真紅の矢
第三試合は第二試合の接戦とは違いあっけなく終わった。勝者はもちろん宏太で魔法一発で勝利が決まった。この結果はオレだけでなく観客もほとんどが予想していた結果だ。
正直、他の七名と違い秋は本戦出場者としての実力が足りていない。ただ単に予選の組み合わせに救われただけと言える。秋よりも強い者は予選にも数名見受けられたその者達と当たっていたら間違いなく予選敗退だったのだ。
「ここは当然の結果だな」
「うん」
「次は瑠璃の試合だな」
瑠璃の相手は獣人であるバリス、オレは予選決勝で一度戦っているがなかなかに見どころのある獣人だった。
両者ともにステージの上に上がって準備が整っていた。
「それでは第四試合、赤羽瑠璃対バリス、始め!」
開始と同時にバリスは獣化を使用した。獣化は体力を大幅に消耗する技だ。それを開始早々に使ってくるという事は一気に決める気なのだろう。
対する瑠璃は弓を構えて、攻撃体勢に入っていた。その矢には火の魔法が付与されていた。
「いくぞ!」
バリスは物凄い勢いで瑠璃に襲いかかる。それを防ごうと魔力のこもった矢を放つがバリスはそれを後も簡単に弾いた。
「残念、これで終わりだ!」
バリスは瑠璃の急所にめがけておもきり拳を放った。当たれば確実に大ダメージとなりそうなれば勝つ事がほぼ不可能になってしまう。
拳が瑠璃に当たった瞬間、その身体は消えてしまった。
「何!どこに消え……がぁっ!」
その次の瞬間、バリスの背後に何もない所から瑠璃が現れそのまま強烈な一撃、蛇炎翔矢射をくらわせた。
(瑠璃の奴、あんな事もできるようになったか)
オレは瑠璃が何をしたか一目散に分かった。まずバリスが殴った瑠璃は分身だ、それもかなり精度が高く大抵の者には触れるまで気づかない程のものだ。
そして次になぜ瑠璃が何もない所から現れたかだがこれは気配を消して透明になっていたからだろう。
「それにしても考えたな」
「どう言う事だリュウガ?」
「ああ来綺、この勝負瑠璃は完全に不利なんだよ」
瑠璃は遠距離型、バリスは近距離型だ。広大なフィールドならば瑠璃の方が有利になるがこの小さなステージ上ではどう考えてもバリスが有利になってしまう。
それを言うならこれまでの試合もそうだったがこれまでの試合は全て瑠璃にとって格下だったから上手く立ち回れてこれただけで実力が上の相手や拮抗してる相手では圧倒的に不利なのだ。
「不利な状況だから瑠璃は頭を使ったんだ」
「なるほどな」
「来綺、お前も同じ状況に陥ったら身体だけではなく頭を使う事を覚えておけ」
来綺は頭を使うのが苦手だ。テストでも毎回赤点になるかどうかのギリギリでそんな来綺に頭を使えと言ってもすぐにどうこうなる話しではない。だがその苦手な部分を克服できればもっと高みを目指せるだろう。
「くそ!全く分からなかった、いつ分身を?」
「簡単よ、私は透明になると同時に分身を作ったのよ」
「同時だと!」
「そうよ」
瑠璃のやった事はかなりの高等技術だ。同時と言う事は能力を二つ同時に使用したと言う事だ。それを出来るのは世界にも数える程しかいない。
「あなたは強い、普通に戦えば私の負けよ」
「何だ、降参でもするのか?」
「そんな事しないわ、だから奥の手を使わせてもらう」
「奥の手?」
次の瞬間、瑠璃は一人から二人に二人から四人に四人から八人に分身した。
「何だと!」
分身は一体でも維持するのが大変だというのにそれを七体も出してしまうとは瑠璃の成長は予想の遥か上をいっていた。
バリスは困惑していた、おそらくどれが本物か分からないのだろう。それもそのはず瑠璃は本体と分身全部の魔力量を均等にしているのだ。オレはどれが本体か分かるがこれを見破れるものはそういないだろう。
「じゃあいくわよ」
「くそ!本体はどいつだ!」
瑠璃と七体の分身体はそれぞれバリスに向かって弓を構えた。
「これで終わりよ」
瑠璃は矢に魔力を込め始めた。その矢に込められた魔力、8本分を全てたすと蛇炎翔矢射をはるかに凌ぐ程の魔力となっている。
「こうなったら一体ずつ」
「もう遅いわ、”真紅の矢”」
バリスが行動しようとした次の瞬間、瑠璃は矢を放った八本の矢はバリスに向かって一直線に向かっていった。
「確かに凄まじいが一本一本は大した事ないな、これならまだ………何だと!」
バリスは8等分された魔力なら一本一本対処できると考えたのだろう。だがそれはもはや叶わなくなってしまった。
瑠璃は分身を解除し8等分されていた魔力を一本の矢に戻した。その威力は凄まじいもので最上級並の威力といっていいだろう。
「終わりよ」
「かあっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
瑠璃の渾身の一撃はバリスを襲い、地に倒れてそのまま気絶した。
「勝負あり!勝者赤羽瑠璃!」
これにて第一回戦が全て終わりベスト4が出揃った。準決勝はオレ対リーナ、そして宏太対瑠璃となった。
「これより1時間の休憩とさせてもらいます、その後に準決勝を行ないます」
休憩となりオレ達五人は昼食を食べていた。
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一方その頃、とある場所では
「状況は?」
「魔族総勢四十体の出撃準備は整いました、エゾット様」
「そうか」
話していたのは暗黒軍四天王の一人であるエゾットと魔族皇と思われる魔族だった。
この魔族達は総合トーナメントの会場を襲おうと計画を立てていたのだ。しかし本当の狙いは火炎神であるクレアと創造神であるリュウガの抹殺である。
「内訳は?」
「はい、下級魔族20体、中級魔族11体、上級魔族4体、上級魔将3体、魔族皇が私を含め2体です」
これにエゾットが加われば一国を滅ぼせる程の戦力となる。正直過剰戦力だろうがエゾットはここで確実に火炎神と創造神を殺るつもりだ。
「よくやった」
「ありがとうございます」
「それで、出発時間はお変わりなく?」
「ああそうしてくれ」
「かしこまりました」
出撃時間は決まっているようだ。エゾットは基本は指示を出すだけで出撃準備の方は他の魔族達に任せているようだ。
「神職者二人の相手だが、火炎神は俺がやるから創造神はお前ともう1人の魔族皇が相手をしろ」
「了解です」
エゾットはクレアの相手で手が離せなくなる事からリュウガの相手は魔族皇が二人がかりで相手をすることになる。
「それでは頼んだぞ」
「かしこまりました」
そういって一人の魔族はこの場を去っていった。
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現在、オレは昼食を食べ終わり控え室にいた。他のみんなは観客席の方へと戻っていった。
(さてと、そろそろか)
オレがそう考えていると声が聞こえてきた。
「それでは時間になったので始めましょう!両選手は入場してください!」
オレは椅子から立ち上がり控え室を出た。そのままオレは一直線にステージへと向かい、リーナと向かい合っていた。
(後二回だ、たった二回で待ちに臨んだクレアさんとの一騎打ちだ)
オレがこの大会に出た一番の理由はクレアと戦う事だ。魔族の襲撃もあるようだがまずはそんなものよりクレアとの戦いの方が大事だ。
「それでは準決勝第一試合、リュウ•セブンスター対リーナ、はじめ!」
今、準決勝が始まった。




