来綺side
時は遡りリュウガとリリスが無限タルタロスの第五十階層辺りを挑戦していた頃来綺達は家を出てある場所に向かっていた。
「で、どこに行くんだ?」
宏太が来綺に聞いた。実は今どこに向かっているのか知っているのは来綺だけなのだ。
「もうすぐ着く」
そして数分後、目的の場所についた。そこは見覚えのある所だった。
「ここは……」
「私達が最初に泊まっていた所?」
そう、この建物はリュウガが家を建てる前まで泊まっていた宿屋の「カール」だった。
「何でここに来たんだ?」
「まあ、ここに泊まっているかは分からないが確認しておきたい事があるんだ」
「もしかして秋先生達?」
「ああ」
そう、来綺がこの宿屋を訪れた理由は秋達に会う為だった。勿論皆んなの元に戻るのが目的ではない、来綺もリュウガ同様に今の生活を気に入っている。今更皆んなの所に帰る意味など無いのだ。
来綺達が中に入ろうとした瞬間、中から秋達が出てきた。
「!赤羽さん、それに遠山君と篠原君も」
「ちょうどよかった先生、話しがあります」
そう言うと来綺達は秋達を連れてギルドの方へと足を運んだ。
「それで話しとは?やっぱり戻ってくる気になったの?」
「いや、何を言われようが戻るつもりはありません」
「どうして?」
「俺達はともかくリュウガはどれだけ説得しようとも戻る気にはならないですよ」
来綺はリュウガの意志がどれだけ固いのかを説明した。そしてリュウガの力は自分達とは比べものにならない程強大だと言う事も。
それを聞いていた秋達は信じられないような表情を浮かべていた。
「総合トーナメントで俺達に勝てば戻るとの約束ですがリュウガに聞いた所、先生達が俺達に勝てる可能性はほぼゼロだと言う事です。それでもやりますか?」
「勿論。それに私達だって強くなってるのよ」
「そうだぜ来綺!俺達を舐めて貰っちゃ困る」
秋と龍弥は自分達も強くなっていると言うが正直そうは思えない。何故ならリュウガに聞いた所では全員が本当に訓練していたのか疑うレベルだったらしい。
そのステータスを見た瞬間、王城を出て正解だったと改めて良かったと思ったとも言っていた。
「ちなみに今のレベルは?」
「聞いて驚け!既に十五だ!」
「はぁ〜」
そのレベルを聞いて来綺、それから続いて瑠璃と宏太も大きくため息を付いた。王城でもそれなりに訓練を受けていたのだろうがそれでもまだ十五、それで挑んでくるとは思ってもいなかったのだろう。
「ちなみに先生は?」
「私は十六よ」
それから全員聞いたが、佳穂は十四、梨花と龍弥は十五だった。この分だと一番レベルが高いと思われる勇者の勇輝でさえレベル二十から二十五辺りになってくるだろう。
勇者がリュウガはともかく来綺達よりも低いとは思いたくもないが高くても三十はいかないだろう。これらを踏まえて王城での訓練は効率が悪いように思える。
「いっとくがその程度だと確実に勝てません。それどころか相手にすらならない」
「何でそう言い切れるのかしら?」
それから来綺達は秋達にそれぞれステータスを見せた。そのステータスを見た瞬間全員が言葉を失っていた。
「……嘘でしょ!こんなに差があるなんて!」
「分かりましたか?これが現実です。正直いって先生達のステータスがこれ程低いとは思ってもいませんでしたよ」
来綺達は落胆していた。そしてもし自分達が王城に残ったままでいたのならこんなにも低いステータスになっていたのかと思うと怖くて仕方がなかった。
この世界に来てまだ数日しか経っていない頃リュウガは言っていた。王城に残って訓練をしていた場合、今とは比べものにならない程ステータスが上昇しないだろうと。
その理由として挙げられていたのが実践の少なさだった。来綺達は王城を出てからほぼ毎日のように実践を行なっていたが先生達は実践など殆ど行なっていなかっただろう。だからレベルもステータスの上がりも微量だった。
「分かったわ、今のままでは絶対に勝てない事は」
「うん?どういう事ですか?」
「総合トーナメントまではまだ時間があるわ」
「はい?」
「先生、正気ですか?今から頑張った所で私達に勝てる確率は1割もないと思いますよ?」
秋のその言葉を聞いて来綺、宏太、瑠璃は耳を疑った。秋達と来綺達とのステータスの差は倍どころではない少しの差ならともかくこれを数日でどうこうするのは無理だと確信しているからだ。
そんな無理難題が出来る人物は来綺達の知る限り一人しかいない。
「まあ、無理だと思いますけど頑張ってください。それじゃあ俺達はここで……」
「待って!せっかく再会出来たんだしもう少し話せないかしら」
来綺達も時間が無い訳では無かったのでその提案に乗ることにし、ギルドに場所を移動した。
それからこれまでのそれぞれの動向を話した。来綺達は王城から抜け出してから今に至るまでの話しを大まかに話した。無論、話したらまずい事は話さなかった。例えばリュウガが一度死んで蘇ったことなど。
「成程ね、色々大変だったのね」
「ていうか、魔法は本来詠唱いらないって本当か?」
真希は魔法に詠唱がいらない事に驚いていた。真希だけではない他の皆んなも同じく驚いていた。
「ああ、リュウガ曰く基本的には誰でも可能な事らしいぞ」
「それなら俺にも可能性はあるって事だよな」
「そういう事になるな」
宏太がそういうと真希は嬉しそうな表情を浮かべていた。真希の才職は火魔術師、今まで詠唱をしていた魔法を無詠唱で出来るように慣れれば戦闘に余裕が出来る。
「それじゃあ次は私達の事を話すわね」
次は秋達がこれまでの動向を話し始めた。王城で学んだこの世界の歴史、それから戦闘技術さらには訓練用のダンジョンというものがある事も。
お互いがこれまでの動向を話し終わり、それからはそれぞれ雑談を楽しんでいた。梨花、佳穂と瑠璃は久しぶりに会えて嬉しそうな表情をして、他もそれぞれ話し込んでいた。
それから数十分が経ち、ギルドによく知った顔をしている二人が姿を現した。




