組み合わせ決定
時刻は夜の9時、辺りはすっかり暗くなっていた。オレ達は本戦の組み合わせ発表を待っていた。
ちなみに賭けの方は合計で金貨二十枚を使ったが最終的に六十四枚になって返ってき、四十四枚の勝ちだった。日本円にすると四十四万円、大勝ちだった。
「かぁ〜うめぇな、おかわり!」
「試合後の酒は格別だな」
「全くだ」
オレと宏太、来綺は本戦の組み合わせが発表されるのを待ちながらベールを飲んでいた。運動した後の酒はやはり格別に美味しかった。
「全く、明日も試合あるんだから飲み過ぎないでよ」
「まあ、ほどほどにして」
瑠璃とリリスは酒を飲んでいるオレ達に注意した。まあオレに関しては毒無効があるので現在オフにしているその能力をオンに切り替えれば一瞬で酔いは覚めるから問題はない。
宏太と来綺に関しても毒無効は持っていないが最悪オレかリリスが治せるので問題はない。
しばらく談笑しているとそこに秋達が姿を現した。
「何だ?先生達、用でもあるのか?」
「完敗よ」
「何だ?明日もあるのにもう諦めてるのか?」
「今日の試合で分かったわ、あなた達が強い事は」
明日の本戦、秋とリーナは出場するが秋の方は既に諦めた顔をしていた。
無理もないだろう、オレは本戦に出場する者全員の強さは大体把握できた。その中でも秋は圧倒的な最下位という評価だった。
「まあ先生には無理だろうがそっちの騎士団員さんならワンチャンあるかもしれないぞ、あんたも気づいてるんだろ?あの試合どっちが勝ってもおかしくない試合だったのは」
「ええ、もちろん」
あの試合、確実にどっちに転んでもおかしくはない試合だった。最後の魔法、リーナが下に注意していれば勝っていたのは宏太ではなくリーナの方だっただろう。
「ところで聞きたかったんだがあんたルドラとかいう雑魚よりも強いのに何で騎士団長じゃないんだ?」
オレは疑問に思っていた。最初にあった時リーナのステータスは大した事がなかった、ステータスを偽っていたのだろうがオレでさえ気づかない程の隠蔽技術を持ち、宏太と渡り合う程の実力、何故このような強者が騎士団長ではないのかが。
「確かに騎士団は完全な実力主義、強い者が団長になるのは当然よ、でも私は団長なんて席にはつきたくなかった、だから今まで力を偽って生きてきた」
「なるほどね、そういう事だったのか」
確かに同じ騎士団のエルミスもリーナの本当の実力は知っていなさそうな顔をしていたので本当に今まで隠したとうしてきたのだろう。
「それよりどうだあんたらも一緒に飲まないか?一杯奢るぞ」
「いいわね頂くわ」
「オレも頂こう」
「あなた達お酒なんて飲んでるの?」
リーナとエルミスは喜んで酒を貰ってくれた。だが秋は俺達が酒を飲んでいる事に驚いていた。
「あ?何か悪いか?……かぁ〜うめぇ〜」
「悪いに決まってるでしょ!」
「は?言ってる意味がわからない」
「あなた達まだ高校生なのよ」
オレは秋が言っていることが分からなかった。確かに元いた世界、日本では酒は二十歳になったからだがこの世界では十六から飲める事になっている。故に秋の言葉の意味が全く分からなかった。
「さっきから何を言ってるんだ?」
「日本では酒は二十歳になったからと決まってるでしょ」
どうやら秋が言いたかったのはこの世界の法も勿論大切だが日本人なら日本の法を優先して守れという事だった。
だがオレはそんな事を聞くつもりはない。
「つまり、オレ達以外の生徒は酒を飲んでいないと?」
「そうよ」
「勿体ねぇな、こんな上手いのを飲まないなんて」
一度酒の味を知ってしまえばもはや抜け出す事は出来ない。秋の言葉などには一切聞く耳を持たなかった。
「オレ達は飲むぞ、足立達も飲んでみろよ美味いぞ、なあ宏太、来綺」
「そうだぜ一回飲んでみろよ」
「こんな上手いものを知らないのは損だぞ」
オレ達は皆んなを酒に誘ったが秋は頑なにそれを阻止してきた。少し酔っ払っていたオレは流石に痺れをきらした。
「いい加減にしろよ!先生、ここは日本じゃねぇ日本よりこっちの世界の法を優先するべきだ!」
「分かったわ」
オレは酒に酔った勢いで声を荒げてしまった。秋は少し怯えた表情をして納得した。どうやら無意識のうちに神気を発動してしまったようだ。
それからオレ達は本戦の組み合わせ発表がされるまで談笑しながら酒を飲んだ。飲み始めて三十分程すると本戦組み合わせの発表が始まった。
「では本戦の組み合わせ発表します!まず第一試合です!第一試合は……リュウ•セブンスター選手対遠山来綺選手です!」
司会の女性は最初の組み合わせを発表した。
「あらら」
「まじか!一回戦からリュウガかよ」
オレは第一試合、しかも相手は来綺だった。実に楽しみな試合といえる。この大会でのオレの目的はクレアと戦う事と後は強くなった来綺、宏太、瑠璃と戦う事だったのだから。
「第二試合!第二試合は……リーナ選手対ルビオ•サーマル選手!」
そして第三試合は宏太対秋、第四試合は瑠璃対バリスという組み合わせになった。
「残念、宏太と瑠璃のどっちかとしか戦えないのか」
「リュウガと決勝で戦うのは私よ」
「いや、オレだ」
「まあ、オレとしてはどっちでも楽しみだが」
これはあくまでもオレの予想だが準決勝はおそらくリーナ、そして決勝は間違いなく瑠璃か宏太のどちらかになるだろう。
「残念だったなリーナさんよ」
「……勝つのは難しいでしょうね」
そう言っていたがリーナの表情は諦めたという顔ではなかった。リーナも宏太と接戦を繰り広げられる程の実力者という事から少しは楽しめそうだと思えた。
それから少しばかり酒を飲んで秋達と別れ、オレ達は自分の家へと帰った。
「今日はいいものを見させてもらった」
「私達も強くなってるでしょ?」
「ああ驚くくらいにな」
今日の試合を見てオレは三人の成長に驚いた。まず瑠璃だが矢の精度はもちろん上がっていたが一番驚いたのは凶星爆炎矢だ。あの技は下手をすれば最上級クラスになりえる程のものだ。
次に来綺、予選決勝で惜しくもルビオに敗北してしまったがオレの技、創造神流の壱の型を使うとは驚いた。万全の状態ではなく失敗で終わったが万全であの技を使っていたのなら勝っていたのは来綺であっただろう。
最後に宏太、予選決勝で見せた最上級魔法である炎帝、威力はオレに劣るもののあの魔法が使えるようになってるとは、宏太ならば近いうちにオレと同じくこの魔法を手のひらからでも打てるようになるだろう。
「みんな疲れたでしょ、今日はもう寝て」
「ああそうだなリリス、お前らもさっさと寝て明日に備えろ、特に来綺はまじで朝から万全の状態にしとけよ」
「分かってる、リュウガ相手に不調で挑むのは死にに行くようなもんだからな、万全でも勝てねぇってのに」
明日の本戦、第一試合はオレと来綺、来綺には万全の状態で挑んでもらいオレを出来るだけ楽しませてくれなければならない。
それからオレ達はそれぞれの部屋に入っていった。
「今日は二人の時間を作れなくて悪かったな」
「ううん大丈夫、今こうして二人でいれるんだから」
「それならよかった、じゃあおやすみ」
「おやすみリュウガ」
オレとリリスは口付けをして眠りについた。もう少し話していたかったが明日は忙しい。クレアと戦うのももちろんだがおそらく魔族が明日仕掛けてくるその為にも身体を万全にしておかなければならない。




