予選準決勝
その後も順当に試合が進んでいった。現在時刻は六時前となっており日も暮れ始める時間帯だ。
現在三回戦までが終わっていた。オレ達四人は順当に勝ちを掴み全員が予選準決勝まで来て後一勝すれば決勝トーナメントに進める所だ。そして秋、龍弥、真希、リーナ、エルミス五人も勝ち進んでいた。
残っている人数は全ブロック合わせて16人、この中の半分が決勝トーナメントに進む事が出来る。
「では、これより準決勝を始めます!Aブロック第一試合に出場する選手は入場をお願いします!」
準決勝からは一試合ずつ行なわれていく。この試合の次はBブロック第一試合となるのでオレは現在控え室のモニターで試合の様子を伺っていた。
出場する二人の選手が入場を始め、リングの上に登った。片方は黒色の髪に紫色の剣を持った二十歳前後の男、もう一人は人間ではなく獣の耳をした獣人族だった。髪は茶色で少々小柄だった。
「それでは、剣鬼ラルク・ハーラズ対拳王ルビオ・サーマル試合開始!」
両者、開始の合図と共に相手に飛びついた。お互い剣と拳で撃ち合いかなりレベルの高い試合だった。二人共このトーナメントの出場者の中でも上位に入る強さだった。
「勝者、ルビオ・サーマル!」
試合は5分程続き勝者は獣人族のルビオだった。この試合どちらが勝ってもおかしくない程実力が拮抗した試合だった。ステータスを見ても両者ほぼ同じで状況によってはラルクが勝っていたといってもおかしくはないだろう。
ちなみにラルクの才職、剣鬼は剣王の一つ下のランクの職業だ。ラルクは確かに相当な実力者と言えるがテルシアと比べるとやはり劣っていると言えるだろう。
つまりそのラルクと実力が互角だったルビオもまたテルシアよりも劣っていると言える。つまりテルシアとほぼ互角の勝負をしていた来綺が決勝でルビオと戦って負ける可能性はかなり低いと言える。だが油断は禁物、強い方が勝つとは限らないのだから。
「それではBブロック第一試合に出場する選手は入場をお願いします!」
オレはリングに向かって足を運んだ。リングの上に登ると今までのリングよりも大きくなっている事が分かった。今までのリングでも十分戦えたがさらに戦闘がしやすくなったといえるだろう。
「準決勝の相手はあんたか、騎士団員さんよ」
「ああ、全力で行かせてもらう」
オレの相手は秋達に同行してきた騎士団のエルミスだった。前に見たときは大したことないステータスだったが今は少しだがましになったようだ。
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エルミス 28歳 男 レベル 60
才職 剣士
攻撃力 724
体力 702
俊敏性 724
魔力 749
魔法耐性 660
物理耐性 617
能力:剣術・風属性耐性・光属性適正・俊敏性向上・身体強化(中)・魔力強化・魔力感知・気配感知・言語理解
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正直、この試合に対するオレのやる気はほぼゼロと言ってよかった。今までの試合も全てそうだったがオレは相手が自分より格下だととことんやる気が出てこないのだ。
一回戦で来綺が戦った剣王クラスであれば少しはやる気が出たのだが。
「それではBブロック準決勝第一試合、剣士エルミス対冒険者リュウ・セブンスター始め!」
審判が開始の合図を出し、僅か数秒後エルミスは倒れ込んでいて持っていた剣も折れていた。オレはまた一撃で勝利を収めたのだ。
まず始めにオレは身体強化を自身にかけ肉体を強化した。そしてエルミスに向かって突進していった。エルミスはかろうじて反応して剣で防御を取ったが強化されたオレの拳が剣を折り、エルミスの腹に強烈な一撃を叩き込んだ。この間、実に二秒だ。
「しょ……勝負あり!勝者リュウ・セブンスター!」
次の瞬間、会場中から大きな歓声が聞こえてきた。オレはこの大会は今までの試合全て一撃で終わらせてきた。そして今回、準決勝すらも一撃で終わらせた事によりこの姿でもかなり注目されるようになった。
「大したものだぞ、今のオレの攻撃を反応しただけでも」
オレは倒れて気絶しているエルミスに一言いってリングから降り退場していった。控え室の前辺りまで来ると秋の姿があった。
「七宮君」
「先生、そういや次か」
「ええ、必ずあなた達を連れ戻すわ」
「まだそんな事言ってやがるのか、確かにあんた達は強くなってる、だがそれでもオレ達には勝てない」
秋達が強くなっているのはオレも認めている。しかしそれでも届かない壁というものがあるのだ。オレはもちろんの事、他の三人にも現状届いていない、これが紛れもない事実なのだ。
「確かにそうね、でも強い方が絶対強い方が勝つという訳ではない」
「確かにその通りだ、相手との差が少しなら策を上手く練れば勝てる可能性はある」
確かに差が少しならいくらでも覆しようはあるがその差が絶大であれば話しは変わってくる。差が大きければ大きい程覆しにくくなる。
それから秋の試合が行なわれた。試合は十分程続き、秋はかなり苦戦していたが何とか勝つ事ができ、見事決勝トーナメントに進む事が決まった。
そしてDブロック準決勝第一試合、宏太の出番となった。宏太の相手は真希、才職は火魔術師で宏太の下位互換と言える職業だった。
「真希、一つ言っておく俺は火魔法しか使わない」
「どう言う事だ?お前は三つの属性を扱えるはずだろ?」
「ハンデだ、その方が面白いだろ?」
「舐められたものだな」
来綺は火・水・風の三属性を扱えるトリプル魔術師、だがこの試合では火のみで戦うようだ。
「それではDブロック準決勝第一試合.火魔術師立花真希対冒険者篠原宏太試合開始!」
審判の合図とともに両者は魔力を込め戦闘準備を開始した。
「”火球”」
「ならこちらも、”火球”」
両者ともに初級魔法を放った。お互いの魔法はぶつかり合ったが勝ったのは宏太の魔法だ。同じ魔法ならばより魔力が込められ練度が高い方が勝つのは当たり前だ。
真希は自分に向かってきた魔法を何とか避ける事に成功した。初級魔法程度ならそれ程のダメージにはならないだろうが少しでも不利になるのは確か、避けられてほっとしたようだ。
「しかし驚いた!まさか無詠唱で打てるようになってたとは」
「俺も特訓したからな」
まさかたった数日で無詠唱で魔法を放てるようになっているとは思ってもいなかったようで宏太は驚いていた。
これには宏太だけでなくオレもそれなりに驚いていた。確かによく考えて理解さえすれば無詠唱魔法などそれほど難しい事ではないだろう。だがこの世界では無詠唱魔法を扱える者は殆どいない。それだけでこの世界の人々の想像力がどれだけ欠けているかが手に取るように分かる。
それから両者共に初級魔法、さらに中級魔法を打ち合っていた。どれも宏太の魔法の方が威力はあったが真希は何とか避ける事に成功していた。
「次で終わりにするぞ」
「何をする気だ?」
次の瞬間、宏太の手からは今まで以上の魔力が感じられた。おそらくは上級魔法を放つ気でいるだろう。対する真希は上級魔法を使えない、打つ手はなかった。
「くそ!」
「じゃあ決めさせてもらうぞ!”獄炎”」
そういい放ち宏太は魔法を放った。真希は火の壁を展開して全力でその攻撃を防ごうとしていた。だがその壁は一瞬にして崩され向かってきた魔法をもろにくらってしまった。
そして数秒程苦しみ、地に倒れていった。
「勝負あり!勝者篠原宏太!」
宏太は何の危なげもなく勝利を収め見事決勝トーナメントへ進む事となった。




