九層のボスモンスター
翌日になり現在オレ達は九層の扉の前まで来ていた。そしてその扉を開けると目に入ってきたのは今までの層とはまるで違う光景だった。
「何だ?ここは?」
「てっきりここも一本道だと思ったのだけれど」
今まで通り行くなら瑠璃の言っているようにこの九層は一本道の層となってくるはずだ。だが実際は全く違っていた。
そこは半径三メートル程の小さな待合室のような場所となっていた。そして入り口の向かい側の扉には『NEXTBOSS』と書かれていた。
「……成程な、つまりはこの九層はボスを倒せばクリアとなるようだな」
オレの言った通りこの層は今までとは違いボスを倒せば次の層への道が現れる仕組みとなっている。
「それじゃあ、行くとするか?」
「ええ、行きましょう」
「ボスモンスター……いったいどんなのがいるんだろう」
「ともかく油断せずに行くぞ」
「ここが終わればあと一層だ」
全員がそれぞれ言葉を発しボスが待つ部屋へと入って行った。中に入ると巨大なモンスターが一体姿を現した。
「ヴォォォォォォォォオ!」
現れたモンスターはドラゴンだった。その大きさは今まで戦ってきたモンスターとは比べ物にならない程大きかった。
「ドラゴンだと!」
「何て大きさなの!」
オレ達は初めて目にしたドラゴンの大きさに驚いていた。しかしこれだけデカくともドラゴンの中ではまだ小型サイズらしい。
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蒼龍 レベル 73
種族 龍族
攻撃力 1400
体力 1271
俊敏性 1137
魔力 1555
魔法耐性 1447
物理耐性 1520
能力:風火属性耐性・火水属性適性・氷属性適性・攻撃力強化・気配感知・魔力感知・自動治癒・状態異常無効
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そのステータスは今まで戦ってきた敵の中でもトップクラスといえる程に高かった。ランクはAとなっているがAの中でもかなり上位の存在でSランクでもおかしくないくらいだった。
「これは正直に言うとお前達の敵う相手じゃない……それでもやるか?」
オレは四人に問いかけたが全員が無言のままだった。無理もない、昨日戦ったAランクモンスターでさえ切り札を使ってようやく倒せた相手だったのだ、それを遥かに超えている敵が相手では手元が震えても仕方のない事だ。
「……俺はやりたい」
「来綺……」
「俺もだ!」
「少し怖いけどリュウガが倒した魔族程ではないしね」
「私も全力で支援する!」
少し間が空いて覚悟が決まったのか全員やる気のようだった。
「……分かった。だが少しでも危険と感じたら下がれ……いいな!」
オレは四人の意思を尊重した。本来ならこのクラスの敵が出てきた場合はオレ一人で対処するつもりでいた。
だがここに来るまでで四人は相当成長を見せていた。四人だけで勝つのは無理だとしても自分が全力で支援すれば勝てるのではないかとオレは考えを改めた。
経験値は基本、戦闘に参加したものだけに与えられるのだがダンジョン内だけは別で戦闘に参加していなくともパーティメンバーであれば貰えるのだ。だからオレは今回に関しては自分が戦い仲間が経験値を貰えるのならそれでいいと思っていた。
「それじゃあ行くぞ!」
来綺、宏太は全力で敵に向かって走り出した。瑠璃はその場に残って弓を出し構えの体勢に入った。リリスとオレは支援を始めた。
来綺は構えた剣に魔力を込めて敵に振りかざした。
「喰らえ!”光幻一線”」
その攻撃は敵に直撃した、だがしかしダメージは全く入っていなかったようだ。
「なっ!何だと!」
次の瞬間敵は来綺のいる方に顔を向け、口から青白い炎を放った。避けている暇も無く持っていた剣で何とか防ごうと構えを取った。だか来綺が目を開けると目の前には防御魔法が貼られていた。
「ふ〜、間一髪だったな」
「リュウガ……」
後もう少しで直撃したであろう攻撃をリュウガが間一髪の所で防いでいたのだった。
他の三人も来綺の無事を確認しそっと胸を撫で下ろした。
「下がれ!来綺!」
「宏太!」
「今度はこれでも喰らい上がれ!”獄炎”」
来綺はすぐさま敵の近くから離れた。そして宏太は最大限まで魔力を高め火属性上級魔法を放った。だが敵もただ見ているだけとはいかず先程と同じく口から再び青白い炎を放った。
そして宏太の放った魔法と敵が放った炎が直撃した。
「くっそ!」
「ヴォォォォォォォォオ!」
激しいぶつかり合いとなっていたが数秒後、宏太の方が徐々に押され始めた。このままでは自分に直撃してしまうと考えた宏太は魔法の発動をやめ、素早く右に避けた。
あと少しでも判断が遅かったら敵の放った炎に直撃して
全身が燃え尽きていただろう。
「ちっ!瑠璃!あれをやるぞ!」
「ええ、分かったわ!……来綺!少し離れてて!」
「おう!」
瑠璃の言葉を聞いて来綺はすぐに敵から離れた。おそらく昨日見せた合体魔法を使う気なのだろう。
二人は魔力を込め始めたが前とは違って時間を掛けずに数秒で発動の準備が完了していた。一度成功した事によって要領を掴んでいたのだろう。
「いくぞ!」
「ええ!」
瑠璃が魔力を込めた矢を放ち、宏太がそこに火属性上級魔法の”蛇炎翔”を掛け合わせた。
「”蛇炎翔」
「矢射”」
放たれた合体魔法からは炎に包まれた蛇が敵を威嚇しているように見えた。そして敵に一直線に向かっていった。
敵も再び口から攻撃を放とうとしたが向かってくる攻撃のスピードが速すぎて放つ前に身体に直撃し大きな音を上げ、辺りは一面煙に覆われていた。
「おし!完全に直撃したぞ!」
「決まったわね!」
宏太と瑠璃は攻撃が敵に命中し勝利を確信していた。だが煙の中から何やら動く巨大な影があった。
「グォォォォォォォォオ!」
「!……おいおい、嘘だろ!」
「あれでもまだ生きているの!?」
相当効いたのか敵は怒りの咆哮を上げていた。そしてすぐさま次の攻撃の準備し始めた。
「やばい!早く逃げるぞ!」
攻撃が来ると判断し、宏太と瑠璃は全力で敵の攻撃範囲から逃げていた。しかしその攻撃範囲を出る前に敵の攻撃準備が完了し口から炎のブレスが放たれた。
「くっそ!……やばい!間に合わない!」
瑠璃も宏太も全力で走っていた。しかし刻一刻と後ろから敵の炎が迫ってきていた。二人共もう駄目だと諦め後ろを振り向くとそこに来綺が剣を振り上げていた。
「”炎斬り”」
来綺がそう叫び、剣を振り下ろした。すると敵の炎が切れていたのだ。
「なっ!!……まさか!」
オレはその光景を見て驚愕の表情を浮かべた。炎を斬るなんて並大抵の努力では絶対出来ない事だ。現にオレでさえ創造神の加護の発動前は出来なかった事だ。今はやろうと思えば出来るだろうがそれでも簡単な事ではない。
こんな芸当が出来るのはこの世界でも十人、いや数人しかいないと言えるレベルだろう。それをやり遂げてしまった来綺は紛れもなく世界トップレベルの剣士といえる。
「助かったぜ!来綺!」
「助かったわ!」
「ああ、間に合ってよかった」
二人はそれぞれ来綺に礼をした。もし来綺が間に合っていなかったら二人は全身炎で燃え尽きていただろう。その場合はオレかリリスが助けていただろうが。
「しかしこいつは俺達には荷が重たすぎるな」
「ああ、俺達では勝てないって十分理解できたぜ」
「そういう事だからリュウガ、後はお願い」
「ああ、お前らここまでよくやった!後は任せろ!」
三人はこのモンスターには自分達では勝てないと判断し、後の事をオレに託した。
オレも元からそのつもりだったらしく三人を後ろに下がらせた。久しぶりの骨のありそうな相手を前にしてオレは顔に笑みを浮かべていた。




