ルビオ•サーマル
試合が始まって一分程だろうか、ルビオは物凄いスピードで攻撃を仕掛けており来綺は防御するのに手一杯で攻撃に踏み込まずにいた。
「くそっ!」
「どうしたの?攻撃してきなよ」
来綺は攻撃に踏み込めずイライラした様子だった。この時点で速さの方はルビオの方が圧倒的に勝っていた。
「遠山選手、攻撃に踏み込めません」
ルビオ•サーマル、情報によると獣人の中でもトップクラスのスピードを誇るという事のようだ。会場の中でも奴の攻撃を全て見切る事の出来るものはオレやクレアくらいなものだろう。
(こいつなんて速さだよ!全く攻撃に踏み込まない)
来綺はなんとか攻撃に踏み込もうとはしていたが厳しい状況だった。この状態で攻撃に踏み込めば確実に痛いダメージをくらいそこからさらに追い討ちがくるのが分かる。
(だが体力は無限ではない、奴の体力が削れるのを待つしかないか)
来綺はルビオの体力消耗を狙っていた。ルビオの体力が減れば攻撃スピードも遅くなり攻撃出来ると考えたのだろう。
「もしかして、僕の体力が尽きるのを狙ってるのかな?」
「ああ」
「残念、僕に体力消耗なんてないから」
「なんだと!」
ルビオの言う通り体力消耗は永久に訪れない、オレはこの試合が始まる前に分かっていた。
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ルビオ•サーマル 25歳 男 レベル 109
種族 獣人
才職 拳帝
攻撃力 1888
体力 1770
俊敏性 2449
魔力 2620
魔法耐性 1399
物理耐性 1779
能力:拳術•獣化•火水属性耐性・風属性適正・俊敏性超向上・身体強化(強)・攻撃力上昇・毒無効•体力消耗無効•限界突破・魔力感知・気配感知・言語理解
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体力消耗無効の能力、確かにこんな能力があれば体力が尽きる事はないだろう。
(体力消耗無効ね、確かに面白そうな能力だがあれは造る価値なしだな)
体力消耗無効、確かにその能力があればどんだけ動こうとも疲れはせず常に全力で戦えるだろうがそれはオレにとっては必要のない能力といえる。
何故ならオレは戦う事が好きだ。そんな能力を手にしてしまえば自分より強い相手ならとにかく自分と同等以下の相手との戦いに何の面白みもなくなってしまうのだ。
「どうしたの?このままじゃ負けちゃうよ?」
「……ああ、このまま終わるつもりはねぇよ」
ルビオの実力は本物だ。才職は拳帝で拳士の上である拳王のさらに上をいく才職だ。
それでも来綺は諦めていなかった。
「うぉぉぉぉぉ!」
「なに!」
来綺は全身を硬化させ攻撃に当たりながらもルビオとの間合いをつめ攻撃を当てた。
「あんた正気の沙汰じゃないね」
いくら全身を硬化させてるとはいえダメージを受けるのは必須、現に攻撃を当たるまでに五発ももろにくらっていた。
「こっからは俺の番だ!」
そこからは来綺の剣が猛威を振るった。ルビオにスピードを生かす暇を与えずに攻撃の手を止めなかった。
ルビオは限界突破を使って身体能力をさらに上げていたが、来綺もいつのまにか限界突破を得ていたようで対抗出来ていた。
(スピードでは負けていてもパワーは俺の方に武があるようだ)
攻撃力は来綺の方が勝っていたようでルビオは押され気味だった。
「おかしい」
「どうしたの?リュウガ」
「ルビオ相手にここまで戦えるのならテルシアとの試合はあそこまで苦戦するか?」
ステータスではルビオの数値はテルシアを大きく上回っていた。なのに来綺はルビオ相手に善戦出来ている。この事から考えられることは一つしかなかった。
「瑠璃、宏太、来綺の奴今まで本気出してなかったようだな」
「ええ、そうよ」
「流石に分かるよな」
来綺はここまでの試合、本気を出していなかった。
「いくぞ!”稲妻剣”」
来綺の聖剣から雷属性の魔力が発せられた。さらに間合いを詰め、一撃を当てた。
「ぐっ!」
「続けていくぞ!”紫電•雷超蛇”」
来綺は剣先に込めた魔力を紫色の雷に変えその雷は蛇のような形になり敵に目掛けて全力で剣とともに向かっていく。テルシア戦で使用した技だ。
その剣先がルビオに当たろうとした瞬間、ルビオの身体が輝き来綺の身体が後方に大きく吹き飛ばされた。
「がぁっ!」
後方に吹き飛ばされた来綺は口から大量に血を吐き出していた。まともに攻撃を受け内臓も損傷してしまったのだろう。
「まさかこれを使う事になるとは思ってなかったよ」
「ぶはっ!……な、何だ?その姿は」
「これは獣化、ごく僅かの獣人しか辿り着けない境地だよ」
ルビオの身体は大きな変貌を遂げていた。今まで獣の部分は手、前腕、耳、足だけだったのだが今は身体全体が獣の姿となっていて凶暴になっていた。
「もちろんステータスも上がっているぞ、主に攻撃力と俊敏性がな」
その言葉の通り他のステータスはさほど変わっていないが攻撃と俊敏に関してはかなり上がっていた。
(来綺には厳しい戦いだな、さあどうする)
来綺は今の一撃で身体の外部は勿論の事、内部も多少損傷しているだろう。この状態からの逆転の確率はかなり低いといえた。
ルビオの実力は間違いなくオレ達神職者を除けばこの世界で10本の指に入ってくるだろう。
「はあ…はっ……」
来綺は既に限界が来ていた試合開始直後からルビオの素早い攻撃を防ぎきる為に神経を削り、その後も速さを生かさせる暇なく攻撃を仕掛け続けた。そして先程の強力な一撃をまともに受け体力的にもダメージ的にも限界が来ていた。
「まだだ、まだ終わらない」
「その状態で何をするつもりなの?」
「これで決まらなければ俺の負けだ」
来綺は落ちていた聖剣を手にし攻撃をする為に構えていた。
「創造神流、壱の型……”暁闇”」
次の瞬間周りが暗闇に包まれた。暗闇の中はっきりと目に見えるのはルビオの姿とその後ろに現れた上限の月だけだった。
(創造神流だと!来綺の奴)
オレは驚いた。あの技は完全なオレのオリジナルだ。元の世界の偉人やアニメのキャラを参考にした訳でもないオリジナル。それを真似されるとは思ってもいなかった。
ここからどうなるかはこの技を使うオレには分かる。この後に姿を消し相手を切り裂くはずだ。
「くそっ!」
「残念だったね、どうやら技は失敗したようだ」
来綺の攻撃は失敗に終わってしまい、ルビオにいとも簡単に止められてしまった。
(成程な)
オレはすぐに理解した。なぜ失敗に終わったのか、それは来綺が万全の状態ではなかったからだ。あの技、来綺はおそらくだがまだかなり集中しないと出来ない。だからとっくに限界の来ている身体では失敗に終わってしまったようだ。
「これで終わりにしてあげる」
「がぁっ!」
ルビオは右手に大きな魔力を込め来綺の急所に思いっきり攻撃した。その攻撃を受けた来綺はなす術なく倒れ意識を失った。
「勝負あり!Aブロック一位通過はルビオ•サーマル!」
次の瞬間、会場から大きな声が響いた。ルビオ•サーマルまさか来綺を負かす程の選手がいたとは思いもしなかった。
おかげで掛け金である金貨五枚を失ってしまった。だが他三試合で勝てばいいだけの話しだ。
「いや〜、凄かったですねクレアさん」
「ええ、両選手とも凄かったけどまさかあの若さで獣化出来る子がいるなんて思っても無かったわ」
獣人の中で獣化出来る者は全体の1%にも満たない上に獣化出来る者の多くは40歳を超えてからのようだ。
その事からルビオは獣人の中でも飛び抜けて才能がある事が分かる。次期神職者候補といっていいだろう。
「それじゃあ、次は俺の番だな」
「程々に」
「ああ、それとリリス途中までついて来てくれ」
「ん?そういうこと、分かった」
オレの言葉を理解したのかリリスはオレと一緒に控え室から出た。
「来綺、随分ひどくやられたな」
「ああ……すまねぇ」
途中、担架で運ばれている負傷した来綺にあった。
「リリス」
「分かってる」
リリスを呼んだ理由はこれだ。来綺の怪我を治療させる為に呼んだのだ。今のリリスならばこのくらいの傷を完治させるのも時間は多少掛かるが容易なことだ。
一分程で来綺の傷は完全に完治した。
「助かったぜリリス」
「うん、これくらい当然」
「オレはいく、二人は宏太と瑠璃のいる控え室にでも戻っててくれ」
オレは二人と分かれステージの方へと向かった。




