女戦士の戦い
数分前、別の場所にてエルフの剣王テルシア・バーネスと騎士団員剣帝のリーナは一体の上級魔将と対峙していた。
敵は今回襲撃にきた上級魔将四体の中で唯一の女魔族で剣を手に持っていた。紫色の髪で頭には二本の角が生えていた。つまり女剣士同士の戦いだ。
「テルシアさん、準備はいいかしら?」
「ええ、いつでもいいわ」
テルシアとリーナは今回が初対面でお互いの事も知らない、ただトーナメントでお互い戦っているところは見ていたので多少の戦闘スタイルを把握している程度だ。その状況下でしかも強敵を相手に手を組んで戦う事になった。
「いいわねあなた達、なかなか美しいわ」
「何を言っているの?」
魔族の戦闘前にする会話とは思えない発言にリーナは疑問で返した。
「私わね、美しい者が大好きなのそしてそれをぶち壊す事はもっと大好き、だからあなた達には壊れてもらうわ」
この魔族、相当いかれているようだ。
テルシアはエルフと言う事もあって綺麗な金髪で百七十センチメートルと長身、完璧なスタイル。リーナは緑髪のポニーテールに豊満な胸を持っておりテルシア同様、完璧なスタイル。どちらも実に美しいと言えるだろう。
そしてこの魔族はこの美しい二人を真正面からぶち壊すのが楽しみでしかたがない様子。異常者と呼ぶにふさわしかった。
「いくわよ!」
「最初から全力で!」
二人は魔族との距離を素早く詰めて剣で斬りかかる、しかし魔族は二人の同時攻撃を簡単に見抜き余裕の表情で交わしていく。
「”絶・火聖天刃″!」
テルシアは剣に火の魔法を込めて魔族に向けて放つ、その剣からは炎が燃え盛っておりまるで剣が巨大になったかのように見えていた。
「あまいわ!」
「なん……だと!」
魔族はテルシアの強烈な一撃を簡単に受け止めた。もちろんテルシアはこれで魔族に大きなダメージを負わせる事は出来ないと踏んでいた。しかし少しの傷をつけるくらいにはなると思っていた。それをこうも簡単に止められるとわ思ってもいなかった。
「この程度の攻撃で私に傷をつけられると思って?」
「結構自身あったんだけど……」
「今からあなたを存分に壊してあげる」
「レイブン流奥義……”覇龍混絶”」
「な……しまっ……!」
魔族がテルシアに集中している隙を突いてリーナは死角から奥義を繰り出した。リーナの剣からは龍が纏わりついているようにみえ複数の龍が纏わりつき魔族の腹に目掛けて直撃した。
「油断大敵よ」
「さすがはリーナ」
そう、リーナは敵に隙が出来る瞬間をずっと待っていた。なかなか隙が出来なかったがテルシアが隙を作ってくれた事により攻撃の瞬間ができ、奥義を繰り出す事が出来たのだ。
「ぶっは!……ふっ、素晴らしいわ、あなた達本当に最高ね、想像以上だわ、それでこれ壊し甲斐があるわ」
魔族は口から血を吐いた。しかし痛がっている様子はなかった。むしろ喜んでいた。
「……レイブン流……昇り風龍!」
リーナの剣から風の魔法が発動された。その魔法は風の龍となってその剣に纏わり付き、リーナはその剣を下から上へと振り魔族に攻撃した。
「おっと!危ないわね」
「水の精霊マールよその力を貸したまえ……乱水刀!」
すかさずテルシアは魔族に向かって水の精霊術を放つ、数十の水の刃が剣に纏わりつきその一撃を魔族に振り下ろす。
しかし魔族は簡単に避けてしまう。それでも諦めずに何度も魔族に斬りかかる、そしてリーナもテルシアの攻撃に合わせて魔族に何度も斬りかかる。
「なる程、少しでも再生速度を落とそうって魂胆ね」
「その通りよ」
魔族は例え腹に穴が開こうとも急所さえ無事なら特有の能力再生によって傷を塞ぐ事が可能だ。再生速度は上位の魔族程速くなっており上級魔将程になるとかなりの速度となってくる。
「「はぁぁぁぁ!」」
そして再び二人は連続攻撃を仕掛ける。二人の攻撃速度は徐々に上昇していきついに魔族にかすり傷程度ではあるが当たるようになってきた。
「今よ!はぁぁぁぁぁ!……………な!」
テルシアは隙を見つけて魔族の急所に一撃を入れようとした。しかしそれは本体ではなく分身体でありその分身体は消え去った。
「こっちが本体よ!」
「……がはっ!」
「テルシアさん!」
魔族の本体がテルシアの背後に周り、強烈な一撃を放った。その一撃でテルシアは大きく前方に吹き飛ばされ血を吐いた。
「やはり美しい者を壊す程楽しい事はないわね」
「おのれ!よくも!」
「隙だらけよ!」
「がっ!」
今度は隙をつかれたリーナが魔族の一撃を受け吹き飛ばされる。テルシア同様かなりのダメージを受け血を吐いた。
「楽しくなってきたわ、さあ壊してあげ……」
「……これは」
「体の傷が癒えていく!」
ボロボロになっていたテルシアとリーナの体はみるみる癒えていった。これは後方でリリスが遠距離からの治癒を行なったからだ。
「助かったわ」
「さすがは創造神の仲間ね」
「まあいいわ、それなら何度でも壊してあげるまで」
回復した二人は立ち上がり再び魔族に迫る。だが本気を出し始めた魔族には何をやっても攻撃が当たらなかった。
「やるしかないわね」
リーナは剣を構えて集中を始めた。そしてその剣は光輝き出した。
「レイブン流奥義……”覇龍混絶•乱!」
そう叫ぶとリーナは力を振り絞って攻撃を始めた。リーナは動かずその場に立ったまま、剣には龍が複数纏わりついていた。
その複数の龍は剣先からそのまま魔族に向かって飛びついた。この技はトーナメントにてリュウガとの戦いに使用した者と同じものだ。
「ふん、こんなもの避けるのは簡単よ」
魔族はその攻撃を軽く避けた。だがまだ攻撃は終わっていない、この攻撃は相手に当たるまで消えないのだ。
「こんな龍、今すぐ消し飛ばしてあげる……″獄炎″!」
魔族は龍に向けて火属性上級魔法を放った。業火が龍に直撃した。しかしその複数の龍は多方に別れて魔族に襲いかかる。
「な!」
魔族は避ける間もなくその攻撃をもろにくらう。周りには大量の爆風が舞う。
「やったの?」
煙が徐々に消えて魔族が姿を現す。多少の血は出てるもの平然と立っている様子だった。
「これでもだめだというの?」
「ふぅ……今の攻撃、硬化が間に合っていなければ大ダメージ物だったわね」
魔族は攻撃が直撃するその一瞬前に自身の身体を硬化させダメージを抑えたのだ。
「はぁはぁ……そんな…」
リーナは膝から崩れ落ちた。今の攻撃で力を使い果たして動けなくなっていた。もはや攻撃手段はないリーナは絶望していた。
「らぁぁぁぁぁぁ!」
「ふん!甘いわね!」
「ごはっ!」
テルシアは魔族になんとか攻撃を仕掛けるが腹に強烈なパンチを受けその場に倒れてしまう。
「十分楽しんだしそろそろ終わりにしてあげるわ」
魔族は手を前にし魔力を込める。次の一撃で終わらせるようだ。しかし二人はもう動くことすらままならなく対抗する気もなかった。
「終わりね、″炎煌龍″」
二人に炎の龍が襲いかかる。そして二人は目を閉じて諦めようとした瞬間……
「レイブン流……″一撃跳返し″!」
突如として一人の男が現れ、魔族の魔法を跳ね返した。魔族はその跳ね返ってきた自身の魔法を咄嗟に避ける。
男は身長百八十センチメートル前後で筋肉質な体格、見た目は四十歳前後といったところで人間族だった。
「あなたいったい何者?」
次の瞬間、二人は目を開けた。そしてリーナは驚いた自分の目の前に立っている男に。
「し……師匠!」
その男はリーナの師匠だった。




