属性最上級魔法の炎帝によって。
魔法が放たれた先を見るとそこにはリュウガの姿があった。




