魔族襲来
「ふぅ、流石に疲れたわね」
オレを倒した直後クレアは神装を解き、すぐさま自身の回復を始めた。
「……決着!エキシビションマッチを制したのは火炎神のクレアファーレンローズさんだ!」
静まり返っていた会場は歓声に沸いた。
「ふぅ、やっぱ二回目でも死ぬのは痛いな」
「おかえりリュウガ」
歓声が沸いた直後、オレの身体は蘇生が完了し生き返った。加護のおかげですっかり全身の傷は治り、残りゼロだった魔力も全開していた。
(先生、聞こえるか?)
(!ええ、聞こえてるわ)
(おそらくもう魔族が来る頼んだ)
(任せておいて)
そろそろ来るであろう魔族の襲来に備えてオレは秋に避難誘導の指示を送った。教師という立場である先生ならしっかりやってくれるだろう。
「クレアさんの方は全開までどのくらいですか?」
「後三分ってとこかしら」
「それまでに魔族がこなければ……!」
直後、コロシアム上空に巨大な黒い魔法陣が展開された。そしてその魔法陣から次々と魔族が姿を現した。
「ちっ!もう現れやがったか!」
会場は悲鳴で溢れていた。前もって準備していたおかげや秋達などの助けもあり避難の方はなんとかなっており被害は相当抑える事ができそうだ。
現れた魔族は見たところ下級魔族23体、中級魔族13体、上級魔族7体、上級魔将4体、魔族皇2体に加えエゾットの計五十体だった。
「最初の予定より襲撃人数が増えて何よりだったな」
「ええエゾット様、これだけ入れば確実に目的は達成出来ます」
「ふん、火炎神と創造神以外にも中々の強者が数名いるようだな」
「ええそのようです、ですが上級魔族以上にはかないますまい」
エゾットは辺りを見回し一瞬にしてこちらの戦略を把握したようだ。そしてそれは隣にいる魔族皇も同じようだ。
「リュウガ!ついに来たな」
「なかなかの数だな」
宏太、来綺は観客席の方から降りてきてオレとクレアの方に集まってきた。瑠璃とリリスは後方支援をするため後ろの方で待機している。
「あれが魔族か、始めてみたよ」
「クレア、私もやるわよ」
「やるしかないよな」
「私も騎士団員として全力で戦う」
獣人の拳帝ルビオ、エルフの剣王テルシア、獣人の拳王バリス、騎士団員のリーナを始めてとするこの大会の出場者数十人、そしてクレアが呼んだ強者計20人も集まってきた。
「ふん、火炎神よ貴様はオレの手で殺してやる!」
「やれるものならやってみなさい!返り討ちにしてあげる!」
「魔族の軍勢よ、かかれ!」
「いくわよ!」
次の瞬間、両軍共に敵に向かっていく、ついに魔族との集団戦闘が始まった。
開始早々、オレは二体の魔族に行手を阻まれた。
「どうも創造神、私魔族皇のマグナと申します」
「オレはゼルだ」
「ふん、随分丁寧な挨拶だな」
二体の魔族皇は名乗った。どうやら上位の魔族には名があるようだ。
魔族皇はランクでいえば最上位に位置するS級の終焉級に分類されるほどの化け物として認知されている。S級ランクの冒険者を最低でも15人集めないと倒せないと言われている。
「お前ら二人でオレを相手する気か?」
「ええ、それがエゾット様の命令ですから」
「てめぇをぶっ殺す事がオレらの任務だからな」
「ふん、そうか上等だ!かかってきやがれ!」
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一方、宏太と来綺は一体の上級魔将と対峙していた。
「想定はしていたがオレ達二人でいけるのか?宏太」「やるしかないだろ」
目の前にいる強敵を前に二人は戦闘態勢に入った。上級魔将、ランクで表すとSランクの絶望級に位置する。
「貴様らがオレの相手をするのか?」
「ああ、その通りだ」
魔族の質問に宏太は答える。これほどの強敵を前にして二人は内心震えていた。しかしここで逃げてしまえば大勢が犠牲になる可能性がある。そして二人は覚悟を決める。
「確かに貴様らはここにいる奴らの中では上位に入る強さかもしれん、だがオレを倒す事は出来ないステータスに差があるからな」
実際に二人とこの上級魔将には大きな差がある。その事からこの魔族は二人を舐めていた。しかしそれでいいのだ、相手が舐めてくれていれば隙が出来るかもしれない。
「来い!聖剣アロンダイト」
来綺は真っ赤に染まった聖剣を手に取った。
「オレが前に出る!宏太は後ろから魔法で援護頼むぞ!」
「おう、任せろ!」
次の瞬間、来綺は魔族に向かっていき、聖剣を振りかざした。並の相手なら避ける事は難しいスピードだが魔族はそれを簡単に避けた。
「遅い!」
「がっ!」
避けてすぐに魔族は来綺の腹に強烈なキックを入れ、来綺は後方に数メートル吹き飛んだ。その蹴りにより微量の血を吐いたが来綺はすぐさま立ち上がった。
「くらえ!」
「また正面にとはな、馬鹿だな」
魔族に向かって再び正面から攻撃を仕掛ける来綺、これには魔族も呆れてまたカウンターをくらわせようと考えていた。しかし次の瞬間、来綺は上空に軽く飛んだ。
「ふん、上から仕掛けようが同じ事」
「″獄炎″!」
「なに!」
来綺が飛ぶと同時に宏太は火属性の上級魔法を放った。隙を突かれた魔族に激しい業火が直撃する。
「うし、直撃だ」
「まあでも」
「ふん、この程度なのか」
「ちっ!やはり聞いてない」
魔族は身体全体どこにも傷を負ってなく完全な無傷だった。しかしこれは二人とも予想していた事だ。今の宏太なら上級魔族クラスならダメージを負わす事は可能だっただろうが上級魔将にはこの程度で傷を負わす事は不可能だった。
「隙を突いて攻撃を当ててもダメージが無ければ意味がないんだよ」
「ふん、まだまだ!」
来綺は聖剣を使った近接戦闘で、宏太は遠距離による魔法攻撃をして二人がかりでなんとか戦えていた。
「はぁ……はぁ」
「ふぅ……はぁ」
数分戦って二人はかなり消耗しており受けた攻撃により血が出ていて、来綺に関しては指の骨が折れていた。相手との実力が大きくあり一手でも間違えれば致命傷になりかねない戦い、一瞬でも気が抜けないのだ。
「随分息を切らしているな」
「……はぁ……うるせぇな、勝負はこっからだ」
「ここで諦めるわけにはいかないんでな」
「そんなボロボロの身体で何が……あ?」
直後、二人の傷が治り始め数秒でボロボロだった身体は綺麗になり折れていた骨も元通りになり体力も少し戻った。
「治癒師か、めんどくせぇ事しやがるしそれにかなりの腕だな」
「リリスか、助かった」
「これでまだ戦える」
後方を見るとリリスや他の治癒師達が十人程、治癒を施していた。リリス以外の治癒師は直接触って直していたがリリスだけは遠距離からの治癒を行なっており魔族もその腕を一瞬で見破った。
「しかしこのままでは勝てない、ならこっからは二刀流でいく!」
「二刀流だと?来綺いつのまに?」
「実践で使うのは始めてだがやるしかない」
「来い!聖剣ヴォーグル」
そして来綺は右手に聖剣アロンダイト、左手に聖剣ヴォーグルを持ち二刀流という戦闘スタイルを取った。




