無限タルタロス
「エルナ、ちょっと聞きたいんだが」
「はい、何でしょうか?」
オレとリリスは現在ギルドにまで足を運んでいた。
「総合トーナメントに向けて自身の強化をしたいんだがどこかいい場所を知らないか?」
「それなら無限タルタロスを使ってみたらどうですか?」
「無限タルタロス?」
それからエルナは無限タルタロスについての説明を始めた。無限タルタロスは世界でも三つしかないとされている最高峰の特訓施設でこのギルドはその内の一つを所有している。
この施設はCランク以上の冒険者か神職者ならば誰でも無許可で入る事が可能でギルドの隣にある建物がその入り口となっていてそこにある転移門の先が無限タルタロスになっている。
「ちなみにこの無限タルタロスは異空間となっています」
「異空間だと?」
エルナの言った通り無限タルタロスは異空間となっていてこちら側とは完全な別世界となっている。さらにはその名の通り終わりは無くモンスターを倒していくごとに相手の強さも上がっていくようだ。
だがこれ程の施設を誰が作ったのかは分からないそうだ。しかしこの施設を作った者はただ者では無いという事だけは確かだ。
「それから死んでも生き返る事が出来ます」
「まじかよ!」
ただし生き返る回数には制限があって一日三回までで上限まで使ってしまえばその日は無限タルタロスには挑戦出来なくなってしまう。だが二十四時間経てば再び挑戦する事が可能になる。
「その施設は火炎神のクレアさんも使っているのか?」
「ええ、最近はあまり来られていないですが」
クレアも無限タルタロスを利用しているようだった。この施設はダンジョンとは違って、一フロア、二フロアと数えられクレアは現在五百三十フロアまで攻略済みだそうだ。
「挑戦する際は必ずセーブをお願いしますね」
「セーブ?」
無限タルタロスにはゲームでよくあるセーブポイントのようなものがあってそこでセーブをすれば次に挑戦する際続きから行なえる事が出来る。
「説明は以上です。他に質問はありますか?」
「そうだな……異空間とこちらの世界の時間の流れは一緒か?」
「はい、全く同じです」
よくある異空間と現実世界の流れが異なるという事は無いようだ。だがもし時間の流れがこちらの世界よりもゆっくりならばたっぷり特訓出来ただけにオレは少し残念そうな顔をしていた。
「分かった、ありがとう。じゃあ早速行ってみるとする」
それからオレとリリスはギルドを後にして隣の建物に足を運んだ。
中に入るとそこには二メートル程の転移門が発動されていた。つまりこの門の先に無限タルタロスがあるという事になる。
「あいつらも来ればよかったのにな」
「まあ明日も来ればいいじゃない」
「そうだな、それじゃあ行くか」
そう言って二人は転移門を潜り無限タルタロスの中に入って行った。中に入るとそこは一面が真っ白の世界となっていた。
――無限タルタロスに挑戦しますか? YES NO――
オレとリリスの前に配置されていたタッチパネルに文字が表示され始めた。オレとリリスは勿論YESを押した。これでプレイヤーの登録が完了した。
数秒程待っていると突然モンスターが現れた。ふと上の方を見ると、”第一フロアを開始します”、と表示されていた。
「さすがに第一フロアは一番下のランクのモンスターみたいだな」
「そうみたいね」
オレの言う通りここ第一フロアのモンスターはFランクの中でも一番弱いとされているスライムだった。最初だから仕方がないがこの程度では特訓にはならない。
「っち、これは急いだ方がいいな」
しばらくは雑魚モンスターばかりとなると踏んだオレは最低でもAランクのモンスターが出て来るまで猛スピードで攻略していこうと考えた。
「さてと第二フロアはどう行けばいいんだ?」
「扉もないみたいだし」
スライムを一秒もかからずして倒したオレとリリスは次のフロアに行く為に辺りを見回していた。しかし壁に扉は見当たらずどう行けばいいのか分からなかった。
「リュウガ見て!」
「どうした?」
リリスに言われてよく見てみるとそこには転移陣が展開されていた。この転移陣は今出現したのでは無くモンスターを倒してすぐに展開されたものである。つまりよく見ていれば見つかったのだ。
そしてオレとリリスはその転移陣の上に乗り次のフロアへと足を運んだ。
第一フロアを攻略してニ時間が経った、今現在オレとリリスは第八十フロアにまで来ていた。本来ここまで来るにはAランク冒険者であっても六時間はかかると言われているがオレはその三分の一の速さで進めていた。
「ここまで来ると少しはましになってきたな」
「うん、新しい魔法や技の練習にもなるしね」
そう、このフロアのモンスターのランクはBにまで上がっていた。オレからしてみれば雑魚と変わらないがそれでも新たな魔法の練習くらいにはなるだろう。
「さてと」
オレは魔力を込め始めた。そこから発せられている魔力の種類は火と光の二種類だった。リュウガは火魔法と光魔法を掛け合わせて新たな属性を作り出そうとしていた。
しかしこの二つ以上の属性を掛け合わせる合成魔法はかなり難しく世界でも出来るものは限られている。だが神職者であるオレならばそれを簡単に成し遂げてしまう。
「喰らえ!”雷槍”」
その瞬間、何もない場所から雷を纏った槍が出現した。オレはその槍を敵に向かって一直線に投げた。投げた槍は一瞬にして敵の胴体を貫通した。胴体に穴が空いた敵はなす術なく倒れていった。
この魔法は雷魔法で中級に分類されるものだ。勿論、火と光の適性がない者には扱う事の出来ないものだ。
「雷魔法……割と簡単だったな」
「今のを簡単と言えるのはリュウガくらいよ……」
確かにオレ自身簡単にやってのけた事だが本来、雷魔法は火と光の適性があったとしても難しい事なのだ。
雷魔法だけでなく合成魔法は本来混じわる筈のない魔法を一つにするものだ。今回であれば火と光、どちらもその魔法の根源から違ってくるのだ。それを一つにする場合、その根源を操作する必要がある。
「まあ中級魔法くらいなら余裕じゃないか?」
「……ほんと、毎度の事だけど出鱈目ね」
オレの言葉にリリスは呆れていた。確かに初級よりも中級、中級よりも上級の方が根源の操作も難しくなってくるが初級魔法でも十分難しい事なのだ。
そしてオレとリリスは次のフロアへと行く為に目の前に現れた転移陣の上に乗り第八十一フロアに進んだ。
それから八十フロアの攻略が終わり数時間が経っていた。あれからもオレは毎フロアで合成魔法の実験を行なっていた。
八十〜八十四フロアでは雷魔法の中級、上級の練習、八十五〜八十九フロアでは火と闇を合わせた黒魔法を練習していた。
「まだ他にもありそうだが今分かるのはこれくらいだな」
世界的に解明されている合成魔法はこの二種類だけらしくこれ以外は試したくても出来なかった。もし失敗すれば大爆発が起こるからだ。
「それで今日はどこまで行くの?」
「取り敢えず百二十フロアくらいまでは行きたいな」
現在二人がいるのは第九十五フロア、つまり後二十五フロアだ。体力的にはまだまだ余裕があるが時間が百二十フロアくらいで丁度いいぐらいになりそうなのでそこまでにしようという事だ。
「まあ明日は来綺達も呼ぶとするか」
「そうね」
来綺達三人は今日は用があるという事で来なかったが明日は強制的にでも来させるべきだと判断した。
ここはダンジョンよりも効率よくレベルが上がる上に魔法の練習にもなる。更に死んでも生き返る事から特訓にはうってつけの場所だ。
「それじゃあさっさと次に行くか!」
「うん」
オレとリリスは再び次のフロアへと向けて足を進め始めた。




