必死の防衛
同時刻、それぞれの場所で戦いが繰り広げられていた頃、秋達は人々の避難誘導を行なっていた。
「みなさん!こっちです!」
コロシアムの地下には一万人以上が入れる大型のシェルターが設けられており、コロシアムの観客達はそこに避難していた。観客の数は非常に多く後数百人の避難が完了できていなかった。
「先生、私達ももうシェルターに入りましょう」
「そうですよ」
「あなた達は先に入ってて、私は全員の避難を確認してから入るから」
佳穂と梨花は秋に提案するが、秋はまだ残ると言い返す。本当は怖いはずなのにリュウガに、生徒に頼まれた以上最後までやり遂げたかったのだ。
「じゃあ、俺も残るよ先生」
「え?」
「先生一人じゃ心配だし」
真希は先生と残ると言い出した。しかし真希だけではなく後に続き、龍弥、佳穂、梨花の全員が「残る」と言い出した。
近くにいた騎士団員エルミスは「はやくシェルターに避難しろ」と言ったが五人は頑なに拒否する。
数分後、後百人程で避難が完了すると思っていた矢先に下級魔族が現れる。
「な!」
「魔族!……なんて魔力なの!」
避難完了までもう少しというところで下級魔族という脅威の出現。下級魔族はトーナメントの出場者や観客の中にいた強者達が相手をしているはずだが、なぜか一体出現した。
「やるしかないか、手を貸してくれるか?」
秋達五人は戦う事を決意する、本当は怖いがエルミス一人では確実に殺されてしまう。そう察した五人は勇気を持って戦いに挑む。
「召喚!赤鬼!」
秋はAランクモンスターを召喚する。赤鬼の攻撃に合わせてエルミスは剣、龍弥は槍で接近戦闘を行なう。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
二人と赤鬼は何度も攻撃をするが殆ど避けられている何度か当たりはしていたが殆どダメージがないように見えた。
「みんな、いったん下がって!…… くらいなさい!”銃蒼炎弾”!」
梨花は前線にいる龍弥達を下がらせて魔弾を魔族に向かって放った。打ち放った魔弾からは蒼く燃え盛った炎が見えた。
「” 我が手に宿りし炎よ、蒼白くなりて敵を焼き払え……”蒼白炎”!」
梨花の攻撃に続くように真希は火属性中級魔法を放つ。展開された魔法陣から蒼白い炎が放たれ魔族に向かっていく。
「ぐっ!」
魔力障壁を張るが梨花の攻撃によりその障壁は破られすぐさま向かっていった真希の魔法が魔族に直撃し魔族はダメージを負った。
「よし!」
どうやら秋達でも一人では歯が立たないであろう下級魔族にも数人がかりで掛かれば戦えるようだ。
魔族との戦いが始まり数分が経った。エルミスと龍弥と秋の召喚獣赤鬼が近接戦闘、真希と梨花が遠距離で佳穂は飛んでくる魔法を防御、という戦い方を繰り返していた。
既に観客達は全員がシェルターに避難できていた。しかし五人はかなり消耗していた、それは魔族も同様だった。
「おのれ!雑魚どもが!」
魔族は苛立っていた、一人一人相手をすれば一瞬で倒せる相手なのに束になってかかってこられて誰一人殺せないでいたからだ。
「「くらえ!」」
エルミスと龍弥は同時に斬りかかる、だが下級魔族はそれをかろうじて避けて背後に周る。
「な!」
「やばい!」
「死ねぇぇぇぇ!」
魔族の拳がエルミスと龍弥の背中に直撃しようとしていた。こんな攻撃をまともに受ければ大ダメージは避けれない。最悪の場合、死に至る可能性もある。
真希と梨花は遠距離から攻撃をはかるが確実に間に合わない。絶対絶命の中、突如魔族の首がはねられた。
「間に合ったようだな」
「がっ!なん…だと!……」
突如として現れた男が魔族を一瞬のうちに倒した。
「あなたは!?」
「私の名はビヨンド・サルマキア」
「な!その名は!」
クレアの師匠で元火炎神でもあるビヨンドが絶対絶命のピンチを救った。エルミスも当然その名を知っていた。
「助けていただきありがとうございます」
「気にするでない、よく持ちこたえてくれた」
秋は礼を言い、それに続き他の者達も頭を下げた。
「でもあなたがなぜここに?十年以上も表に姿を現していなかったでしょう?」
「ああその通りだ、しかし弟子のクレアに頼まれた以上来ないわけにはいかんのでな」
エルミスは質問した、確かにビヨンドは神職者としての役目をクレアに託してから十五年、表舞台には姿を現していなかった。今になって出てきた訳を知りたかったようだ。
その後、秋達にも正体を明かすと全員驚いた表情をした。元神職者と聞けば動揺するのは当然だろう。
「それにただ魔族共を倒すためだけに出てきた訳ではない」
「別に用事が?」
「新たなる神職者、創造神七宮龍牙を一目見ておこうと思ってな、クレア以来十五年振りの神職者だからな」
ビヨンドは魔族の撃退の他にリュウガの力を一目見ようと足を運んできたようだ。昨日クレアから話しを聞いて興味が湧き、どれほどの男なのか確認しておきたかったようだ。
「七宮君は無事なんですか?」
「ん?ああ、先程ちらっと見てきたが魔族皇二体を相手に優勢だった、心配する事はないであろう」
「やっぱ七宮は俺達とは次元が違うな」
「ああ、ありゃ化け物だよ」
「うん、格の違いってやつね」
「そうね、心配する必要なんかないわね」
秋は七宮の無事を問うがその心配は無用なようだ。真希、龍弥、佳穂、梨花の四人もトーナメントでの戦いを見てその圧倒的な強さを知っている。
「お前達はもしかして異世界から来た者達か?」
「はい、そうです」
ビヨンドは五人の様子からリュウガと同郷の者である事を見抜いた。ビヨンドの人を見る目は飛び抜けている少し観察しただけで相手がどんな人間なのかおおよその事は見抜いてしまうのだ。
「私はまだ残っている魔族を叩かねばならん、お前達はシェルターの中に避難しているがよい」
ビヨンドの言葉に秋達は頷き、すぐさまシェルターへと避難する。
「さてと、状況はかなり有利と見ていいだろう、クレアのやつも魔剣神相手に優勢のようだしな」
ビヨンドは空を見上げてそう呟く。千里眼を使ってクレアの戦いをたびたび拝見していたようだ。そしてエゾットに加護を先に使用させた事も知っている。
ビヨンドは千里眼を使い状況を確認し一番劣勢なところに加勢に向かった。




