左手の法則
あれからしばらく歩いていると数匹の小型のモンスターが出て来た。
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金属蟻 レベル 33
種族 蟻
攻撃力 220
体力 366
俊敏性 440
魔力 467
魔法耐性 379
物理耐性 459
能力:火属性耐性・気配感知・毒無効・雷無効
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ステータスは大したことは無かったが数は多い。一匹一匹を対処するのは楽勝だろうが敵は見たところ五匹もいる。油断すればやられるのはこちらになってしまうだろう。
「じゃあ来綺と宏太はもう一回やってるし次は私がいくわ」
「ああ、だが油断するなよ。敵は五匹いるんだからな」
「分かってるわよ」
オレは瑠璃に注意した。敵の数が多い分一匹倒しても残りの敵に不意を突かれてしまえば台無しになってしまう。それは瑠璃も避けたいところだ。
瑠璃は弓を用意して皆んなよりも数歩前に足を進めた。
「喰らいなさい!」
そう叫ぶと同時に複数の矢が敵に向けて放たれた。矢には当然魔力が込められていて威力も申し分無かった。その矢は三匹には命中し一撃で即死になったが残りの二匹は間一髪の所で避けていた。
動くスピードが速く、全てを捉える事は出来なかったようだ。
「へぇ〜、瑠璃も相当成長したな」
「ああ、俺らは全員昨日一日だけでかなり成長したぞ」
「一つ聞くが何でそんな短時間でそこまで成長した?……まさかあれを得たのか?」
「ああ、そのまさかさ」
宏太は答えた。これまでもオレ程ではないが三人の成長速度は平均を遥かに上回っていた。だが今回の速度はそれすらも軽く超えていた。
三人はオレと同じく高速成長の能力を会得していたのだった。この高速成長は基本通常の1.3倍の速さで成長する事が可能となる。
オレは最初から1.3倍の速度で成長していたがそれが今となっては1.4倍の速度で成長するまでになっている。
「じゃあ、次で終わりにしてあげるわ」
オレ達は話すのをやめて瑠璃の戦闘に目を向けた。すると勝負がそろそろ決まりそうになっていた。
「”強風矢”」
残っていた二匹に向かって強風の魔法を纏った矢が飛んでいった。二匹共その矢を間一髪の所で避けたが地面に刺さった矢が更に強い風を発生させ二匹の敵を宙へと吹き飛ばした。
吹き飛ばされた敵は地面に叩き落とされると大きな悲鳴を上げ動けないでいた。おそらく全身の骨が折れてしまったのだろう。
瑠璃は留めにもう一度敵に向けて矢を放った。今度は完璧に命中して敵は完全に倒された。
「ふ〜、終わったわね」
戦闘を終えた瑠璃の元に四人は駆け寄った。
「瑠璃、中々良かったぞ!今の戦闘」
「そう、ありがとう」
「お疲れ瑠璃」
オレと宏太は瑠璃にそれぞれ言葉を掛けた。それから再び第二層に向かって足を進め始めた。
その後も何度か敵に遭遇するが第一層のモンスターはどれもCランクなので来綺、宏太、瑠璃がそれぞれ交代で戦闘を行なった。ここでは誰も怪我をする程の戦闘はしていないのでリリスの出番は無かった。
ダンジョンに入ってから既に一時間以上が経っている。いつまで一層が続くのかと思ったその時、数十メートル先に下へと続く階段が見えた。
「おい!あれ二層に続く階段じゃないか?」
「ああ、間違い無い」
「やっと一層が終わるのね」
「第二層では私も戦闘に参加できるといいけど……」
「ああ、だが油断するなよお前ら。二層は一層の敵よりも手強くなってくるからな」
二層への階段が見え、来綺、宏太、瑠璃、リリスはそれぞれ喜びの声を上げていた。
しかしその一方でオレは四人に対して注意を促していた。一層ではCランクのモンスターしか出て来なかったが二層ではそれ以上のモンスターも出てくるかも知れない。Bランクのモンスターともなってくればリュウガはともかく他の皆んなは油断すれば足をすくわれるかもしれないのだ。
「それじゃあ行くぞ、気を引き締めろよ」
オレの言葉に四人は頷いた。階段はかなり長かったがしばらくすると終わりが見えて来た。
階段を降りた目の前には大きな扉があった。この扉を開ければ第二層に突入する。オレは四人に「準備はいいか?」と聞くと全員頷き扉を開けた。
「ほ〜、これは……」
第二層は迷路のようになっていて道が何本もあった。こんなに道があってはどれが正解の道なのかも分からない。
「まじかよ!」
「これ、一層ぐらいの広さだったら何時間掛かるか分からないぞ!」
「どうするのよ、これ……」
「リュウガ、何か策はあるの?」
「安心しろこの程度俺には何の問題も無い」
宏太、来綺、瑠璃、リリスはそれぞれ二層が丸々迷路になっているのを見て驚愕していた。そんな中オレは一人平然とした表情をしていた。
「何?まさか壁をぶち壊して進もうってんじゃ無いだろうな」
「いや、そんな事をすればいずれ魔力が切れて力尽きる」
「じゃあどうするんだよ?」
来綺は尋ねた。確かにこのくらいの厚さの壁ならばオレは軽く壊して進む事が可能となってくる。しかしこの第二層が第一層と同じくらいの広さであるならば魔力が持たない。
「いいか、よく聞け迷路には完全な攻略方法がある」
「何?その攻略法って?」
「左手の法則だ」
「左手の法則?」
「ああ」
リリスに聞かれオレは説明を始めた。左手の法則とは迷路の中で壁に左手を当てたまま進み続ければゴールに辿り着けるというもの。遠回りになる事の方が多いが確実にゴールに辿り着けるという利点がある。これは右手でも同じ事が出来る。
しかし例外があり途中に落とし穴があったりした場合はこの法則が使えなくなる。しかしオレ達ならば落とし穴ぐらいならば容易く飛び越えられる。それ故にこの左手の法則は有効なのだ。
「なるほど、流石リュウガね」
「このくらいは常識だ。お前らも覚えておけよ、後々役に立つかもしれない時がくる可能性だってあるんだからな」
それからオレは先頭に立ち左手を壁に当てたまま進んで行った。オレが先頭に立つ理由は単純、罠などがあった場合一番最初に気付けるのはオレだからだ。
しばらく歩いていると目の前に巨大な落とし穴が現れた。下に落ちたら第三層への近道となる可能性もあったが確証が無い為飛び越える事にした。
「さて、これを飛び越えるがお前らはこれを飛び越えられるか?」
オレは聞くが四人は無言だった。それもそのはずこの落とし穴はおそらく二十メートル以上の大きさだった。
「流石にきついか?」
「多分……ていうか絶対無理だと思う」
「なら仕方ないな、これはあんまり使いたく無かったんだが」
そう言うとオレは落とし穴のギリギリまで進み前方を見た。数秒後数歩下がり手を前に突き出し魔力を込め「ゲート」と唱えた。すると目の前に魔力で出来たゲートが現れた。
「早く入ってくれ、この魔法はまだ慣れてないから持続時間が短いんだ」
四人は全員驚いた様子だったがオレに急がされてゲートの中へと入っていった。ゲートを潜るとそこは落とし穴の先へと繋がっていた。
「これは……まさか転移魔法!?」
「いや来綺、転移魔法とは少し違う。この魔法は場所と場所を繋げてるんだ」
ちなみにこの魔法は一度見た場所にしか行き着く事は出来ない。なので先程は穴の先を見ておく必要があったのだ。
本来は転移魔法の方が楽なのだがあれは制御が難しく中々上手くいかないのだ。失敗すれば変な所に転移してしまう恐れがある事から使わなかった。
「流石ねリュウガ!」
「まあ、この魔法はまだ慣れないから連続では使えないがな」
「それでも十分凄い」
「そうか?」
瑠璃、それからリリスにもそう言われオレは少しばかり顔が赤くなった。恋人に褒められて嬉しかったのだろう。
それからオレ達はただひたすらに左手の法則を使ってこの巨大な迷路を進んでいった。
この二層には一層のようにモンスターは全くいなくただの巨大な迷路という感じだった。途中には落とし穴や罠がいくつか現れたがオレのゲートを用いて問題なく進んだ。
歩き進める事二時間、ようやく迷路の終わりが見え下へと続く階段が現れた。
「ようやく二層も終わりのようだな」
「ああ、次は三層か」
「ええ、いきましょう」
来綺、宏太、瑠璃は先に階段を下って行った。それに続いてオレとリリスも階段を下った。




