最後の層
「さてと、久しぶりの骨のありそうな敵だ。少しは楽しませてくれるんだろうな?」
オレは敵である蒼龍と向かい合っていた。自分の何十倍も大きい相手を前にしてもなおその表情には余裕があった。
「グォォォォォォォォオ!」
敵はオレを視界に入れるなりすぐに先程と同じブレスを放った。おそらく本能でこの人間は危険だ、と判断したのだろう。
そのブレスはそのままオレに直撃した。周りは煙で覆われていて何も見えない状態となっていた。
「リュウガ!」
リリスは叫んだ。しかしほんの数秒後、煙の中から何やら人の姿らしきものが姿を現した。
「ふぅ〜、俺がこの程度でやられると思ったか?」
オレは無事だった。しかも全くといっていい程ダメージが見受けられなかった。バリアを張った訳でも無ければ避けた訳でも無い、なのになぜあれ程の攻撃を正面から喰らって無傷なのか四人は疑問しかなかった。
(しかし上手くいってよかったぜ!俺の新しい力、エネルギー吸収)
オレは攻撃が自分に当たる直前に新たな能力を使用していたのだ。このエネルギー吸収は一定以下のエネルギーならばその受けた攻撃を自分の力にする事の出来る能力だ。
だが吸収出来ないものは当然あって一定以上のエネルギーは吸収出来なくなっている。しかし今のオレならば蒼龍ぐらいの攻撃ならば全て吸収する事が可能だろう。
「さて、もう少し楽しめると思ったが期待外れだ。一撃で沈めてやるから覚悟しろ!」
オレは思ったよりも今回の敵が強くなくて少し落ち込んでしまった。しかし敵は決して弱くは無くオレが強くなり過ぎていたのだ。
そして次の瞬間、オレは身体の前に魔法陣を展開させた。その魔法陣からはとてつもない程の魔力が込められていた。
「消えてなくなれ!”炎帝”」
魔法陣からは上級魔法を優に超える最上級魔法が放たれた。この魔法は以前オレが中級魔族と戦った時に使っていた魔法だ。
あの時は発動までにかなりの時間を使っていたが、今ではそれを改良して短時間で発動出来るようにしていた。
「ヴォォォォォォォォオ!」
敵も黙ってやられる訳にはいかず先程の倍はありそうな炎を口から放った。だがそんな攻撃が効くはずも無く一瞬にしてオレの魔法に掻き消された。
「終わりだ!」
次の瞬間、魔法は敵に見事に直撃した。敵は大きな悲鳴を上げ地に倒れた。この魔法は中級魔族でさえ耐えられなかったものだ。A級モンスターごときでは耐えられるはずも無く息を途絶えた。
戦闘が終わり四人はオレの下に掛け寄ってきた。
「流石リュウガ!」
「あの程度のモンスター、お前なら朝飯前という事か」
「強くなったつもりだったがリュウガに比べるとまだまだという事が改めて分かったぜ!」
「私達もまだまだね」
オレの圧倒的な実力を改めて目の当たりにしてリリス、宏太、来綺、瑠璃は賞賛の声と自分達もまだまだ強くならないといけないと言葉にした。
「さて、この層はこれで終わりだ、いくぞ」
オレ達は奥へと進んでいった。部屋の奥までいくと先程までは完全に閉じていた扉が開いていた。おそらくこの扉はボスを倒した事によって開いたのだろう。
そしてオレ達は扉を開け階段を下っていった。しばらく下っていくと再び扉が見えた。その扉を開けるとそこはやはり休憩所となっていた。
時刻はまだ昼前、朝の時点では九層の攻略に相当時間が掛かると踏まえ今日は九層だけにしておこうと考えていたがまだまだ時間もある事から今日中に終わらせる事にした。
とはいえ、先程の戦闘の疲れも残っている事から昼飯を食べながら二時間程はこの休憩所で休むつもりだ。
あれから二時間、全員昼飯も食べ終わり体力も十分に回復した事からそろそろ最後の十層に向かおうとオレが声を上げた。
「おし!じゃあお前らいくぞ!」
あれから数分後、五人は最後の層である十層に到着していた。今いる部屋は九層と同じようなボス部屋の前にある半径三メートル程の小さな待合室のような部屋だった。
「さあ、最後だ!気合い入れろよ!」
「ついに最後か」
「一体どんな恐ろしいモンスターが出てくるのはかしら?」
「少なくとも九層のボスよりは強いだろうな」
「絶対に勝とう!皆んな」
オレ達はそれぞれ思い思いの言葉を発してボスが待つ部屋へと入っていった。
どんな強大なモンスターが現れるのかとボス部屋に入った瞬間、全員目を疑うような光景を目の当たりにした。
「なっ!何だ!これは!」
オレ達が目にしたのは地に大量の血を流しながら倒れている巨大なモンスターだった。大きさでいえば九層で戦った蒼龍よりも大きかった。
数秒間、全員が固まったまま倒れているモンスターを眺めていると部屋の奥から何やら声が聞こえてきた。
「ようやく来たか!創造神よ!」
「誰だ!」
オレが叫んだとほぼ同時に暗かった部屋に灯りが付き始め、声の主が姿を現した。
「馬鹿な!」
「嘘だろ!」
「おいおい冗談じゃ無いぞ!」
その姿を見た瞬間、全員の顔から汗が滲み出てきた。それも無理のない事だろう。声の主は明らかに人間では無かった。しかしオレ達はつい最近見た事のある種族だった。
そう、記憶にも新しい魔族だった。魔族の強さは五人共目の当たりにしている。中でも直接戦ったオレはその強さを直に味わっている事から戦闘が始まっていないのに警戒していた。敵から伝わってくる威圧感から察するにこの魔族はこの前の魔族よりも強いと考えていいだろう。
「何故、俺が創造神だと知っている?」
「それは……あの方々に貴様を抹殺して来いと命じられたからだ!」
「あの方だと?確か前に倒した魔族もそんな事を言っていたな」
どうやらこの魔族は上の命令によってオレを殺しにきたらしい。そして話しから察するにその上の者はこの前のオレと魔族の戦いを見ておりこれは早めに手を打っておかないと思い刺客を送ったのだろう。
「それと……このモンスターはお前がやったのか?」
「ああ、私とお前の戦いの邪魔になるからな。大した事のない雑魚だったよ」
「そうか」
オレの鑑定によるとこの倒れている巨大なモンスターは九層のボスモンスターよりもかなり高いステータスを誇っていた。それを楽々倒すという事はこの魔族は前の魔族よりも格上と見て間違い無いだろう。
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上級魔族 レベル 99
種族 魔族
攻撃力 3390
体力 3450
俊敏性 3510
魔力 3690
魔法耐性 3160
物理耐性 3682
能力:魔術・剣術・擬態・火水闇属性適性・光属性耐性・魔力感知・気配感知・飛行・透過・魔剣作成・俊敏性向上・攻撃力強化・鑑定・鑑定無効・自動治癒・状態異常無効・言語理解
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そのステータスは圧倒的だった。そしてこの魔族は前の魔族よりも上の上級魔族という事が分かった。
全てのステータスが三千を軽く超えており今まで相対してきた者の中でも断トツだった。オレも強くなり全てのステータスが三千を超えていたが魔族にはやや劣っていた。
「さあて、地獄の殺戮ショーを始めようか」
「はっ!上等じゃねぇか!おい!お前ら援護だけ頼む!」
オレが四人に指示を出すと全員迷いなくそれに従った。どうやら四人も自分と相手の力量差を瞬時に把握し、自分達ではオレの足手纏いにしかならないと判断したのだろう。
そしてオレは敵に向かって全力で走った。今度はあんな悲しい思いはさせない、そう心に誓って。




