初めて
「で、何で先生達がここにいるんだ?」
オレはギルドに入ってすぐ来綺達を見つけたがそこに秋達がいる事を不思議に思っていた。
「ちょっとな……色々と話してたんだよ」
「そうか、じゃあもう行くぞ」
そう来綺達三人に声をかけてこの場を離れようとした瞬間、オレ達を呼び止める声が聞こえた。
「待って!七宮くん」
「何だ?先生」
「遠山くん達から聞いたわ、今のままではあなた達に勝て無い事は」
オレはことの詳細を聞いた。来綺達がステータスを見せて今の実力差を教えた事、それでも連れ戻す事は諦めないという意思を。その為に総合トーナメントまでの数日間特訓をする事を。
「まあ、たった数日で来綺と宏太に追いつけるとは思わないがせいぜい頑張ってくれ。……何なら昨日見た騎士団の二人でもいいぞ、それじゃあな」
そういうとオレ達はギルドを出て、自分達の家へと帰って行った。
「おいリュウガ、あんな事いって大丈夫なのかよ」
「もしその騎士団二人が俺らより強かったらどうすんだよ?」
家に着くなり宏太と来綺は先程の話しに対して言ってきた。
「大丈夫だって……多分」
「多分ってお前な」
「負けたら戻らないといけないんだぞ」
オレの”多分”という言葉に宏太、来綺は不安を覚えているように見えた。
オレとてその騎士団二人のステータスを見たわけでは無かった。もしかしたら二人よりも高いのかもしれない。だがそれでも二人なら勝てると信じてあんな事を言ったのだ。
「もしステータスが上でも技術に関していえば俺が鍛えたお前達の方が上なはず…いや確実に上だ。何でもステータスが上の方が勝つって訳じゃない」
今まで相手のステータスを気にしていたが何でもステータスが上の者の方が強いという訳ではない。確かに圧倒的に差があれば上の者が強い事が多いが僅かな差であればその差を覆す事も可能だ。
「……分かった、リュウガがそういうなら信じる!」
「そうだな」
オレの言葉を聞き、来綺と宏太は信じる事にしたようだ。
それから数十分が経ち、オレ達は夕食を食べていた。テーブルの上にはサラダに肉料理、スープそしていつも通りベールが並んでいた。
「そういやリュウガ、ギルドでいってた無限タルタロスって何の事だったんだ?」
「私も気になってた、何なの?」
「ああ、今日リリスと行って来たんだが簡単に言えば特訓施設みたいなもんだな」
それからオレは三人に無限タルタロスについて説明を始めた。
無限タルタロス内では死んでも一日三回までは生き返れる事、そのなの通り終わりが無い事など詳しく話した。
「成程、そんな施設があったのか」
「ああ、明日から総合トーナメントまではそこで特訓しようと思う」
総合トーナメントまではもう一週間もない。ほんの数日しか期間がない中での特訓に関しては無限タルタロスが最適だろう。
「分かったわ」
「そんないい施設があるんなら使うしかないよな」
「私も行くわ」
「勿論、私も行く」
総合トーナメントに出場を決めている来綺と宏太は当然、その提案に賛成した。出場しない瑠璃とリリスも自分自身のレベルアップの為、行く事にした。
「言うのを忘れてたが俺は既に百フロアまで行っている。明日は全員無限タルタロスで特訓だが正確には別行動になる」
オレとリリスは既に百フロアまでクリアしている。明日からはその次、百一フロアから始められるようにセーブをしている。
「もう百まで行ったのか?」
「相変わらずだな」
「ちなみに百だとどのくらいのモンスターが出てくるの?」
「赤鬼だ」
たった数時間で百フロアまでクリアしたというオレの言葉に来綺、宏太、瑠璃はそこまで驚いた様子は無かった。流石にもうこのくらいの事では驚かないという事だろう。
無限タルタロスのセーブデータだが、一つのデータで最大五人までは同時にスタートが可能なのだが三人が強くなるには最初から順にやっていた方が良いと踏んだオレは別々に行く事を選択した。
明日はオレとリリスが第百一フロアからスタート、来綺と宏太と瑠璃が第一フロアからスタートと言う事となった。
夕食を食べ終わり数時間が経ち五人はそれぞれ自分の部屋に入り睡眠に入ろうとしていた。
(……そろそろやばいな)
オレはこの世界に来てからはまだ一度もあれをしていなかった。もうかれこれ一月程経っている。流石に我慢の限界まで来ていた。
「なあリリス」
「何?リュウガ」
「俺達、付き合ってどのくらい経つ?」
「まだ十日くらいしか経ってない」
「十日くらいか」
リリスと付き合い始めてまだ十日しか経っていない。正直ここの所、というかこの世界に来てから色々ありすぎてまだそのくらいしか経っていなかったのかという感覚だった。
「そういえば聞いた事なかったけどリリスは俺が始めての彼氏だったりするのか?」
「うん、リュウガも私が始めての彼女?」
「ああそうだ」
オレは生まれて十七年一度も彼女が出来た事は無かった。というか恋をした事すらなかった。そもそもこの世界に召喚されなければこの先一生恋をする事はなかっただろう。
対するリリスも同じだった。リュウガが始めて恋をした相手、そして始めての彼氏だった。
「リリス……」
「リュウガ……」
お互いの名前を呼びあいオレ達は唇を重ねた。オレもリリスも始めてという事もあってなかなか上手くいかなかった。
ふとリリスの顔を見ると頬を赤らめていた。その表情を見てオレは『可愛いな』と思った。
「リリス、もう一回いいか?」
「うん」
そしてオレ達は再び唇を重ねた。今回は先程よりも上手く出来た。しかし上手く出来たとはいっても一回目よりはという意味だ。急がなくても回数を重ねていけば徐々に上手くなってくるだろう。
口付けが終わりオレ達は同じベッドに仲良く横になった。オレはリリスを抱くように寝転がり再び唇を重ねた。それから何度も何度も回数を重ねるごとに熱く、そして深くなっていった。
それから夜が明け時刻は朝の七時になった。俺は目を覚ましベッドから起き上がった。
(さてと、起きるか……あ……そっか)
ふと自分の身体を見ると衣服を着ておらず全裸の状態になっていた。横でまだ寝ているリリスの方を見るとそちらも服を着ていない状態となっていた。
取り敢えずベッドの下に落ちていた衣服を着たオレはまだ寝ているリリスを起こした。
「おい、リリス朝だぞ」
「……おはようリュウガ……何で私…裸に」
「おはようリリス、何でって忘れたのか昨日あんな熱い夜を過ごしたってのに」
「あっ!」
寝ぼけていたリリスはオレの言葉を聞いて目が覚めたようで昨日の事を思い出し頬を赤らめていた。
「ほらリリスも服来て、先に下行ってるからな」
「うん、ありがと」
オレはベッドの下に落ちていたリリスの服を渡して先に部屋を出て行った。
オレはリリスの前では平静を装っていたが内心全く平静では無かった。昨日の夜はお互い初めてだったのだ、経験があったのならば話しは違ってくるがそうでないなら普通の状態でいられる訳がない。
(あいつらには勘付かれないように気を付けないとな)
そんな事を思いながらオレは階段を降りていった。




