合体魔法
「”氷菓聖天”」
オレの支援によって三人は何とかAランクモンスターと互角にやりあえる程になっていた。
強化されたのは攻撃力だけではなく俊敏性、魔力、耐久性も同じく強化されていた。そのおかげで三人は今まで以上に速い動き、重い攻撃を使えていた。
オレとリリスが支援を行なっている。本来ならリリスが殆どの支援を行なうのだがAランクモンスターが相手という事もあってリリスは回復の方を主に行なっていた。
「くっ!やっぱりAランクモンスターは今までのどんな敵よりも強いな!」
「ちょっとでも気を抜けば終わりね」
現在、来綺のみ前衛で戦闘を行ない宏太と瑠璃は後衛の方で魔法による援護を行なっていた。
来綺のスピードはオレの支援により格段に速くなっていて敵も攻撃を当てられないでいた。来綺は攻撃を当て続けていたがあまりダメージが入ってるようには見えなかった。
「来綺!あんま無理すんなよ!」
「分かっている!リュウガ!」
敵はゴーレム故にあまり物理攻撃は効いていないようだった。
「瑠璃、あれをやるぞ!」
「あれ……って、まだそれは未完成でしょ!」
「大丈夫、俺達二人なら出来る!」
「分かったわ、やってみましょう!」
宏太と瑠璃は何かやるようだった。そして二人は隣合わせになってそれぞれ魔力を込め始めた。
「来綺!三十秒だけ時間を稼いでくれ!」
「分かった!」
宏太は来綺に時間を稼ぐように伝えた。しかしAランクモンスターの相手を一人でするのは流石に三十秒だけとはいえ危険だ。そこでオレは来綺に掛けている支援魔法を更に強くした。
「何かやるつもりだな?あいつら」
「そうみたい」
オレとリリスも二人が何かをやる事に気づいたようだ。そして数十秒後、魔法発動の準備が完了したようだった。
「来綺!離れろ!」
宏太の言葉に、来綺はすぐさま敵から距離を取った。そして次の瞬間、瑠璃は強力な魔力を込めた矢を放った。
「行け!」
「頼む!”蛇炎翔”」
放たれた矢に宏太は火属性上級魔法を掛け合わせた。本来の宏太の魔力値では上級魔法を使えば魔力が半分以上持っていかれてしまう。しかし今はオレによって魔力が強化されておりそこまでの心配はいらなかった。
そして放った魔法が上手く矢と重なり合った事によりさらに強力な魔法の矢が完成した。矢からはまるで炎に包まれた巨大な蛇が威嚇しているように見えた。
「行け!」
「これが……私達の」
「俺達の……最強の」
「合体魔法……」
「”蛇炎翔」
「矢射”」
そしてそのまま二人の強力な攻撃は敵に向かっていき見事に直撃した。いくらゴーレムの上位種といえどもここまで強力な攻撃をまともに喰らって立っていられる訳もなく地に倒れた。
しかしこの攻撃はまだ終わってはいなかった。先程蛇のように見えたものが敵の身体を徐々に削っていたのだ。それから数分後、敵は完全に動かなくなっており勝負が着いた。
「終わった……な」
「そうね」
「俺はただ時間稼ぎしてただけの気がするんだが」
宏太と瑠璃は先程の攻撃で殆どの魔力を使いきってしまっていて腰を下ろして疲れきっていた。来綺も三十秒だけの時間稼ぎとはいえ相手はAランクモンスター、全力を出し切って疲れている様子だった。
「よく頑張ったなお前ら」
「リュウガ……さっきの攻撃はどうだった?」
「正直驚いた。まさか合体魔法を使えたとはな」
オレは二人の合体魔法を見て感心していた。威力、スピードのどちらもオレの獄炎と比較しても劣っていなかった。
「来綺もよく一人で三十秒も持ち堪えられたな」
「いや、リュウガの支援がなければ無理だった」
「それでもだ」
来綺がやった事は支援があったとはいえ本当に凄い事なのだ。Aランクモンスターは本来Cランク冒険者であれば何十人いても倒せない程の相手だ。Bランク冒険者が最低十人はいないと倒せないのだ。
「さすがに疲れたわ。リリス、回復をお願い出来る?」
「うん、分かった」
それからリリスは三人を順番に回復していった。リリスの回復により万全とまではいかずとも魔力が戻った三人は再び立ち上がった。
そしてまたこのただひたすらに長い一本道を歩いて行った。この七層は最初の一層と比べると断然広くなっている。それも考えてリュウガ達は少しペースを上げた。
あれから歩く事数時間、ペースを上げた事もあって思っていたよりも早く七層の終わりに辿り着いた。
ここまでの間でAランクモンスターは最初の一体のみで後は全てBランクモンスターとなっていた。
階段を降り、またこれまでと同様に休憩所となっていた。時刻はまだ午後四時、今日はここで終わりにするという手もあったが少し休憩をしてから先に進む事にした。
八層に着くとやはりそこは七層と同じく凄まじい暑さとなっていた。しかし全員オレの体温調節によって暑さを凌げていた。
「やっぱり、ここも迷路になってるわね」
「そのようだな。進みながら取り敢えず魔鉱石を集めるか!」
この層では依頼である魔鉱石を十個集めなくてはならない。その魔鉱石は赤色で大きさは様々なようだ。
オレが左手の法則を使い先頭をいき、他の四人が魔鉱石が埋まっていないか慎重に見て進んでいった。
六層のように隠し扉があるかもしれなく左手の法則は無意味になるかもしれないが魔鉱石を十個集めるまではこのやり方で進んでいくようだ。
「よし!これで十個目だな!」
「ええ、それにしてもかなり苦労したわね」
来綺が手にした魔鉱石で十個目となった。最初は何個かが同じ場所にあるかと踏んでいたのだが実際は一個一個が全く別の場所に埋まっていたのだ。また壁ではなく天井に埋まっていたり地面に埋まってたりしてるものもあった。
この八層ではここまで敵は一体も出てきていなかった。七層では一体だがAランクモンスターが出てきていたのでここでも最低一体は出てくると思ったのだがAランク所か他のモンスターも出てこなかった。
「それじゃあ依頼も完了した事だし本格的にこの層を終わらせるか」
次の瞬間、オレはこの八層全体の構造を把握する為に巨大地図を発動した。魔力を大量に消費する事もあって見られた時間は数秒だけだったがその数秒で全てを把握した。
「……ふっ、俺達は運がいいな」
「どうしたの?リュウガ、もしかしてここも隠し扉があったの?」
「ああリリス、まさにその通りだ」
「じゃあゴールまでの道も?」
「当然分かった。隠し扉があるのは……ここだ!」
オラは隠し扉がある方向に指を指した。その次の瞬間四人は「え!」と同時に声を上げた。何故ならその場所はオレ達が今いる場所のすぐ左の壁だったからだ。
そしてすぐにその壁を強く押した。すると六層の時と同じく隠されていた扉が目の前に現れた。
「今回も外側の壁全てが隠し扉になってたのか?」
「いや、今回はこの一箇所だけだった」
「まじかよ!」
「こんな偶然があるとはね」
現れた扉を開け、オレ達は階段を降って行った。今回はかなり呆気なく終わり少し物足りなさを感じだがこれで八層の攻略が終わり、五分の四が終わった事となった。
休憩所に着き時刻は午後六時、流石に今日はこれ以上は進めないと判断しこの休憩所にて一泊する事とした。
「明日は九層だけの攻略にして、明後日に十層の攻略にしようと思う」
「いいんじゃないかしら」
「まあ、それが妥当な判断だな」
「私もそれがいいと思う」
「お前がそう言うならそれでいいだろう」
オレの提案に瑠璃、宏太、リリス、来綺は賛成のようだった。確かに九層からはAランクモンスターがもっと出てくるようになるはずだ。そうなれば体力が持たなくなってしまうだろう。それ故に九層と十層はそれぞれ一日開けての攻略が無難といえる。
それから夕食を食べて少し休憩をしてから五人共眠りについた。明日も朝から万全の状態で戦闘を行なえるように。




