魔族の企み
試合が開始する数分前、オレは強力な邪気が感じられた方へと気配を消しながら向かっていた。
「やあ、リュウガ」
「クレアさん!まさかクレアさんもこの嫌も気配を感じて?」
「ええ、という事はあなたも?」
「はい、正体の方はだいたい予想がついてます」
オレはクレアが声を掛けて思わず驚いた。オレは気配を消して向かっていた、なのに簡単に見つけられたからだ。それにクレアの気配には全く気づかなかった流石は火炎神といったところだろうか。
さらにクレアもオレと同じく邪気に気づいて向かっている最中だった。
「……魔族ね」
「ええ、おそらくは」
魔族は二度に渡ってオレを排除しに掛かってきた上その可能性は十分高いだろう。一度目は昇格試験時でその時は中級魔族が、二度目はダンジョンにてその時は上級魔族が襲ってきた。
「この気配から感じられるにおそらく上級魔族でしょう」
「ええ、あの時と同じくらいの力を感じるわ、それも二つ」
クレアが言った通り感じられる邪気は二つあったのだ。
「クレアさん、ここはオレに任せてもらえませんか?」
「大丈夫?」
「大丈夫です、俺はあの時より格段に強くなってますから」
確かにあの時はクレアの助けが無ければ創造神の加護も復活していなくて確実に死んでいただろう。だが今は違う、無限タルタロスにて特訓を重ねたオレは短い期間で格段に強くなり上級魔族クラスなら余裕で倒せるくらいにはなっている。
「じゃあ任せるわ、私は戻るけどもしもの時は呼んでね」
「分かりました」
クレアは解説席に戻り、オレは邪気がする方へと再び向かっていった。
既に試合が始まっているなかオレは一人、邪気の反応がある所に近づいていた。
(ん!かなり近いな)
オレは気配を消すだけでなく透明化も使用した。
「ほんとに上手くいくんだろうな?ここにはあの火炎神もいる上に急激なスピードで成長してるっていう創造神もいるんだろ?」
「大丈夫だ、エゾット様がそう言ってるんだから間違いないだろ」
声のする方に行ってみると人の姿をした魔族がいた。見た目では魔族とは分からないがオレの目は誤魔化せない。あれは擬態している魔族、魔力量から考えるにどちらも上級魔族だろう。
「しかし、試合を見た感じ厄介な敵はいなさそうだな」
「ああ創造神以外はどうとでもなる、多少強い力を持った者もいるが脅威にはなり得ない」
この魔族達、オレが変装しているのを見抜いていたようだ。まあ上級魔族クラスならば見抜けて当然だろう。
オレは透明化をとき、気配も現した。
「誰だ!そこにいるのは!」
「姿を現せ!」
魔族の要望に答え姿を現した。
「貴様は創造神!」
「何故ここに!」
「何故だと?あのな気配でバレバレなんだよ」
どうやら魔族達は上手く気配を隠していたつもりでいたらしい。それにオレに驚いたせいか人間の姿でいることを忘れているようだった。まあオレはとっくに気付いているので人間として振る舞っても意味はないが。
「でも迂闊だったな」
「迂闊?」
「いくらお前でも二体の上級魔族を同時に相手に出来るとは思えないが」
魔族は擬態をやめ、本来の姿へと戻った。ここでオレを本気で潰しにかかる魂胆だろう。
「それはどうかな?」
確かに少し前までのオレならば一体を相手にするのすら厳しかっただろう。だが今は急激な成長で短期間で以前とは見違えるほど強くなっている。オレは負ける気などさらさらなかった。
それから二分後、オレの足元には二体の魔族が苦しそうに倒れていた。
「がはぁっ!聞いてた情報と違う!」
「馬鹿な!」
「残念だったな今の俺にとっては上級魔族も相手にならないんだよ」
魔族は血を吐いて倒れていた。どうやら自分達がやられるとは思っていなかったようだ。
「一つ聞く、貴様らが言っていたエゾットとか言う奴はいつ襲撃してくる?」
「馬鹿が誰が教えるか」
「それは死んでも教えないね」
「そうか、なら死ね!」
オレは最上級魔法の炎帝を放ち二体の魔族を消し炭にした。
幸い近くに人はいなかったようで騒ぎにならずに済んでくれてよかった。
(さてと、クレアさんにこの事を報告しておくか)
オレはクレアに報告する為に皆の所に戻りながらテレパシーを始めた。
(クレアさん、オレです)
(リュウガね、どうだった?)
(魔族二体は問題なく片付けました)
(そう、それは良かったわ)
オレは魔族達から手に入れた情報をクレアに話した。魔族はこのトーナメント中に進軍してくるという事、敵の主力である四天王のエゾットがやってくる事も。
(エゾット……ね)
(知ってるんですか?)
(ええ、以前やり合った事があるわ)
どうやらクレアはそのエゾットという魔族と一戦交えた経験があるらしい。だがその時は決着はつかなかったようだ。エゾットは魔剣神と呼ばれる神職者のようで話しを聞く感じ二人の実力は互角とみて間違いないだろう。
エゾットの力は神職者ということもあって驚異的で剣の実力は現時点で間違いなくこの世界最強ということだ。
(それで、魔族はいつ来るか分かる?)
(いえ、そこまでは聞き出せませんでした)
オレは最後、魔族達から情報を聞き出そうとしたが魔族達は一切答えようとはしなかった、死を前にしても。
(でも、だいたい予想が付きます)
(ほんと?)
(ええ、それとクレアさんにはお願いがあるんですが)
(いいわよ、何かしら?)
オレはクレアにある一つの頼みをした。これはクレアにしか出来ない事ゆえ他の者には頼まない事だ。
(……なるほどね……分かったわ)
(ありがとうございます)
(でも、それを頼むって事は)
(ええ、悔しいですけど結果は分かってますから)
そうこう話してるうちに皆んながいる控え室の前まで戻っていた。
(クレアさん、最後に一つ)
(何かしら?)
(流石に試合の方はもう終わってますよね?)
(いえ、まだ続いてるわよ)
(え!そうですか、では失礼します)
オレはクレアとのテレパシーを切った。
(まだ終わってないだと?宏太の奴なにを遊んでるんだ?)
おそらくリーナの実力はエルミスと同等か少し上、その程度の相手に宏太が苦戦するとは思えないのだ、だからオレは宏太が遊んでいると考えた。
オレは控え室の扉を開け中に入った。中に入ると皆んなはオレに気付かずモニターに見入っていた。
「おい!お前ら宏太の奴、遊んでやがるのか?」
「リュウガ!やばいかも」
「やばいって何が……!」
モニターを見るとそこには身体から大量の血を流している宏太の姿があった。もちろんリーナの方も相当怪我をしていたが宏太の方が酷かった。
「リリス、ちょっと頭借りるぞ」
「え、いいけど」
オレはリリスの頭の上に手をおいた。記憶読取を使いここ数分前の事を読み取るのだ。
時は試合が開始直後にまで戻る。




