総合トーナメント開催
あれから数日が経ちついに総合トーナメントの開催日となった。オレ達はこの日まで一日を除き無限タルタロスで特訓の日々を送っていた。
無限タルタロスでの特訓の成果は想像以上でオレ達五人は相当レベルアップしていた。ただ休みなく特訓すると本番に支障が出るかもしれないので昨日は一日休んでいた。
「おい!そろそろ出発するぞ!」
オレが声を掛けると家の大部屋でくつろいでいた四人は立ち上がった。
今日の大会、最初に出るといっていたのは来綺と宏太の二人だったが昨日、大会の受付が締め切られる数時間前のタイミングで瑠璃も出たいと言い出したので急遽参加する事になった。
「お前ら、特訓の方はバッチリなんだろうな?」
「ああ、問題ないぜ」
「お前には到底敵わないだろうがいい線行くと思うぞ」
「私もバッチリよ」
三人全員がいい仕上がりのようだ。オレは三人がどのように特訓していたのかは知らない。試合ではこの三人の誰かと当たる可能性がある事からステータスは見ないようにしていた。ただでさえ大きな差があるというのにそんな事をしていては何の面白みもない試合となってしまうからだ。
「でもリュウガの姿、完全に別人ね」
「ああ、言われないとわからないぞそれ」
「だろうな」
瑠璃と宏太の言うようにオレは今、変装している。何故かと言うとオレの顔は既に街中に広まってしまっている。そこでバレないように変装を施したのだ。
髪色は茶色、目の色は黒、顔もオレだと分からないように魔法で変えていた。
それからオレ達は家を出て総合トーナメントが開催される場所まで歩き始めた。
数十分歩いていると目的の場所に到着した。目の前には巨大なコロシアムがあった。まるで日本のアニメに出てくるものそのものだった。
「受付はあそこだな」
オレ達は入り口前にあった受付の方へと足を運んだ。出場する者はここで受付を済ませて選手用の入り口から入るようだ。
「よう!今日もご苦労さんだな」
「リュウガさんですか?」
「ああ」
受付にはよく見る女性が座っていた。ギルドの受付嬢のエルナだ。今日はギルドがこの総合トーナメントの受付を任されているようだ。エルナには変装していくと言っていたので他の皆んなを見てオレだと気づいたようだ。
「エルナ、こんな日まで大変ね」
「お気遣いありがとうございます、大変ですけどこれが私達の仕事なので、それではこちらの用紙に名前の記入をお願いします」
「分かった」
オレ達はそれぞれ用紙に名前の記入を行なった。オレ以外の三人は当然本名を書いた。だがオレは違い数日前に受付をした時には偽名を使っていた。
何故ならオレは顔だけでなく名前も既に街中に広まっている。本名を使ってしまえば不戦勝続きになってしまう可能性があるという事をエルナに言われリュウ・セブンスターという偽名で登録していた。
「終わったぞ」
「ではこちらのトーナメント表をお持ちになって選手用の入り口から入っていただきますようにお願いします」
オレ達はエルナの言葉に従い選手用入り口へと向かった。
「リリスとは一旦ここまでだな」
「うん、四人共頑張って。ところでトーナメント表はどうだった?」
「ああ、俺はBブロックの第一試合だな」
「俺はAブロック第十試合」
「私はCブロックの第九試合」
「俺はDブロック第五試合だ」
オレはBブロック前半、来綺がAブロック後半、瑠璃がCブロック後半、宏太がDブロック前半という事になった。つまりは全員予選では当たらずに勝ち進めば本戦で当たる事になる。
今回は128人の参加者となっている。各ブロック32人に分かれておりその中から本戦に出場出来る者を決める事になる。本戦に出場出来るのはブロック上位2名のみとなっていて本戦は8人のトーナメント形式で行なわれる。
総合トーナメントは二日間に分けて行なわれ一日目は予選、二日目に本戦となっている。
「じゃ、当たるなら本戦だね」
「だな、それじゃあまた後で」
「うん」
リリスと別れオレ達は選手用入り口へと入っていった。中に入るのそこには数々の出店が広がっていた。この出店は選手なら無料で提供してくれるらしい。
オレ達はそこをさらに奥へと進んでいき観覧席に向かって行った。道中には選手用のトレーニングルームや休憩室、医務室などの施設が設けられていた。
観覧席に着くとそこにはすでにリリスがいた。一応観覧席は選手用の見やすい場所も用意されているのだが別にどこの観客席に座ってもよいとの事だった。
「リリス、席取っといてくれてありがとうな」
「うん、でもリュウガはすぐに行かないとでしょ?」
「ああ」
オレはBブロック第一試合、試合数が多い為予選の第一回戦は各ブロック一試合、計四試合が同時に行なわれる。
オレの試合は後三十分後に迫っていた。
「それじゃあ行ってくる」
「ほどほどにね」
「殺すんじゃねぇよ」
「ちゃんと加減しろよ」
瑠璃、宏太、来綺にそう言われたオレは「分かってる」と返事をし控え室に向かって歩いて行った。流石に俺とて相手に死なれたら気分が悪いので力はかなり制御するつもりだ。
この総合トーナメントは殺しもありとなっている。毎年数人は死んでいる。だがそれは全て相手との間にかなりの力量差があった試合だ。その為、来綺達はオレに揃いも揃ってあんな事を言ったのだ。
オレが控え室前まで来るとよく知った顔があった。
「立花か」
「誰だ?」
「七宮だ」
「まじかよ!別人じゃねぇか!」
「まあな、諸事情で変装してんだよ」
宏太と真希は同じブロック、両者共順当に勝ち進めば当たる事になる。
この数日間どれだけの特訓をしたかは分からないがたった数日で宏太との差を埋める事は難しい、強くなったといってもしれているだろう。
「それじゃあせいぜい頑張れよ」
オレはそういい渡し自分の控え室へと入っていった」
それから二十分後、総合トーナメントの司会者がマイクを手に取り開催の宣言を始めた。
「皆さんお待たせしました!これより第二十二回総合トーナメントを開催します!司会はわたくしハオ・アールン、そして解説は皆さんご存知の火炎神のクレア・ファーレンローズさんにお越しいただいます!」
次の瞬間、会場中から大歓声が響き渡った。この歓声からわかるようにクレアの人気は凄まじいようだ。
「では、早速始めていきたいと思います!各ブロック第一試合に出場する選手は入場してください!」
オレを含めた八人はステージへと入場して行った。試合リングは四つ用意されておりそれぞれ戦うのに何の不自由もないくらい広くなっていた。
オレはBブロック用のリングへと足を運んだ。リングへ上がるとそこにはすでに審判と思われる男がいた。オレは審判の指示に従い定位置に移動した。また相手も同じく定位置に着いた。
「それではBブロック第一試合、冒険者リュウ・セブンスター対剣士ヨルト・フローガー、試合始め!」
審判の合図とともにオレはゆっくり相手に近づいていった。相手はオレが何の躊躇いもなく近づいてくる事に警戒していた。
「はぁぁぁぁ!」
オレと相手の距離が残り数十センチになった所でついに相手は剣を振り落とした。だがオレはそんな攻撃を殆どその場から動かずに避けた。それから何度も攻撃を仕掛けてくるがオレは全て躱していた。
「おっっと!Bブロックのセブンスター選手その場から殆ど動いていません!」
「そうね、あれは相手の動きを完全に読んでいる。おそらく先読みの能力を持っているわね」
解説のクレアの言う通りオレは先読みで相手の動きを読み全ての攻撃を躱している。ただ先読みを持っているからといってもこんな至近距離で全てを躱すのは至難の技、限られた者にしか出来ない芸当だ。
「つまんねぇな、所詮はこの程度か」
「なっ!」
オレは攻撃を躱すのをやめ、右手で剣を止めた。その光景を目の当たりにして相手は驚いていた。
次の瞬間、オレは剣を止めていた右手はそのままにして左手に魔力を込めて相手の腹に一撃を入れた。すると相手は言葉にならない程の苦痛を感じ倒れた。
「勝負あり!勝者リュウ・セブンスター!」
次の瞬間、会場中から歓声が聞こえた。
オレは試合が終わりリングから降りた。周りを見渡すとまだどこも試合の真っ最中だった。ちなみにオレの試合時間は僅か三十秒、他が終わっていないのは当然だった。
「いやー、Bブロックの試合は圧倒的でしたねクレアさん」
「ええ、優勝候補の一人と見ていいんじゃないかしら」
クレアは変装したオレに気づいてないかのように解説していたが当然気付いているだろう。クレア程の実力者ならば変装を見抜くぐらい容易い事なのだから。




