神装
「くそがっ!」
オレは懸命に魔法を放っていた。だが、クレアはまだ本気を出していなかった。さらに魔法の出力を上げてオレの魔法を押してきた。
オレは魔法が自身に当たる寸前で避けたが上手く避けきれず肩にダメージが入ってしまった。
「はぁ……はぁ」
オレはかなり消耗していたがクレアには疲労無効の能力があるようで全く疲れた様子を見せていなかった。
「さあ、そろそろあなたの最高の魔法を見せてちょうだい」
「はぁ……いいでしょう、オレの本気見せてあげます」
オレは魔力を込め始めた。今から使う魔法は今までの魔法とは比べ物にはならない程の魔力を使う事となる。
「今度は私から行かせてもらうわ……”炎帝”」
クレアは火属性最上級魔法を放った。放たれた魔法はオレもよく使うが威力そのものが全く違っていた。見るからにオレの倍の威力はありそうだ。
「全て溶けてなくなれ!”侵水溶滅”」
オレは水属性特級魔法をクレアの魔法に目掛けて放った。放たれた魔法はクレアの魔法を飲み込み侵食していこうとしていた。それは徐々にクレアの魔法を溶かしていった。
「どうですか!オレの魔法は!」
「確かに凄いわね、私の魔法が徐々に溶かされ始めている。でもこれならどうかしら!」
クレアはさらに魔法の威力を上げてきた。それはオレの魔法の効果をものともしない程になっていた。
「ちっ!やはりこうなるのか!」
オレの実力はまだまだだった。クレアとオレとの間には思っている以上の差があったようだった。勝てないことなど最初から分かっていたがそれでもここまで差があるとは思っていなかった。
だがオレはまだ諦めていなかった。せめて少しでもクレアにダメージを与えられるぐらいの事はしてやると。
「さあ、これで終わりよ!」
クレアが魔力をさらに上げ留めにかかった。その瞬間オレは魔法を解き、クレアの背後に転移し上下に巨大な魔法陣を展開させた。
「はぁぁぁ!くらえ!″原子爆発″」
「な!」
オレはそのまま全力で火属性特級魔法を放った。その魔法は巨大な爆発を巻き起こし当たりには爆風が巻き起こった。
この魔法はオレが無限タルタロスの第百フロアにて習得した魔法。オレが持つ魔法の中で最も爆発力が高い魔法だ。
「はぁ、はぁ」
オレは今の一撃でかなりの魔力を消耗した。
爆風によって煙が巻き上がり周りの状況が全く分からない程になっていたが徐々に見えるようになってきた。
「今のはひやっとしたわよ、少しダメージを受けてしまったわ」
「やはりそうなりますよね」
クレアは右腕を少し負傷しただけで他は全く無傷だった。オレが魔法を放ったあの一瞬でクレアは自分の身体の周りに魔力障壁を展開していた。右腕が負傷しているのは展開が少し遅れたのだろう。
「なんて戦いだよ」
「次元が違う」
「強さの格が違うわ」
「圧倒的すぎる」
この戦いを見ていた宏太、来綺、瑠璃、リリスはひどく驚いていた。自分達の遥か格上の相手同士の戦いを見て自分達などまだまだだと改めて思い知らされていた。しかしこう思っていたのは何もこの四人だけではない。
「これが神職者の力なの!」
「は、化け物だね」
「勝てないわけだわ」
「異次元すぎんだろ」
テルシアやルビオ、リーナ、バリス、この大会でも上位に入ってくる実力者達、その他会場にいる全員が度肝を抜いていた。
「本当に驚いた。まさか一週間程度でここまで成長しているとは思わなかった、成長速度でいえばこの世界随一と言っても過言じゃないわね」
「そう言っていただけると光栄ですよ」
「その才能に応えて私も全力の一部を見せてあげる」
「え?」
オレの成長速度にクレアは賞賛して本気の一部を見せると言った。その言葉にオレは喜びつつも少し恐怖もあった。
クレアの本気、それは今のオレでは絶対勝てない境地ということ。その事に少し恐怖を感じつつも同時にそれはいずれオレが目指すべきとこでもあるので喜びもあった。
「我、火炎神フレイ様より力を与えられし神職者なり」
クレアがそう唱え始めると身体が光始めた。なにかの儀式なのか、オレはそれを間近に見ていた。
「その力を持って善の神職者として人々を導かん!神装第一形態展開!」
その瞬間、クレアの身体が輝き赤の衣を纏っていた。その姿はまるで本物の神のようだった。
「なっ!これは!」
「驚いたでしょう、これは神職者だけに許された力よ」
神職者特有の能力神装、確かにクレアのステータス欄には神装という能力があった。先程見た時はそれがなんなのか分からなかった。だが今、クレアのこの姿を見てそして本人から聞いて確信した。
(なんだ、この圧倒されるような馬鹿げた力は、体の震えが止まらないこんな事は初めてだ)
オレは全身震えていた。オレはこれまで何度か自分の実力以上の強敵と戦ってきたが体が震えた事など一度もなかった。それどころか喜んで戦っていた。だが今のこの瞬間オレは初めて恐怖を覚えた。
「神装を使った者はステータスが大幅に上昇して信じられない程の力が出る」
「確かに今まで以上の力を感じますよ」
これが神職者に使えるのならばオレにも使えるという事、今はまだ出来ないだろうがいずれ使えるようになる可能性がある事に恐怖と同時に喜びも感じていた。
「さあ、始めましょうか」
「いきます」
オレは聖剣デュランダルを手に持ち全力のスピードでクレアに向かっていった。しかしクレアの姿は既にそこにはなかった。
(どこだ?気配も全く感じない)
クレアの気配を感じようとしても全く感じる事が出来なかった。しかし次の瞬間……
「がっ!」
クレアが背後から姿を現しオレの足に剣による攻撃を仕掛けてきた。その攻撃により足に大きなダメージを受けてしまい血が流れていた。
「はぁ……はぁ…」
オレは足に傷を負ったが自動治癒によりその傷は消え始めていた。しかし傷の治りが遅い、この戦いでオレは何度も傷を負っていたがすぐに自動治癒が発動し治っていた。しかし今クレアに受けた攻撃による傷はなぜか治るのがいつもより数十秒遅くなっていた。
(なんでだ?自動治癒は格上相手による攻撃でも数秒で治るはずその証拠に先程まではすぐ治っていた。それなのになぜ今の攻撃は数十秒も遅くなる……まさか!神装による効果か!)
(気付いたようね)
俺の読みは正しかった、クレアの展開させた神装には自動治癒の効果を大幅に低下させる効果も含まれていた。
「神装、厄介ですね」
「そう、これが神装よ単にステータスが上がるだけじゃない多くの能力が得られるのよ」
多くの能力、つまり治癒の効果低下以外にもあるという事、おそらくその能力の一つとしてステータスの完全隠蔽も含まれている。その証拠としてオレの神鑑定を持ってしても今のクレアのステータスを見る事は出来ないでいた。
神鑑定はどれだけ相手とステータス値が離れていても確実に見る事のできる能力、これを持ってしてステータスが見えないという事は確実に神装が原因だ。
「さぁ、まだまだやれるわね?」
「もちろんですよ、いきます!創造神流、肆の型”非緋色鐘″!」




