昇格
魔族を倒したオレはフィールドを出た。外に出るとすぐにリリスが抱きついてきた。顔は涙で溢れ返っていた。
「リュ……リュウガ……よかった生きてて……本当によかった」
「心配かけたなリリス。お前らも心配かけたな」
オレはリリスの頭をそっと撫でた。その後、すぐに来綺達も駆けつけた。他の三人もリリスと同様に目から涙が溢れていた。
「ったく……心配かけやがって。今回ばかりは本気でどうしようも無いと思ったが」
「そうだぜどこまでも規格外な奴だ。まさか生き返るとはな」
「ねぇ……生き返ったのもそうだけど何でそんなに急に変わったの?強さもそうだけど見た目も……」
来綺、宏太は涙を拭ってオレに言葉を掛けた。心配していただけに声が聞けて安心したのか、落ち着きを取り戻したようだった。
瑠璃も二人と同様だった。またオレの変化に疑問を抱いていた。急激なパワーアップ、それにこの時オレ自身は気づいていなかったのだが見た目もだいぶ変わっていた。
「見た目何の事だ?……それよりもお前ら何か縮んでねぇか?」
「私達じゃ無くてリュウガの背が伸びてるのよ!」
「俺の背が?……!」
瑠璃にそう言われて辺りを見ると自分の目線がいつもより少し高くなっている気がした。実際にその通りで現在の身長は百七十七センチメートルと五センチ程背が伸びていた。これも加護の影響なのだろう。
オレに抱きついていたリリスは落ち着いてきたのか、しばらくすると離れた。顔に溢れていた涙は既に拭き取られていつもの表情に戻っていた。
「というか何でリュウガは生き返ったの?まさか蘇生魔法?」
「いや、蘇生魔法ではない。だがどうやって生き返ったのかは言えない。今はまだ。その内お前らにも話せる時が来るさ」
「そう、ならいい。私はリュウガが生きていてくれるだけで嬉しいから」
アフラに言われていた通り、オレは仲間達に事の詳細を話さなかった。しかしアフラから口止めされていなくても話す事はなかっただろう。神界での事を話してしまい、もし外に漏れたりしたら世界の常識そのものが崩れてしまう事になる。そんな事は絶対に避けなくてはならない。
それに今話さずともいずれ話す時が来る。オレはそう確信していた。来綺も宏太も瑠璃もリリスも全員がいずれは神職に至ると信じているのだ。
それからしばらく話しているとアイク達がオレ達の下へ近寄って来た。
「もういいか?」
「ああ、待たせて悪いな。こんな事になっちまったが昇格試験の方はどうなるんだ」
「ああ、その事は部屋に戻ってから話そう」
そしてオレ達は階段を登り、この地下を後にした。
数分後、先程昇格試験の前に話していた部屋に着いた。部屋に着くとアイクとオレ達は対面になるように座った。
「さて、聞きたい事も色々とあるがまずはランク昇格試験の結果についてだ」
「おいおい俺の試験がまだ終わってねぇだろ」
「いや、リュウガの試験は試験官達とも話し合ったが先程の魔族との戦闘を試験の代わりとさせてもらった」
「そうだったのか、なら問題はない」
どうやらオレの試験は一時中止にされたと思われたが、魔族との戦闘を試験の代用としたようだ。
「それで試験の結果は分かっていると思うが……全員合格だ」
その言葉を聞いた瞬間、オレは「当然の結果だな」と呟き、他の四人は受かっている自信はあったが喜びの声を上げていた。
「でだ、まず来綺、宏太、瑠璃、リリスの四人にはDランクの昇格試験を受けてもらっていたと思うが……話し合った結果、四人共Cランクに昇格とする」
「え!どういう事ですか?」
「試験を見させてもらったがお前達の実力はDランクの域を軽く超えていた。よってCランクに昇格とした」
宏太が質問するとアイクは答えた。四人をDランクにしておくには勿体無いという事から一気にCランクにしたそうだ。特にリリスの回復魔法に関しては技術だけで言えばAランクに届き得るそうだ。
確かにリリスの回復魔法にはオレでさえも目を見開いていた。だが何もリリスだけが凄かった訳ではない。来綺も宏太も瑠璃も過去にない程の結果を残して試験を終えていた。
「でもいきなりそんなの……いいんですか?」
「これはギルド側が決めた事だ。素直に喜べ」
「俺は別に不思議な事では無いと思うぞ。お前達の実力があれば当然と言える」
「リュウガ……」
オレにそう言われるが瑠璃は自身なさげな表情をしていた。いや、瑠璃だけでは無い、他の三人も同じような顔をしていた。
先程のオレと魔族の戦いを見て自分達の無力さにうちひしがれていたのだ。そんな自分達がCランクに上がっていいのか不安だったようだ。
「……お前ら、さっきの戦いで何か俺に負い目を感じてるんじゃ無いだろうな?そして自分達が俺の足を引っ張っているんじゃないか、とか思ってるのか?」
「だって……事実、何も出来なかったしよ。そんな俺らがいきなりCランクになっていいのか?」
やはり来綺は負い目を感じていたようだ。
「ったく、俺は別にお前達の事を足で纏いなんて思ってねぇし、そもそもあれはおそらくSランクの冒険者でないと倒せない相手だ。比較対象がおかしいんだよ」
オレにそう言われて、四人は少し気が楽になったようだ。
「ん……ではリュウガだが…Bランクに昇格だ」
「ま、予想はしてたがやはりそうなるか」
「本当はAランクにしてもいいんだが流石に一回で四ランクアップはやり過ぎになるからな」
オレのランクはEランクから一気に三ランク上がってBランクになった。これはオレ自身も予想していた事だった。
オレの実力は既にSランク級だがいきなりそこまで上げる事は出来ないそうでBランクという事だった。
「では、色々合ったが改めて五人共ランク昇格おめでとう!」
晴れてオレ達はランク昇格試験を無事に合格した。その後、オレは今回の事について色々問い詰められ、話せる範囲で質問に答えた。
しばらく話した後、部屋を後にして帰りに受付によった。
「リュウガさん達!ランク昇格おめでとうございます!」
受付に着くなりエルナから祝福の言葉が掛けられた。五人は「ありがとう」と感謝の言葉を述べた。
「聞きましたよ。魔族を倒したんですって」
「何だ、もう聞いてるのか。まあ中級魔族だがな」
「充分凄いですよ!」
オレが魔族を倒した事は既にギルド内に広まっているらしい。この分だと明日には街中に広まっている事になるかもしれない。
そこまで広まってしまうと自分達がこの街にいる事がクラスメイト達に知れてしまうかもしれない恐れがあったがもう既に抑えられない状況にあった。
「でもその姿、一体どうしたんですか?」
「またか、もう何回も言われてるんだが俺の姿何かへんか?」
オレがそう聞くとエルナは鏡を渡して来た。その鏡で自分の姿を写すとその顔は一気に驚愕の表情に変わっていった。
「何じゃ!これゃ!」
オレの髪が銀髪に、そして目は青色に変色している事に気付き驚愕していた。
そして何故こんな見た目になってしまったのかが分かった。どう考えても加護の影響としか考えられない、そう心の中で悟った。
「リュウガ、今頃気付いたの?」
「ああ、全く気付かなかった」
その後、冒険者カードをエルナに渡してランクの更新をしてもらった。これで正式にオレはBランクに他の四人はCランクに昇格した。
ちなみにランクが昇格すると昇格祝いとしてギルドから祝金が貰えるらしい。Cランクに昇格した場合は金貨五枚、Bランクは金貨七枚と銀貨五枚が貰え、合計で金貨二十七枚と銀貨五枚、日本円にして二十七万五千円という大金が貰えた。
「では、ランクの昇格手続きは以上となります」
「ありがとう」
手続きが終わりオレ達はギルドを後にした。宿までの道を歩きながらオレは考え事をしていた。
(リリスの事どうするか……)
そうリュウガは死ぬ直前にリリスに自分の想いを伝えていたのだ。その想いに答えるかのようにリリスも自分の想いを伝えた。
(今日部屋に帰ったらもう一度、ちゃんと告白しよう)
オレはそう固く決心したのだった。




