冒険者ギルド
四人はルーベルクに入るために高さ五十メートルはありそうな巨大な門の前まで来ていた。
「おい、なんか身分証がいるみたいだぞ」
「私達そんなの持って無いわよ」
どうやら門を通過するには身分証が必要ならしい。しかしオレ達は持ち合わせてはいない。
「俺達は今、身分証を持ち合わせて無くてな。何とか通して貰う事は出来ないか?」
「生憎と身分証を持っていない者は通すことの出来ない決まりなので」
オレは何とか通して貰う事が出来ないか門番に交渉を試みるがやはり通すことは出来ないとのことだった。
「そこを何とかお願い出来ないか?頼む」
「身分証を提示しなくても通すことの出来るのは王族の方か神職者の方だけなので」
「何だそうだったのか。そうなら早く言ってくれよ。ほらこれでいいだろ」
どうやら神職の者なら身分証が無くとも入る事が出来るそうだ。オレはステータスを表示し門番に見せた。
「例えステータス欄を見せてもここを通過させることは……っ!!し、失礼致しました。まさか神職者の方だったとは、どうぞお入りください。お仲間の皆様も」
「……ああ、ありがとう。それじゃあ通させて貰うよ。お前らもいくぞ」
どうやら神職者だと仲間も一緒に入らせて貰えるようだ。しかし門番にステータス欄を見せオレが神職者だと分かった途端急に態度が変わった。それに周りも少しざわついていたようだ。
オレは深く考えずに先へ進み門を潜りルーベルクへと入って行った。
街へ入るとそこは王都とは一風変わった街並みが広がっていた。見た目はドイツのローテンブルクに似ていた。
木造りの建物と石畳の道、凝った看板が程よく並んでいる。街の中央には高さ三十メートル近くはありそうな時計台が見える。
多くの人々が住んでいるようで街はかなり栄えているようだ。中には亜人族もいるようでこの街は様々な種族を受け入れているようだ。
「いい街ね」
「そうだな。ここなら拠点にしても良さそうだな」
「それじゃあまずは冒険者ギルドを探すか」
オレ達は冒険者ギルドを探して歩き始めた。石畳の道を歩いていると飲食店や宿、鍛冶屋、武器屋など冒険者をやる上で世話になりそうな店が次々と見えた。
しばらく歩くと右手に目的の場所が見えた。看板には大きく冒険者ギルドと書かれていた。
「見つかったな。ここが冒険者ギルドか」
「何かアニメでよく見るやつと似てるなリュウガ」
「ああ来綺、ようやく冒険者になれるな」
「さあ、行くわよ」
オレ達は冒険者ギルドの中へと入って行った。入るとそこには多くの冒険者がいた。中には如何にも屈強な男達も見受けられた。
「何だ?ここはガキの来るとこじゃねぇぞ」
「おいおい、入るとこ間違えたんじゃねぇか坊主」
リュウガ達が中に入るなり二人の男が絡んで来た。二人ともかなり筋肉質だった。しかしオレにして言わせて見ればただの筋肉だけの雑魚。
オレはこの二人が突っかかってきた瞬間に鑑定を行っていた。二人ともレベルは四人よりも少し高いが、ステータスに関しては話しにならなかった。
「前どけよおっさん、邪魔だ」
「っ!おい!言葉遣いがなっちゃ無いな坊主」
「年上にはちゃんと敬語を使いな」
一人の男がオレに拳を振り下ろした。しかしオレはその拳を軽々と避け、男の腹に蹴りを一発入れた。
「うっ!!」
男は膝から崩れて地面に倒れた。
「あんたもやるかい?」
「……悪かった。もう絡まないから見逃してくれ」
「まあいいだろう。それとこいつをさっさと連れて行け邪魔だ」
「あ、ああ」
もう一人の男はオレ勝てないと判断したのかすぐさま倒れた仲間を連れてギルドを出て行った。
「リュウガお前容赦ねぇな。今の蹴り結構力入れただろ?」
「ああ、気絶するくらい強く蹴らないと面倒になりそうだったからな」
オレは先程の蹴り力半分程出していた。いくら半分の力と言えどあの男には耐えられない痛みが走ったはずだ。
ふと周りを見渡すと先程よりも人集りが出来ていて、歓声が聞こえていた。
面倒ごとが終わりオレ達は冒険者登録をする為に受付の前に来た。
「こんにちは。今日はどう言ったご用件でしょうか」
「冒険者登録をしたいんだが」
「冒険者登録ですね。四人全員でよろしかったですか?」
「ああ」
受付に居たのは二十歳前後の女性だった。ショートヘアの茶髪に容姿は美しく整った顔をしていた。
「ではまず冒険者について説明させていただきます」
女性はそう言うと説明を始めた。
「まず仕事内容ですがギルドの依頼を受け、その依頼をこなしてそれを報告し報酬を貰うまでが一連の流れとなっています。依頼は全てギルド二階に貼ってあるのでそこからやりたい依頼を見つけてください」
ちなみに、もし依頼をこなせ無ければ報酬を貰えず、三日間は依頼を受けられなくなっている。中には依頼をこなせずに冒険者で居続けられなくなった者もいるらしい。
「こなせる依頼は冒険者のランクごとに変わって来ます。単独でなら自分のランク以下の依頼しか受けることは出来ません。しかしパーティで行う場合は一つ上のランクの依頼も受けることができます」
冒険者のランクは下からF,E,D,C,B,A,Sの七段階となっている。AランクとSランクは極少数しかいなく、このギルドにはSランクの冒険者はゼロ、Aランクの冒険者は三人だけだと言う。
その他にモンスターにもそれぞれランクがある。冒険者と同じく七段階となっているがSランクには下から災害級、絶望級、終焉級の三段階がある。
「また、依頼内容は様々でモンスターの討伐、素材集め、薬草採取やダンジョンの探索などもあります」
この世界にはどうやらダンジョンがあるらしい。しかし冒険者のランクによって入れるダンジョンも限られているようだ。
「最初は基本一番下のランクのFランクからスタートして貰う事になります。ただ例外が一つだけあって神職の方とそのパーティメンバーであればEランクスタートとなります」
ここでも神職者は優遇されるようだ。神職というのはそれだけ価値のあるものなのだろう。
「説明は以上となります。分からない所はありませんでしたか?」
「ああ、俺は大丈夫だ。お前らは大丈夫か?」
「問題ない」
「私も大丈夫だわ」
「俺もだ」
四人ともこれまでの説明は理解出来たようだ。
「では、登録を始めたいのでお一人ずつステータスの表示をお願いします」
「じゃあ私からやります」
最初に登録を始めるのは瑠璃だ。瑠璃は受付の女性に言われた通りにステータスを表示させた。ちなみに今の瑠璃のステータスは……
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赤羽瑠璃 17歳 女 レベル 16
才職 魔弓士
攻撃力 420
体力 395
俊敏性 330
魔力 435
魔法耐性 350
物理耐性 360
能力:弓術・魔術・火風属性適性・水土属性耐性・弓作成(中)・能力向上(中)・視力強化・魔力感知・気配感知・言語理解
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瑠璃のステータスは以前と比べて格段に上がっている。能力も新たに二つ程獲得していた。
「才職は上級職ですか、凄いですね。ステータスも平均を大幅に上回っていますね。……えっとこの名前はもしかして召喚者の方ですか?」
「はい、それと後ろの三人も全員召喚者です」
「……そうですか。それでこのステータスですか」
どうやら瑠璃の名前を見て召喚者だということが分かったようだ。おそらくこの世界の名前は全て前に名、後に性となっているのだろう。
「じゃあ次の方お願いします」
女性がそう言うと今度は宏太が前に出てステータスを表示させた。そんな宏太の現在のステータスは……
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篠原宏太 17歳 男 レベル 16
才職 トリプル魔術師(火・水・風)
攻撃力 430
体力 410
俊敏性 345
魔力 450
魔法耐性 440
物理耐性 380
能力:魔術・火風水属性適性・氷属性適性・光属性耐性・能力向上(中)・攻撃力強化・魔力感知・気配感知・言語理解
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宏太もここに来るまでの間にかなり強くなっていた。ちなみに氷属性の魔法も使えるようになっていた。
女性は瑠璃に続いて宏太も上級職であった事から驚きの表情を隠せないでいた。それもそのはず上級職は戦闘職百人の内一人の割合なのだから。
「では次の方どうぞ」
次は来綺の番だ。来綺は前に出て女性にステータスを見せた。
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遠山来綺 17歳 男 レベル 16
才職 聖剣士
攻撃力 460
体力 420
俊敏性 425
魔力 500
魔法耐性 400
物理耐性 400
能力:剣術・光属性適性・闇属性耐性・聖剣作成(弱)・剣作成・気配感知・魔力感知・透過・言語理解
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来綺のステータスも瑠璃や宏太と同様、大幅に上がっていた。魔力に関しては500に届いていた。
「魔弓士、トリプル魔術師と来て今度は聖剣士ですか。ステータスも平均を大幅に超えていますし三人共凄いですね。それでは最後の方お願いします」
「ああ」
オレはステータスを表示して女性に見せた。オレ現在のステータスは……
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七宮龍牙 17歳 男 レベル 21
才職 創造神(神職)
攻撃力 1850
体力 1790
俊敏性 1900
魔力 2000
魔法耐性 1870
物理耐性 1840
能力:魔法創造・武具創造・能力創造・物体創造・毒無効・全属性耐性・全属性適性・魔術・剣術・弓術・透明・透過・気配感知・魔力感知・鑑定・攻撃力強化・創造力向上・高速成長・自動治癒・言語理解・創造神の加護
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オレのステータスの向上を見ると三人の上がり具合が可愛く見えてしまう。全てのステータスが大幅に上がっていて魔力は2000に到達していた。
そのステータスを見た途端、女性の表情は固まってしまった。