天才
「やりましたよ!師匠!」
「……驚いた、まさか一発で成功させるとは……」
師匠は唖然としていた、まさか初っ端から成功させるとは思ってもいなかったようだ。
「私は半年かかったというのにそれを初日で、成功させるとは」
師匠はそれから半年間、ありとあらゆる火の最上級魔法を伝授してくれた。炎帝は火の最上級魔法の中でも一番簡単な魔法だったらしく、一発で成功できたが他の魔法は最低でも習得に一週間はかかった、しかしそれでも異常な習得スピードである事は間違いないようだ。
「クレアよ、お前は間違いなく天才だ!私を遥かに超える程にな」
「そう言っていただけると光栄です」
「これから半年間は最上級魔法の底上げに専念するがよい」
それから私は半年間、モンスターを相手に火の最上級魔法の底上げに専念した。その過程でかなりレベルアップし、才職は火の魔術王から火の魔術帝へと昇格していた。
「半年間でよくぞここまでの成長を……ほんとに凄いぞクレア」
「恐縮です、それと師匠に見てもらいたい魔法があります」
「よし、なら打ってみろ」
クレアは魔力を込めて前方に魔法陣を展開した。
「″真紅の波動″!」
私は火属性最上級魔法を放った。放たれた炎は真っ赤に燃え上がり波のうねるような動きを見せ訓練用のゴーレムにぶつかり跡形もなく砕け散った。
「……クレアよ……この魔法は、まさかお前が考えたものか?」
「はい、私が独自に考えて生み出した魔法です」
この魔法は私が二ヶ月間考えて編み出した魔法だ。
「クレア、想像以上だよ……ほんとに」
「師匠を驚かせたくて頑張りました」
師匠は驚いてくれたようだった、自分で魔法を考えるなんて初めての事だったし何より既にある魔法と違って、新たに魔法を造るとなると構造からなにまで自分で考えなければならない。
最初はなかなか上手くいかずに諦めかけていたが何度も試行錯誤をして数日前にようやく完成したのだ。
「驚かせられるばかりだな、クレアには……よし少し速いが特級魔法に入るとしよう」
「はい!」
特級魔法は最上級魔法のさらに上に位置する魔法で大半の人は生涯をかけても習得するのが出来ないらしく使い手は世界でも数十人しかいないとされている。
「だが特級魔法はここでやっても大惨事になる、ダンジョンにて行なうとしよう」
「はい!」
それから私と師匠は最も近くにあったAランクダンジョンに足を運んだ。このダンジョンは三層構成となっていて現在いるのは一層、目の前にはAランクモンスターの赤鬼がいた。
「ちょうどいいこいつで試すとしよう」
師匠が魔力を込めるとモンスターの下に巨大な魔法陣が展開される。その大きさは半径百メートルにもなる。
「″超爆撃発″!」
次の瞬間、下から大爆発が起こりモンスターは粉微塵になっていた。爆発は一瞬でそれによる煙も起こっていなかったが、頑丈なダンジョンの天井には巨大な穴が空いていた。
「これが特級魔法だ、本気でやれば大体半径五百メートルはいけるがな」
「凄まじい魔法ですね」
初めて特級魔法をこの目にしたが最上級魔法とも比べ物にならない程の威力があった。しかし師匠はまだこれでも力を抑えている事から本気でやったならばもっと凄い事になっていたに違いない。
「また同じモンスターが出てきたな、拘束しといてやるからとりあえずやってみろ」
私は見様見真似でやってみるが魔法陣の展開すら出来なかった。やはり特級魔法を使用するのは難しいようだ。
「一度、詠唱をするのも手だぞ」
「詠唱ですか」
私はこれまで一度も詠唱を使った事がなかった。なぜなら詠唱を使うまでもなく無詠唱でこなせていたからだ。
「この魔法の詠唱は……炎よ爆ぜ、この世の全てを爆発させ焦がし尽くせ、だ」
「炎よ爆ぜ、この世の全てを爆発させ焦がし尽くせ」
詠唱を始めると赤鬼の下に半径五十メートルくらいの魔法陣が展開された。
「″超爆撃発″!」
しかし、魔法は発動されなかった。やはり最上級魔法以下とは比べ物にならない程の難しさだった。
「魔法陣を展開できただけでも大したものだ」
「いえ、まだまだです」
それから特級魔法の練習がてらダンジョンを攻略したが魔法陣を展開できはしたものの一度も発動には至らなかった。
「私は習得するのに詠唱ありで十二年、無詠唱に十四年の時を費やした、クレアならば五年もあれば習得できるだろう」
「はい!頑張ります」
それから私は特級魔法の特訓に専念した。師匠も忙しい日々が多くなってきて一人で特訓する時間も増えた。
最初の二ヶ月は全く進展がなく魔法発動に至らなかった。そして三ヶ月目に突入する頃にスカしただけではあるが進展があった。
それから特級魔法の練習に入り三年が経過し、私は十七歳になった。身長もだいぶ伸びてすっかり大人になっていた。
「炎よ爆ぜ、この世の全てを爆発させ焦がし尽くせ……″超爆撃発″!」
三年の時を経てついに特級魔法の発動に成功した。師匠の全力には遠く及ばないが凄まじい威力だった。
「まさか三年で習得してしまうとはな」
「まだ詠唱ありですが」
「クレアならば一年……いや半年もあれば無詠唱での発動も可能となるだろう」
師匠の言うように後半年、特訓を重ねて無詠唱での発動が出来るように精進したいところだ。
「無詠唱での発動もそうだが、クレアにはもう見せておこう神級魔法を」
「神級魔法!」
神級魔法は特級のさらに上、最上位に位置する最強の魔法、世界にも使える者は十人もいないと言われている伝説クラスの魔法だ。
それから私は師匠に連れられとある場所にある神級魔法練習の専用施設に連れてこられた。そして見せつけられたあの特級魔法を遥かに凌駕する威力を。
そしてそこから私はその施設に毎日のように足を運び神級魔法の練習に没頭した最初の一年は魔法陣する展開させられなかった。難易度は特級魔法を遥かに凌駕していた。ちなみにこの頃には特級魔法の無詠唱は既に取得していた。
神級魔法の練習から入って六年、私は二十三歳になりついに私は詠唱ありではあるが習得に成功した。師匠は三十年以上かかっていたようだったので私は相当速いと言えるだろう。
「ついにやり遂げたなクレア」
「ありがとうございます」
「今日で卒業だ」
「え?」
師匠からのその言葉に私は驚いた。卒業、それはつまり師匠から全ての教え終えたと言う事になる。
「私から教える事はない、後は自分で精進して強くなってくれ」
「分かりました、今までありがとうございました!」
「ああ、それとクレアに授けたいものがある」
「なんですか?」
師匠は私の背中に両手を添えて何かを始める。しばらくすると私の力が大幅に増したのを感じた。
「これは……いったい?」
「クレアに神職者としての力を譲った」
「え!どう言うことですか!」
師匠が言うには神職者の力は自分が認めたかつ、力を与えた神からの許しが出た場合にのみ譲渡できるらしい。
私に力を譲る事を師匠は何年も前から決めておりその許しが数日前にようやく出て、私に火炎神としての力を譲ったようだ。
「なぜ、私に?師匠の方が適任でしょう」
「いや、クレアは私を遥かに超える天才だ、後数年もすれば私を超える火炎神として人々の役に立ってくれるはずだ」
師匠は神職者としての力を失い、ステータスが大幅に低下していた。力を譲る事はすなわち自分の弱体化を意味するのだ。
「私の後継として火炎神として頑張ってくれるか?」
「……分かりました、全力でやらせていただきます!」
私は決心したこの力を使って人々を守るとそして、さらに強くなる事を。




