最期
状況は最悪と言わざるを得なかった。オレの身体は既にぼろぼろなうえに限界突破の反動で身体が上手く動かせない状況だった。
「しかしまあ、さっきの攻撃はかなり危なかったぞ。俺も一瞬だが死を覚悟したからな」
「俺としては最悪だがな。もう戦いを楽しむ余裕もない」
先程の攻撃、実は魔族は直撃する前に身体全体に魔力障壁を展開させていた。そのおかげでダメージは負ったが死ぬ事はなかった。
そして魔族はその後、オレに自分が死んだと思い込ませる為に肉体と魂を分離させる事にした。魔族の作戦は成功しリュウガに深い傷を与える事に成功した。
「さあ、第二ラウンドと行こうか創造神」
「くそっ!」
「来い!ダーインスレイブ!」
次の瞬間、魔族は魔剣を作成しオレに襲いかかった。魔族もダメージは負っている筈なのに先程と変わらず速かった。
何故なら魔族の回復力が人間の何倍も優れているからだ。
「ちっ!来いデュランダル!」
オレも対抗して聖剣を作成し、魔族の攻撃を何とか防いだ。しかし、その攻撃は徐々に速くなってきてオレは防戦一方だった。
「どうした!その程度ではすぐに勝負がついてしまうぞ!」
このままではオレはすぐにやられてしまう。そして打ち合い続ける事数十秒、ついに恐れていた事が起きてしまった。
「なっ!」
オレの聖剣が折れてしまった。どうやら魔力が残り少なくなってしまい聖剣を維持する事が出来なくなってしまった。
魔族はその瞬間を見逃さなかった。間髪を入れずにオレに向かって魔剣を振り下ろした。
「これで終わりだ!」
「ぐっっ!!」
オレはその攻撃を何とか避けようとしたが完全には避けきれず左腕を落としてしまった。
落とされた左腕からは血が大量に出ていた。このままでは出血多量で死んでしまうのですぐに魔力で止血を行なった。
「はぁ…はぁ…はぁ」
「どうやら終いのようだな。この攻撃で葬ってやる」
そう言うと魔族は魔力を込め獄炎を発動した。
今のオレには魔力が殆ど残っておらず攻撃を避ける事も魔法を使うこともままなかった。だが最後の力を振り絞り身体全体を魔力障壁で覆った。
攻撃はオレに直撃し辺りは一面、煙に覆われていた。そして数十秒後、煙が消えてオレの姿が見えた。そこには膝をついて死にかけているオレの姿があった。
「リュウガ!」
「そ…そんな」
「くそっ!」
「俺達は何て無力なんだ」
その姿を見た瞬間、リリス、瑠璃、宏太、来綺の四人が唖然とした表情をしていた。その近くではアイク達も同じような表情を見せていた。
勝ちを確信した魔族はゆっくりとオレのもとに歩み寄る。
「おい!俺達でリュウガを守るぞ!ギルドマスター達も協力してくれ!」
「分かっている。ギルド側としてもリュウガに死なれては困るからな」
来綺達もアイク達もオレを何とか守ろうとフィールド内に入ろうとした。しかし次の瞬間。
「お…おい!……お前ら何入ろうとしたんだ……お前らが束になってもこいつには……勝てない……見てたなら分かるだろ?……はぁ…はぁ」
オレは来綺達が自分の方に来るのを止めた。もう声を出す事すら厳しい状態だと言うのに。
「そんな事言ってる場合じゃないだろ!」
「そうよ、リュウガ!リュウガが死んだら私」
来綺はオレを死なせたくなかったのだろう。リリスもまたオレがが死にそうになっている状態を見て涙を溢し、珍しく叫んでいた。
その言葉を聞いたオレは笑みを浮かべていた。
「ありがとよ皆……俺の為に……でも、いいんだ……俺の為に助けに来たら……お前らまで死んじまう……俺はそんな事は絶対にさせねぇ」
オレは皆を死なせたくなかった。仮に助けに来たとしても自分は助からない、もうまもなく死ぬと分かっていたのだ。
気がつくとリリスだけでなく、来綺も瑠璃も宏太も全員が目から涙を溢していた。
「おい……魔族…約束してくれ……俺が死んだ後外の奴らには手を出さないと」
「何故貴様の言う事を聞かねばならないのだ」
「頼む……見逃してやってくれ」
「……いいだろう貴様の強さに免じて見逃してやる」
「恩にきる」
魔族はオレとの約束を守ると誓った。魔族はもともとオレ以外は眼中に無かった、他の者などどうでもよかったのだ。
仲間達に最後の言葉を伝えようとフィールドの外に顔を向けた。魔族は律儀にも待ってくれるそうだ。
「来綺……俺が死んだ後は……パーティを頼んだぞ」
「ま……任せろ」
来綺はパーティの事は任せとけ、そう涙を拭いながら答えた。内心、心配だったが頭の回転がよい瑠璃がいれば安心だろうと思っていた。
「瑠璃……それに宏太……二人共幸せになれよ」
「……うん」
「ああ……瑠璃は俺が幸せにしてみせる」
瑠璃と宏太にも言葉を告げた。二人には幸せになって欲しいと心の底から願っていた。
「最後にリリス……昨日会ったばかりなのに……こんな事になってごめんな……お前とはもっと一緒に過ごしたかった」
「リュウガ!……死んじゃだめ!」
「ありがとよリリス……でも俺はもうだめだ……今こうやって話してるのも……かなりきつい状態だ」
「そ…んな」
オレの言葉にリリスは絶望していた。その顔は涙でいっぱいになっていた。
今こうやって話せているのも奇跡のような事だ。喉は焼けていて本来なら話す事すら出来ないのだ。だがオレは最後の魔力を使って声を何とか出せる状態にしていた。
「リリス……お前に昨日会った時……俺は心臓がドキドキしたんだ……最初はそれが何なのか分からなかった……だが今は分かる……お前とは一日しか過ごしていないがここまで想った相手は今までいなかった……リリス……大好きだ」
「私も……私も……リュウガが好き……後にも先にも私が好きなのはリュウガだけ!」
「最後にその言葉が聞けて嬉しかったよリリス」
オレは最後にリリスに愛の告白をした。死ぬ前にこれだけは伝えておきたかったのだ。一日だけの付き合いだったが本気でリリスの事が好きになっていた。リリスも告白に答えるように想いを伝えた。
全員に言葉を伝え終えたオレは、振り返り魔族の方に顔を向けた。
「もう、最期の用は済んだか?」
「ああ……悪いな……待ってもらってて」
「まあ最期くらいはな。俺は弱者はともかく強者の願いは聞き受けてやる」
その言葉を聞いて少し安心した。しかしこれは本心なのかはたまた信じ込ませる為の嘘なのかそれは分からなかった。
「では我が魔剣ダーインスレイブで心臓を貫き終わりにしてやる、いいな?
「ああ……もう覚悟は出来た」
「ではさらばだ」
「ぐ………」
次の瞬間、魔剣がオレの心臓を貫き背中を貫通した。オレは苦しみの声を上げそのまま地に倒れた。心臓は完全に停止していた。最早、ここから助かる事は絶対にあり得ない。
オレが倒れ伏した瞬間、リリスは今までに聞いた事のないような大声を上げて泣き叫んだ。また来綺、宏太、瑠璃の顔も涙で溢れていたと同時に拳を強く握り締めていた。自分達の不甲斐なさに腹が立っていたのだ。
「俺は無力だ。まだ自分よりも二十歳以上若い子供に助けられる何て不甲斐なさすぎる」
アイク達もまた来綺達と同様、自分の不甲斐なさに腹を立てていた。
「強くなるぞ!リュウガのように」
「ああ、今とは比べ物にならないくらいにな!」
「私も!魔族を倒せるくらいに」
「私も……その為には神職にならないと」
四人は強くなろうと固く決意した。中でもリリスはリュウガと同じ神職を目指すと目標を掲げた。三人もリリスと同様、神職を目指す事にした。
確かに神職になれば今とは比べ物にならない程の力を手に入れる事が可能だ。だがその為にはたゆまぬ努力が必要だ。四人はどんな困難でも乗り越えて見せる、そんな表情を浮かべていた。




