告白
あれからしばらく経ち時刻は夕方の五時。既に木材と鉄は買い終えてオレ達は高台にいた。
「綺麗な夕日だねリュウガ」
「ああ、本当に綺麗だ」
オレ達は手を繋いだまま綺麗な夕日を眺めていた。今日のデートをオレ達は楽しみにしていただけあってその表情は満足そうだった。
しかしもう日が沈み始め辺りが暗くなる時間が迫って来ている。楽しかったデートも終わりに近づいていた。
(……言わないと。今ここで)
確かにあの魔族との戦いの最中、オレはリリスに自分の想いを伝えていた。だがあれは死ぬ直前に言った言葉であって正直あれが告白になったかと言うと微妙な所だった。
それもあって今日この日にちゃんと告白しようと決めていたのだ。
「それじゃあ、そろそろ暗くなって来る頃だし帰ろうか」
「……ちょっと待ってくれリリス」
「どうしたの?」
リリスが宿に帰ろうと足を動かし始めたがオレがそれを止めた。その声は少しばかり緊張しているようにも聞こえた。
実はこの告白のタイミングは宏太から教えて貰っていた事でデートの最後にするのがいい、と聞きこの瞬間に決めていたのだ。
「話しがある」
「?話って?」
オレはいつにもまして真剣な表情をしていた。
辺りに人は居なく告白するには絶好の機会だった。しかし改めて告白するとなるとどう言えばいいのか分からなくなって来た。
オレとしては生まれて初めて真剣に好きになった相手に告白するのだから当然悩む。いや、これはオレだけではないだろう。世の男性の殆どはさぞ告白の言葉に頭を悩ませているのだろう。あの時は正直どのように想いを伝えていたのか死ぬ前の記憶が少しばかり飛んでいたのだ。
女性としてはやはり今のように夕日が綺麗でロマンチックな雰囲気でされた方が嬉しいのだろうか、とかどういう気持ちで伝えたらいいのだろうか、まだ出会って二日しか経っていないのにこんなにも早く告白しても大丈夫なのだろか、とか悩んで頭がぐるぐると回るのだ。
そこで宏太が言っていた事を思い出した。
「恋愛に時間は関係ない。本人が告白したいと思った時にすればいい」
次の瞬間オレは悩むのをやめて覚悟を決めた。
「リュウガ?」
中々話し始めないオレにリリスが声を掛けてきた。
「わ、悪い少し考え込んでいた」
声を掛けられぴくりと体が揺れてオレははっと我に返った。どうやら数十秒程立ち竦んでいたらしい。
そして覚悟を決めリリスに想いを伝え始めた。
「リリス。お前と始めて出会ったのはまだ二日前、あの洞窟でだったな」
「うん、あの時は本当に死ぬかと思った。でもリュウガ達が助けてくれた」
オレとリリスが出会ったのは二日前、丁度初の依頼を受けていた帰りの事だった。森を歩いていると大きな悲鳴が聞こえその方向に向かって見るとそこに洞窟があり、リリスがA級モンスターの赤鬼に襲われていたのだった。
「最初はさ、この感情が何なのか分からなかったんだ。初めての事で戸惑っていたんだ」
「リュウガでも分からない事はあるんだ?」
「それはそうさ、今となってはこんな感じだが昔は一時期自暴自棄になった事もあったしな」
「え!それ本当?」
「ああ、正直あの時は全てがどうでも良くなっていたんだ」
オレはリリスに出会うまでは恋はおろか異性との付き合いも瑠璃を除けば殆ど無いに等しかったのだ。
オレに家族は居なかった。中学に上がる頃に両親は交通事故で亡くなっていたのだ。そして兄弟も祖父母すらおらずそれからは両親が残してくれた財産を頼りに一人で暮らしていたのだった。
それ故に来綺や宏太、瑠璃と出会うまでは少しの感情も表に出した事は無かった。何に対しても無関心でまるで感情が無くなったのでは無いかとまで言われていた。
しかし高校入学と同時に良き友と出会った。それが来綺、宏太、瑠璃だ。最初はそっけない態度を取っていたオレも時間が経つにつれて心が開いていきついには感情を取り戻したのだ。
それ程この三人の存在はオレにとって大きかったのだ。
「そんな事が……今のリュウガからは考えられないね」
「確かにな。そう言う点ではあいつらに感謝しているんだ」
「そっかリュウガにとってはあの三人はかけがえのない親友なんだね」
そう、最早あの三人はかけがえのない友であり生きる希望を与えてくれた恩人でもある。もし家族と同じように三人の誰か一人でも欠けて仕舞えばオレは立ち直れなくなってしまうかもしれない。
この世界に来るまではあの三人だけが大切な存在だった。しかしこの世界に来てもう一人増えた。だがそれは三人とはまた違っていた。
「ああ、だがリリス大切なのはあの三人だけじゃなくお前もだ。だがそれは親友ではなくもっと特別な存在だ」
「!……リュウガそれって!?」
「リリス、俺と過ごす時間は楽しいか?」
「うん、リュウガと過ごす時間は他の何よりも楽しく感じる」
リリスは答えた。そしてオレもその気持ちは同じだった。その表情はいつにも増して真剣だった。
そしてリリスはおそらく気付いているだろう。オレがここで何を伝えようとしているのか。昨日、直接あんな事を言われていたら嫌でも気付く。
「リリス……お前の事が好きだ俺と付き合ってくれ」
「うん……私もリュウガの事が好き」
その瞬間、オレ達は近づき抱き合った。これからは友人では無く恋人としての関係が始まる。
これまで女性と付き合った事の無かったオレは始めて恋人が出来て内心、喜んでいた。誰でも恋人が出来れば喜ぶのは当然だろう。
「リリスをこれからも必ず守っていく」
「ありがとう。私はそんな優しいリュウガだから好きになったの」
「それじゃあ帰ろうか」
「帰ったら皆んなどんな反応するんだろうね?」
「どうだろうな、まあ帰ったら分かる事だ」
それからオレ達は夕暮れの中、手を繋いで宿まで帰って行った。帰ってからは来綺、宏太、瑠璃に色々と聞かれたが三人共祝福してくれた。
来綺はこれでの恋人がいないのが自分だけになってしまい少し落ち込んでいたが「俺も絶対にいい相手見つけてやるからな!」と宣言していた。
その夜はオレ達は疲れていたのか部屋に着くなり即眠りに入った。




