飲み比べ
時刻は朝の十時、昨日の夜は飲み過ぎて全員がこの時間まで眠っていた。現在は全員大部屋にてくつろいでいた。
「くっそ、頭が痛い!」
「本当よ!誰のせいだと思ってるのよ!」
「何だよ!俺が悪いって言うのか?」
「リュウガ以外誰がいるの?」
「そうだぜ!」
全員がこうなったのはオレが原因だと攻めていた。何故オレが悪いと言われているのか、時間は昨日の夜に遡る。
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晩飯の買い出しを終えたオレ達は家へと帰って来て、さっそく食事を作り始めた。ちなみに五人の中で料理が出来るのはオレと瑠璃、それからリリスだ。
そして料理を開始して数十分後、晩飯の用意が完成した。まず一品目は野菜がたっぷり入ったスープ、二品目はかなり高級な肉を使った龍の旨みステーキ、三品目は日本人ならば誰でも知っている卵焼き、それに加えて他にも二品の料理が出来上がった。
「おい龍牙、この龍の肉、かなり高かったんじゃないか?」
「ああ、ざっと金貨二枚近くしたな」
金貨二枚近く、つまり本来ならば金貨四枚、日本円ならば四万円近くする肉という事になる。ちなみにこの金額は一キロでの値段となっている。
それから全員が席に着くと「いただきます」と言って食べ始めた。
「この龍の肉、めちゃくちゃうめぇ〜」
「やみつきになりそうだ」
宏太と来綺は龍の肉を美味そうに食べていた。だが美味しいのは当然だろう、何せ高額な肉なのだから。
しばらく食べたり、飲んだりしていたがオレはあるゲームを持ち出した。
「今からゲームをしないか?」
「ゲーム?一体何の?」
「飲み比べだ!」
オレが持ち出したゲームは飲み比べだった。確かに酒は大量にあるし丁度つまみになる食べ物もある、それにこんなゲーム元の世界では年齢的に出来なかった事だ。オレはこのゲームをやりたくて仕方がなかった。
「え〜、飲み比べ?」
「何だ、嫌なのか?」
「やってもいいけどどう考えても酒が一番強いお前が有利じゃねぇか」
確かに宏太の言う通り、一番強いのはオレだ。瑠璃とリリスに至っては普段はあまり酒を飲まないし始めから勝負など決まっているも同然だった。
「ならハンデをやろう」
「ハンデ?」
「ああ、俺一人対お前ら四人でやってもいいぞ、それから勿論毒無効は発動しないようにしておく」
「言ったわね」
オレがいくら酒が強くても一人で四人を相手にできないと思った瑠璃達はその提案に賛同した。更にはもしオレが負けたら金貨二枚を全員に支払うという事も約束した。
飲み比べが始まって既に数十分が経っていた。瑠璃とリリスが二杯、宏太が四杯、来綺が五杯、そしてオレは既に八杯も飲んでいた。
「リュウガのペースも速いけど私達の方がまだリードしている」
「リリスの言う通りそっちの方が五杯程多いが俺はまだまだ余裕だぜ、でもそっちは既に限界に近い奴がいるみたいだけど?」
オレの言う通り、来綺が既に限界を向かえていた。途中までは物凄いペースで殆どオレと変わらないスピードだったが四杯目から急にペースが落ち始めた。
「俺はまだいけるぞ」
「あんまり無理すんなよ来綺」
「いや、俺は潰れるまで飲むぞ、宏太」
来綺はかなり酔っているがそれでもまだやるようだった。宏太の言う通り無理はしない方がいいのだろうが金貨がかかっているのだからやめられない。
オレ達の冒険者の報酬はオレが四割で他の四人が残りの六割を分けるという事になっている。これは金に余裕が出来た今回からだ。勿論その分、家の家具やら皆んなで食事を取る時は基本オレが支払う事になっている。
だがその分を差し引いてもオレの報酬が皆んなよりも多い事には変わりない。それでも全員文句を言う事はない。何故ならオレがパーティ内で一番貢献度が高いからだ。
「そういえばリュウガ、あのクレアって人のステータスってどのくらいだったんだ?」
「それ……私も……聞きたかった」
突如、宏太とリリスがクレアの事について聞いて来た。宏太はまだ大丈夫そうだったがリリスはかなり酔いが回って来たようだ。
「リリス、大丈夫か?」
「大丈夫……それでどうだったの?」
「あの人のステータスは分からなかった」
「分からなかった?」
そう、クレアのステータスは分からなかった。ただオレの推測では全てのステータスが八千前後、レベルは軽く百は超えている。
(少しでも近づく為にあれを発動させるか?)
この推測が正しければ全てのステータスがオレの倍以上、今のままでは勝ち目がないだろう。トーナメントは一週間後、オレは加護を発動させるか悩んでいた。
それからまた一時間が経った。現在、リリスが四杯で潰れ来綺が七杯で潰れていた。残っているのは三人で瑠璃は六杯目、宏太は七杯目、オレは二十三杯目を飲んでいた。
「リュウガ……そろそろ……きつくなって来たんじゃない?」
「そうだ……もう……やめといた方がいいんじゃないか?」
「馬鹿いえ……俺はまだいけるそういう瑠璃と宏太もきつそうだぞ」
三人ともかなり酔っていた。特に一番やばそうなのはオレだった。ここまで飲んだのは始めてで今にも潰れそうな顔をしていた。
しかしそれは瑠璃と宏太も同じでかなりきつそうな顔をしていた。特に瑠璃は普段はあまり酒を飲まないのに六杯目に突入していてだいぶ無理をしているように見えた。
「わ〜ってないわね……私はまだ大丈……」
六杯目を飲み終わった所でついに瑠璃も潰れてしまった。勝負はまだ一杯差で宏太達がリードしている。
「後は俺だけかだが……負ける訳にはいかない」
そういって宏太は七杯目を飲み終えた。そして次の八杯目にいこうと酒を取りオレの方に顔を向けるとそこには……潰れているオレの姿があった。
「あ〜、もう駄目だ……俺の負けだ」
「……よかった……勝……」
さすがのオレも二十杯以上も飲んで限界だった。その姿を見て安心したのか宏太も酔い潰れた。
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そして現在に至る。全員が頭を抱えていたのはオレが言い出したゲームによって飲み過ぎたからだ。
「まあいいだろうが、金貨はちゃんと払っただろ?」
オレは約束していた金貨二枚を全員に払った。オレとしては痛い出費だったが約束を破る事などできない。
本来オレの見立てでは二十二杯飲めれば勝てる見込みだった。しかし予想が外れ特に瑠璃が思っていたよりも多く飲んでしまった事から負けに至った。
「それよりも早く頭痛を治してよ」
「そうだぜ、お前ならこれくらい朝飯前だろ?」
「分かってる、今起きた所なんだからそんな急かすなよ」
オレは魔法によって自分の頭痛を先に治してから皆んなの頭痛を治した。これによって皆んなすっかり元気になった。
「さてと俺はこれからギルドに向かうがお前らはどうする?今日は依頼が目的じゃないから無理についてこいとは言わないが」
オレが聞くとリリスだけ着いて来るといい三人は用があるようだったので別行動となった。
数十分後、オレとリリスは家を出てギルドに向けて歩き出した。
「考えてみればリリスと二人きりで出かけるのも久しぶりだな」
「そう言えばそうね」
リリスと二人きりになるのは初めてのデートの日以来、オレはリリスの手を取り前へと足を進めた。




