不穏な動き2
時は少し遡りクレア・ファーレンローズが上級魔族を倒してすぐのこと。暗闇の中に四人の男女がいた。
「くそ!余計な邪魔が入った!」
暗黒四天王の1人であるエゾットがそう言って声を上げた。
「まさか他の神職者が近くにいたとは」
「そうねとんだ計算外ね」
「後もう少しで殺せそうでしたのに」
同じく四天王であるベノム、キュール、ドレークの三人も悔しそうな声を上げていた。
彼らが言うようにクレアが助けに来ていなければ確実にリュウガを殺せていた。相手がリュウガならともかく他の神職者ならば上級魔族では相手にすらならないのだ。
「しかしまずいですね」
「何がだ?ドレーク」
「分かるでしょう?ここから奴はさらに強くなる事を」
ドレークの言うようにリュウガはこれからどんどん強くなって行く。それもいずれは他の神職者達と同等の強さを持つ事は確実だろう。
だがドレークが恐れていたのはそれだけではない。リュウガのあの常軌を逸したまでの成長速度を危険視しているのだ。あそこまで速く成長している者はかつて一度も見た事がない。それはドレークに限らず他の四天王も同じく恐れている。
「確かにそうだね、創造神の成長速度は異常だ」
「中級魔族と戦ってからさほど時間が経っていないというのにあそこまで強くなるとはね」
四天王達は創造神の加護が復活していない今、リュウガはそこまで強くなるとは思っていなかったのだ。だがそれは全くの検討違いで予想を上回る成長をしていたのだ。
「次の手を考えないといけないね、皆んなはいい案ある?」
ベノムは次なる手を考えようと皆んなに意見を聞き始めた。
しかし既にあそこまで強くなっていると打てる手は限られてしまう。上級魔族を大量に送り付けるか、さらに上位の上級魔将を使うか、それともより確実に仕留める為に最高位の魔族皇を使うかに限られてくる。
「もういい!」
「どうしたの?エゾット、そんな声を荒げて」
「俺が行く!」
エゾットは自分が直接手を下すと言ったのだ。確かに他の魔族に任せるよりも神職者であるエゾットがいけば確実に仕留められるだろう。
だがそんなエゾットの言葉に他の三人は驚いていた。エゾットは本来自分から手を下す事はしない。大抵は部下に押し付ける事が殆どだ。そんな彼が自分でやると言い出したのは初めてだったのだ。
「珍しいねエゾット」
「確かにあなたが直接手を下す何て」
「もうこれ以上あいつを生かして置いたらこの先どうなるか分かったもんじゃない、その前に奴をこの俺の手で直接ぶっ殺す」
エゾットはこのままリュウガを生かしておくのは得策ではないと考えた。一刻も早く始末しておき人類側の脅威を少しでも減らしておきたいのだ。
「いつ仕掛けるのですか?」
「数日後に奴がいる街で格闘試合があるそうだ、その時に仕掛けようと思う」
「その情報源は彼から?」
「ああ、さらに火炎神もいるそうだ」
魔族達には情報を提供してくれる協力者がいるようだ。その協力者は人類側で情報収集をしているそうだ。
総合トーナメントには多くの人が集まる。そこを狙えばリュウガとクレアだけでなく多くの人類を一掃出来ると考えたのだ。
「でも流石に二人同時に相手するのは厳しいんじゃない?」
ベノムが言うようにエゾット一人でクレアとリュウガの二人の同時に相手にするのは厳しいだろう。せめて一人一人相手にするようにしないと仕留めるどころかこちらがやられてしまうだろう。
「大丈夫だ、仕掛けるのは奴らが戦って消耗した後だ」
エゾットは二人が戦う事になる事も知っているようだ。
「でも創造神はともかく火炎神はそこまで消耗しないんじゃないかしら?」
「それについては考えがあるから安心しろ」
エゾットの表情を見るからに考えている案はかなりの自信があるという事なのだろう。その自信満々な表情を見て三人はあえてその案について聞かなかった。
それから数分後、四天王達が話しをしていると一人の魔族が姿を現し四天王達の前で膝をついた。
「ご報告があります」
「久しぶりだねソルト」
「元気にしてたかしら?」
ソルトと呼ばれたその魔族は最高位の魔族皇だ。基本、魔族は名前を持たないが魔族皇のみ名前を持つこととなっている。
このソルトという魔族は四天王から一番の信頼を持っている魔族であり四天王に次ぐ実力を持っていて先程の情報もこのソルトからのものである。
「勇者達を学院に入学させる事に成功しました」
「まじかよ、よくやってくれたぜ」
四天王達は勇者を少しばかり警戒していたのだ。無論一番警戒すべき人物はリュウガだが勇者は加護を無効化する能力を持っている。レベルにして100になるとその能力を持つと言われている。その前に何としても始末しておきたいのだ。
しかし始末する前に準備をしておかなければならない。もしか何の計画も無しに殺してしまえば大変な事になってしまうからだ。
「しかし何故このような事を?すぐに殺してしまえばよろしいのではないでしょうか?」
「それは出来ないのよ」
「勇者が死んでもその力は失われる事はなく他の適性者に力が譲渡されると言われているのですよ」
ドレークが言った通り勇者をただ単に殺すだけでは意味がないのだ。勇者の力は魔族に渡る事はなく人間にしか扱う事が出来ない。その為、計画を練って確実に勇者と同時にその力も封印する必要があるのだ。
「なるほど」
「で、もう学院の生徒となったのか?」
「いや、全員が揃ってからとなりますので早くとも二週間は先になると思います」
今、秋達がルーベルクにいるのでその帰りを待ってからでないと入学はしないと勇者達が言っているそうだ。
「まあいいだろう、もう下がっていいぞ」
「はい、では失礼します」
エゾットの言葉を聞き、ソルトはこの場を立ち去った。
「ほんとよくやってくれたよねソルトの奴」
「だな、これで計画が進められるってもんだぜ」
「ええ、そっちの方は勇者達が入学してから始めるとして」
「その前に創造神ですね、頼みましたよエゾット」
「ああ、任せておけ」
エゾットはそう言って姿を消した。リュウガとクレアを同時に消す為の準備に行ったのだろう。エゾットは荒っぽい性格をしているように見えてかなり慎重な男だ。二人を確実に仕留める為に準備も念入りに行なうだろう。
「話しを戻すけど今の勇者、レベルいくつなの?」
「先日にソルトから聞いたときはまだ25前後との事でした」
勇者のレベルはまだ100になるまで余裕があった。今のところは問題ない範囲だ。
「では私もこのへんで」
ドレークはそう言うと姿を消した。勇者達の対応に関しては基本ドレークが動く事となっているので完璧な計画を練り始めに掛かったのだろう。
ドレークは四天王の中で一番頭がいい。これまで彼が計画して失敗した事は一度たりともない。今回も完璧な計画を立ててくれるだろうとベノムとキュールは確信していた。
「じゃあ私もいくわ」
「それじゃあ僕も」
そう言葉を交わし二人は同時にその場から姿を消した。




